第106話
「はいはい、『覇王種』個体などいるかいないかの議論は時間があるときにな、
『ギルドマスター』のおっちゃん
――次に説明するのは、この辺境一帯に棲息する2種類の
怪物に付いてだ
1種類目は『浸食魔』って名称の怪物だ
ま、この名称も死んだ爺さんが名付けたんだけど・・・
残してくれた蔵書にはその怪物は原因不明の寄生菌が体内に
侵入したなれのはてだそうだ
寄生菌が体内へ侵入すると、脳まで侵された結果、理性を失い
凶暴化してしまうらしい
感染してしまった者は、体内で育った『浸食核』を除去しない
限り元には戻らない
感染すれば数時間以内に人格や理性が徐々に失われ、聴力や視力が
上がって身体能力が上がり、最後には侵食の度合が進行すると
体内からイバラ状の物体、『侵食核』が現れ胞子を撒き散らすようになる。
そして胞子に触れたものは、同じ怪物化するって訳だ
幸いなのは体内に『浸食核』が出来る前に除去すれば、怪物化せずにすむ
という事なんだが、じいさんの蔵書によると、恐ろしい事に
その胞子は魔獣や魔物にも感染し、更に狂猛化させてしまうんだとよ」
ベイセルが語り終えたと同時に、人間種族の冒険者が挙手した
「ちびっこ先生、解毒薬類はどうなってんだ? 」
人間種族の冒険者がエンゲルベルトに質問をする
「ちびっこ先生は余計な。
死んだじいさんは、それを探し求めたけど
結局見つからなかったんだよ」
ベイセルは首を横に振りつつ答えるが、声色は重く沈んでいた
直接その怪物と闘った冒険者達は、思わず息を呑み重い空気に包まれた
その沈黙を破る様に発言したのは、クロエだった
「『浸食魔』状態を治療するためにも、依頼掲示板には随時ロージアン
『冒険者ギルド』から定期的に薬草類採取依頼を張り出すわ
これについても冒険者階級制限なんて時間の無駄な事はしないから
安心してちょうだい」
クロエの並々ならぬ気迫のある言葉にハインツ中心メンバーを含めた、
一癖も二癖もある300人の冒険者達は決して冗談を言っているのではないと
すぐに理解した
「薬草類採取は、一見初心者や新人冒険者でも簡単に出来ると思えるが
一筋縄ではいかない大仕事の1つだ
こちらのギルド支部には主な群生地帯を案内できるギルド職員、もしくは
薬草類に詳しい『血騎士』村人は?」
四十後半の白いものが混ざったモミアゲを極端に長くのばした赤髪の冒険者が、
挙手しつつかなり独独な表現で問いかけた
『血騎士』という表現をなど聞いた事もない大多数の冒険者達は、怪訝な
貌するばかりだ
だが、よく見れば幾人かの冒険者が『血騎士村人』という言葉に
心当たりがあったのか、『あっ』とした表情をしていた
『血騎士』という言葉に心当たりあるのは、ベイセル、エンゲルベルト、
クロエ、そしてアルヴィンもだったのか、少し
難しい表情を浮かべる
「 『血騎士村人』まではいかなくても、ちびっこ先生が
時間があるときにここの首都の子供や集落の子供に薬草講義と実習をしてる
から大丈夫だと思うよ」
『サブ・ギルドマスター』アルヴィンが、しばらくして
そう口を挟んだ




