第100話
その蝋燭はカルローラが愛用している道具で、蝋燭に灯る炎は、
周囲に存在する
魔獣や魔物に感知されずに済む効果のある
魔法が施されているという代物だ
だが、その様な魔物除けの道具など聞いた事もないカルローラ以外の
冒険者達はザワつき始めた
「その蝋燭にはそんな効果が!?」
竜人種族の冒険者が驚きの声を上げ
「そんなの聞いた事がねぇぞ?」
眼を輝かせて呟いたのはドワーフ種族の冒険者で 他の冒険者達も
興味深そうな面持ちで、カルローラが持っている蝋燭を見つめている
カルローラ本人はその注目を受けつつも、いつも通りのマイペースだ
「続けて質問をしたい。
では通常なら、宿場町から首都の間の大平原ではどくらい魔物や
魔獣が徘徊しているのだ?」
茶髪に長身で、細面で美男子といって差し支えない風貌の人間種族の冒険者だ
「宿場町から首都へ向かう所を通った広大な草原に
多種多様な魔物や魔獣が生息しているから、具体的な数は数えきれないほどだ
特にゴブリンは面倒なほど多く獲物と見れば徒党を組んで襲ってくるし、
それどころか魔境にはゴブリンの上位種が大群を率いて棲み着いているんだ」
ベイセルは苦々しい表情を浮かべつつ語った その言葉に冒険者達は騒然となる
「補足で宿場町とこの首都にはここ数年、2~3日に一度のペースで
小規模の襲撃が有るわ
もちろんゴブリンの他に、種類を問わない魔獣や魔物、あなた達がこの辺境へ
来る道中に闘った二種類の怪物が、
それぞれ50~60匹以上の大群で開拓予定地や集落を襲撃するのよ。
……これはちびっこ先生に伝えられなかったのだけど、『冒険者ギルド』が
最近把握したのだけれど、魔境内に幾つかゴブリンの砦が建設されてるわ」
ベイセルの代わりに、「訓練教官及び素材鑑定ギルド職員」クロワが
淡々と冷静に答えた
騒然としている冒険者達の中で、魔獣や魔物達の強靭さを知っている
幾人かが深刻な表情で腕組みをしている
「クロワの姉ちゃん・・・マジで初めて聞いたんだけど?
集落じゃなかったのか!?」
ベイセルが案の定困惑している
「わりかし早く察知していたんだけど、ちびっこ先生がずっと宿場町で引き籠って
『冒険者ギルド』に全然来なかったじゃないか
それだと情報共有など出来ないので、今まで言えなかったんだよ」
『サブ・ギルドマスター」アルヴィンが口を挟む様に喋りだす
「引き籠りじゃなくて、農民としての日常生活だよ!
第一そう易々と首都まで子供が1人で気軽に行ける距離じゃねぇし、
定期的に行商隊や旅商人に着いても行けないだろ!
あとちびっこ先生はやめろ 」
ベイセルは貌をしかめつつ反論する
「前から言ってる様に、首都に移り住めばいいじゃないの」
クロワが間髪入れずに言う
「母さんを置いて移住できないと何回ーーーいや、そんな話よりもだ!!
多忙なご領主様もおられる事だし、レクチャー続けさせてもらってもいいかな!?」
ベイセルが噛み潰したような表情を浮かべつつ応える
「あとで存分にじゃれ合ってくれていいから、レクチャーを続けてくれちびっこ先生」
「ギルドマスター」エンゲルベルトが若干苦笑しつつ、そのやり取りに口を挟んで促す
そんなやり取りを見ていたハインツや、他の冒険者達もベイセルがその辺の
何処にでもいる様な農民の子供ではない事を薄々感じ取っていた
特に観察していた冒険者幾人かが、そのやり取りがまるで場の
空気を和ますかのような意図が見え隠れする事に
思わず目を見開いていた
その証拠と言うべきか、ロージアン領主も苦言を示すこともなければ、愉快そうな
表情で見つめている
大多数の冒険者達も、それには気付くそぶりもなくちょっとした
笑いの種になっていた
意図を見抜いた冒険者幾人かは、改めてベイセルやクロワの
技量の高さを思い知る




