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 それから宿題をするついでにたまに四人で遊ぶようになった。僕達が遊ぶ回数が増えると共にグループトークの履歴も増えて行った。八月に入って、お盆休みは白石さんがおばあちゃんの実家に行くとかで僕達は三人で遊んだけど。

 ちなみに夏期講習の対象になった事をきっかけに、今まで美守がうちに来た時は遊ぶだけだったけど、あれからは二人だけで勉強もするようになった。

 八月後半、いつものように美守と勉強していると、机の右端の方に置いてあるスマホが鳴った。僕はスマホを取ってトーク画面を開いた。左側にいる美守が僕のスマホを覗いた。


健:外で走る馬です。翔の部屋のクーラーが恋しいです

早紀:卓球場も暑いです


 美守は自分のスマホも取ってトーク画面を見始めた。


健:何してんの?

翔:勉強してる

健:マジ?

美守:マジです

翔:来たら?

健:部活中

早紀:部活中

美守:ふぃー涼しい

健:チキショー! 部活終わったら遊びに行く

美守:あい


「勝手に許可すんな」

「いーじゃん別にー」

 そう言うと美守は自分のスマホを置いて僕のスマホを取り上げ、勝手にメッセージを入れ始めた。

「こらこら」


翔:美守さんに勉強を教えて頂いて私は幸せであります!


 画面に書いてある文章を見て僕は笑った。

「何この軍隊みたいなセリフ」

「大佐と呼びなさい」

「返せよなー」

「やですー」

 そう言って僕のスマホを持ったまま美守はこちら側に仰向けになって寝っ転がった。僕のスマホがピロンと鳴った。僕からはスマホの画面は見えない。

「何て?」

「早紀。健と一緒に来るって」

「ほー」

「ほほー」

「あの二人、もしかして付き合ってたりするのかな?」

「知りません」

 美守はスマホを置いてそのまま目を瞑った。

「ぐー」

「早いな」

 スマホがまたピロンと鳴った。

「後よろしく」

「もともと俺のなんだけど」

 スマホを取ると健だった。僕は美守に気を遣ってミュートにした。


健:さっきの文、翔じゃなくね?

翔:ごめん美守が勝手に入れてた


健から二人だけのトークの方に通知が来た。


健:お前らって付き合ってんの?

翔:付き合ってないよ

健:でもいつも一緒じゃーん

翔:そりゃ家隣だしなあ

健:あ、大丈夫! 俺は美守そういう風に見てないから! ゆっくり愛を育んでください

翔:勝手に決めないでください

健:俺は早紀ちゃんとうふふ

翔:あ、やっぱそうなの?

健:うそうそ、俺まだそういうの分かんねー

翔:お似合いですよ

健:お前らにだけは言われたくねー!笑


 スマホの画面に返事を入れながら僕は安心した。健は美守の事は何とも思ってないのか。

 僕は美守を見た。すやすやと眠っている。クーラーをかけると分かっているから冷えないように美守は黒いTシャツの上に黄色のパーカーをファスナーを開けて羽織っている。

 美守って僕の事どう思ってるのかな? 女の子って好きな男の子の前でこんな無防備に寝るとは思えないんだけど。男として見てないって奴なのかな? なんだかそれはそれで悔しいような気がする。

 しばらくして美守の前髪がサラリと落ちた。僕は左手をそーっと伸ばして、美守の髪を触ってみた。サラサラしてる。突然美守が僕の手首を掴んだ。

「あ!」

「こーらーセクハラだぞー」

 声は怒ってなかった。

「ご……ごめん。起きてたの?」

「うん」

 美守はなかなか手を離してくれない。

「あの」

「早紀取られて悔しい?」

「え?」

 美守は目を瞑ったまま言った。

「健と早紀が付き合ったら悔しい?」

 もしかして僕と白石さんが仲良くなったの見て嫉妬してたのか? 美守は目を開けて僕をじっと見た。僕はなんとなくだけど、美守を安心させなきゃって思った。

「く……悔しくないよ」

 声がちょっと震えた。

「白石さんの事は別に何とも思ってない。健と付き合うならそれでいい」

「ふーん。早紀にドキドキしてたくせに」

「そ! それはそのー……」

 美守は僕の手を自分の頬に持っていった。僕の指が美守の頬に触れた。

「ちょ……」

「……」

 美守は何も言わずに僕を見つめている。僕は勇気を出して丸めていた手を開くと、美守の頬に手を添えた。

 僕は初めて自分から美守にちゃんと触れた。

「翔の手あったかい」

 美守がボソッと言った。

 しばらくすると美守は僕の手をようやく離した。なんか今すごい状態だった気がする。僕は恥ずかしくなった。

「な、何すんだよ急に」

 美守は微笑んだ。

「そっちが先に手を出したんでしょーが」

「ご、ごめん」

 僕は真っ赤な顔した美守と見つめ合った。僕も多分真っ赤だったに違いない。もう一度だけ美守の髪の毛を触ったけど美守は猫みたいに目を瞑っただけで抵抗しなかった。二人の呼吸の音とクーラーの音と、セミの声だけが聞こえている。

 健達が来て、家のチャイムを鳴らすと美守は起き上がった。

「ナイショだよ」

「うん」

 美守がパーッと出て行って健達を出迎えに行った。


 僕と美守の距離は、中学一年の夏休みに少し近付いた。

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