いざ城内
俺は城門で武器加工のおっさんに出会い、なぜかそのままおっさんの御使いに付き合わされる。殺される事よりよっぽどマシか.....とほほ。
俺とおっさんの2人は城の案内人の後ろに着いていく。
長い廊下を歩く、所々壁には全く価値は分からないが、なんとなく凄く高いであろう絵画が点々に飾られている。
俺はふと気づく、
「そういえば、自己紹介まだでしたよね??」
「あー、そうだったな、ガーハッハッハッ。俺はサンドラだ!村で武器加工を営んでいる、武器加工と言えばサンドラ様だよ!」
相変わらず、笑い方は古典的だな。
「俺は佐久間裕一郎、高校生です!」
「こ、う、コウセイ.....?あーっ!光合成?」
「あ、自分植物じゃないっす!」
あっ、そうか、異世界には基本高校など無いのか。あっても魔法学校とかか。この世界には小中高などは無いんだな。
「少女お待ち下さい」
赤く高貴な扉の前に着いた。ここの扉だけは他よりも高そうな作りになっている。THE国王様の部屋って感じ。
案内人はこちらに軽く会釈する。
コンコン
扉を2回ノックする。国王様の初対面か、なんだが緊張する。
「サンドラ様がお見えになりました」
「よし、通せ」
「失礼します」
先に案内人が片方の扉を開け、右手で室内に指し示す。
そしてサンドラのおっさんが、もう片方の扉をガパッと勢いよく開ける。
!?何やってんの?国王様だよ?
案内人はクスリと笑みを浮かばせる。この状況を楽しんでいるの!?
俺は案内人が開けた方の扉からよそよそしく会釈しながら入る。
「失礼します」
案内人は俺達が入った事を確認すると、それだけを言いその場を後にした。
「おー!久しぶりだな?」
今のおー!ってどっち?王!なのか、よ!なのか、どちらにしても目を開けていられる状況では無い。
「グーハッハッハッハッ、久しぶりだなサンドラよ」
「んぇ?お知り合いなのですか.....?」
「あぁ、王とは兄弟なんだよ」
「きょ、兄弟?」
「俺が弟で兄が王なんだよ」
サンドラのおっさんは片方に持っていたハンマーを床に置き。その場に腰掛けた。まるで今から血縁関係を話すかのように。
「サンドラ・ボルデューゴ、それが俺の名で、グウェン・ボルデューゴが兄の王なんだよ」
あれ、これって話入っちゃってますよね??大体予想できる。これは1時間コースくるよね?
「そこの若いのも腰掛けなさい。椅子でも使うか?」
「ああ、いやお床で結構でございます....です」
「グーハッハッハッ、そう固くなるで無い、まあ楽にしなさい」
「ありがとう.....ございます」
俺は地べたに座る事にした。あいにくサンドラのおっさんのように親父座りはいくら優しい国王様でも怒るだろう、そう考えた俺はその場で正座する事にした。
いくら下に絨毯が引かれているとはいえ、床は大理石で作られているため、もう足が痛い。
「そや、若者、名を聞いていなかったな」
ああ!すっかり名を申すのを忘れていた。
「っはい!佐久間裕一郎18歳です!!」
「こいつコウコウセイ?とか何とからしいぞ」
「光合成?植物なのか!?」
あの、国王様もですが.....やはりご兄弟、血は争えないな。
「いえ、植物では無いです.....まあ。役職みたいなものです、はい」
「ほぉー?面白い奴だな。そしてその服装も」
服装.....?あ、今高校の制服か、この世界なら見慣れない服で興味があるんだろう。
「そうだ、グウェン、頼みの品だ」
サンドラのおっさんの横に置かれたハンマーを持ち上げる。
「ゴホン」の咳払いのような掛け声で奥の扉から使いの男が2人ぞろぞろ出てきた。
サンドラはその使いにハンマーを手渡した。
使いの者はそれを受け取った瞬間、ズシンと足が沈む。
!?
「ああ、それ100キロあるから気をつけろよ!」
100キロ!?それをサンドラのおっさん片手でらくらくと持ち上げてたの?つくづくとサンドラのおっさんの恐ろしさを知らされる。
使いは2人でやっと持ち上がるハンマーを王の元へと運ぶ。
「「フー!ふー!ふぅー!」」
重いんだろうな....次第に息遣いが荒く聞こえるのがこちらからでも分かる。
「「よっこらせ」」
使いが王にハンマーを手渡すと、その瞬間。
「おおー、この重さ、中々好みだ」
と目を光らせ、台座に腰掛けながらもその場でハンマーを振り回す。
ブーンブーンブンブンブンブン
王が振り回すハンマーからは次第に少量の竜巻が発生する。
周囲の骨董品がガタガタと揺れだす。
何をする気だ.....!
「これは、久しぶりに血の気が上がる!!」
や、やばい!何この王!!
窓側のカーテンが竜巻の煽られ、ちぎれそうになる。
ビリビリ
ブンブンブンブン、ズゴゴゴ!!
「そーりゃぁぁっ!!」
次の瞬間、王の右手からハンマーが勢いよく放出され、こちらに向かってくるのが目視.....
ドオォォォンン!!!
間一髪避けることができ。
俺はゆっくりと冷や汗を流しながら、振り返る。
パラパラ。俺たちが入ってきた扉は跡形も無く。壁には無数の亀裂が入る。所々、焦げている部分も見受けられる。
アハハ....あれ当たってたら顔吹き飛んでた。(笑)
「グーハッハッハッハッ。サンドラ、こやつは只者じゃない。何か破壊的な力を感じる」
「だろ?グウェン、だからこいつを連れてきた」
どうやら、俺は特別な何かを持っているらしい。だから俺をわざわざ連れてきたんだろう。
このご兄弟と居たら何されるか分からない。
今思うのは"帰りたい"それだけだった。