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 健が家に来た。下でお母さんと何か話している。健があざっす! とか言っている。僕は出迎えに行こうと思って部屋のドアを開けて階段まで来たら健はちょうど階段を上がって来る所だった。健はお母さんからどうやらケーキを受け取っていたらしい。ケーキが入った箱を持って健が上がって来た。

「よ!」

「おっす。今日部活休み?」

「そ。足が筋肉痛でよ。休み休み。美守もいるんだろ?」

「あ、うん。そう」

 健は出前みたいな口調で部屋に入った。

「お待たせしました〜! ケーキでーす……あり?」

 健は白石さんを見て目を丸くした。

「あ……杉山君」

「あれ? 早紀ちゃんじゃね? 何でいんの?」

「美守ちゃんが一緒に勉強しよって誘ってくれたの」

「あっマジ? いいね楽しそうだな。俺も入れてくれよ」

 美守が口に手を当てて言った。

「健が入ると勉強になるか疑問なんですけどー」

「大丈夫だって! 仲間外れにしないで〜お願い! ケーキあげるから!」

「それ翔のお母さんが買った奴でしょーが」

 白石さんはクスクス笑っている。

「いいよ。健もやろうよ」

 僕は健が来てくれる方が楽しそうだと思った。

「やったぜ! これで宿題が楽に終わる!」

「心の声が聞こえてますよー」

 健は僕の反対側に座った。白い箱を開けると、箱にはショートケーキ二つとチョコレートケーキが二つ乗っている。僕は箱から美守の分のチョコレートケーキを取って美守の前に置いた。

「はい」

「あい」

「健と白石さんどれがいい?」

 健と白石さんは止まっている。

「僕は最後でいいよ」

「おっおお」

「う、うん」

 二人の視線が美守のチョコレートケーキに注がれている。

「あ! ごめんもしかして二人共チョコが良かった?」

「いやいや! そんな贅沢言いませんよ俺は! レディーファーストだから! どうぞどうぞ早紀ちゃん」

「じゃ、じゃあ私こっちで」

 白石さんはショートケーキを選んで、健はチョコレートケーキ、僕は残りのショートケーキを取った。健と白石さんは最初お互いを見てたけど、やがて喋りながらケーキを食べ始めた。僕と美守も話に入って四人で美味しいケーキを食べた。


「いいね! こういうの。青春て感じで」

 唐突に健が言った。

「何だよいきなり。ジジイですか?」

「俺は馬のように走るだけで夏を終える所だったんだぜ? 自主的に遊んでいかないとあっという間に休みが終わっちまうよ! 今からゲーセン行かない?」

「勉強って言いませんでした私?」

 美守がそう言うと健は否定した。

「いやいや、初日こそまずお互いに友好を深める方が大事なんじゃないかな。その方が明日からスムーズに皆で勉強に集中できるってものだよ」

 確かに一理あるかもしれない。

「う、うーん……そうねえ」

「だろ? じゃあ多数決を取ります」

 健が咳払いをした。

「今からゲーセン行きたい人!」

 全員がバッと手を上げた。

「美守もじゃん!」

「いいじゃん別に!」

「よし決まり! 行こうぜ」

「あ、そうだ。杉山君もグループトークに呼ぶね」

「健でいいよ」

 健は白石さんと連絡先を交換してグループトークに入った。ピロンと音がして、僕はスマホを見ると画面に「健:ゲーセン行くぞー」って書いてあった。白石さんが「おー」と返した。

 健と白石さんが階段を降りて行ったので僕も出ようと思ったら、美守に背中をツンツンされた。

「どうした?」

「ありがとね翔」

「何が?」

「早紀、中学で小学校の友達が皆違うクラスになっちゃったから。上手く馴染めなかったみたいなの。友達できなくて。夏期講習の時に翔がいてくれて良かった。すごい感謝してたよ」

「あ、そういう事ね。大丈夫だよ。健もいるし」

「うん」

 美守がなかなか出て行かない。

「行こうよ」

 美守が僕の手をちょんと握った。

「なに?」

「タッチ」

「うん」

 美守は目を逸らしたまま僕の手を握った状態で立ってたけど、体を左右に捻って何回か僕の手を動かすと、手を離して笑顔になった。

「行こ!」

「どうしたの?」

「ううん」


 皆で自転車に乗って駅前のゲーセンに着くと、健は自転車に鍵を掛けた時に急に言った。

「あ! やべ」

「どした?」

「ごめん翔、またあのゲーム持って来るの忘れた」

「え? 今それ? いやいいけどさ、もう返って来ないんじゃないのあれ」

「悪い悪い、今度持って来るから」

 美守がその話を聞いて何だか不思議な顔をしていたけど、ゲーセンに入ってUFOキャッチャーの前に来るとちょうどそのゲームのキャラクターのぬいぐるみが置いてあった。美守はそれを見てハッとなって言った。

「あ! もしかして小四の時に返すとか言ってたあれ? これのやつ? 運動会の前の」

 健が美守を指差して言った。

「そう! それ!」

「あー! スッキリしたわ〜」

「いや良かった良かった。美守先生もスッキリしたみたいで」

 白石さんが不思議そうにしてたので健が素早く解説した。

「翔のゲーム小三の時に借りたんだけど、返すの忘れててさ。まだ返してないの」

「えー!」

「もう新しいゲーム機になっちゃったから、あれ返してももうやらないみたいな感じになっちゃってるからつい忘れちゃうんだよね」

「あ、なるほど」

「いやそれは返せよ」

「ごめんなさい」

 白石さんも入れて皆で笑った。

「早紀ちゃんてゲームやんの?」

「ううん、やった事ない」

「んじゃ、あれやろーぜ。オバケ吸うやつ」

「え、オバケ?」

「大丈夫大丈夫。かわいい奴だから。美守、翔をよろしく!」

「あい」

 そう言って健は白石さんとゲームを始めた。美守は感心して言った。

「女の子の扱いが上手ですなあ」

「うーん。健もほとんど女の子と話した事は無いけどなあ」

「そうなの?」

「うん。白石さんと気が合うのかな」

「ほーん」

 二人は楽しそうに掃除機のホースみたいなのを持って遊んでいる。美守は顎に手を当てて考え込むようなポーズで言った。

「早紀ちゃん取られちゃったなこりゃ」

「べ、別に取られたとかじゃ……」

「美守君はゲームできるんで、あそこのツインびちゃんで翔に遊んで欲しいです」

「分かりました」

「こちらでございます」

 美守は僕の手を取ってルンルンと歩き出した。僕は歩きながら空いた手で財布を出して健達の方を振り返った。白石さんが僕達の方を見てたけど、健に何か言われて慌ててゲームに戻った。

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