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HOME STEAL!!!  作者: 秋川 楓
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彼女の住む町

初めて投稿します。秋川 楓です。よろしくお願いします。この作品の大枠のテーマは『野球』と『思考』です。

が、小説を書いていくうちに第一話は少し違うものとなってしまいました。

第一話は『面白い駅』が主なテーマとなっております。読んでいただけたら大変嬉しいです。

【ホームスチール】

 それは、三塁ランナーが単独で得点を狙う、野球の戦術の一つである。成功させるには相手の隙をつくことが重要であり、かなり難しい。その分、成功したとき相手に与える衝撃も大きい。



                                 第一話 彼女の住む町


 千葉県立松ヶ崎高等学校、、、偏差値60のよくある自称進学校だ。2022年、そんな高校に一人の女が入学した。名は先崎透花(せんざきとうか)。身長170㎝・容姿端麗だが、鋭い眼光を時折見せる、、、。


桜が綺麗に舞う四月七日、、、この日は新入生、そして透花にとって初の授業日である。



 「じゃあ今日はこれでおしまいー。部活動見学が今日から始まるから、決まったら入部届しっかりだせよー。」

初日のすべてが終わり気が抜けたのか、どこか軽い口調で担任の先生は帰りのホームルームを閉めた。

 「ねーねー!先崎さん、であってるよね?私、丸山結って言います。よろしく!早速なんだけど、この後時間ある?良かったら一緒に映画研究部でも見学しない?」

たまたま隣の席となった丸山結(まるやまゆい)が教科書をリュックにしまいながら、透花に声をかけた。

「よろしく。少しなら。」

冷静な口調で透花は応える。

「良かった!でもあんま映画に興味なさそうな顔してる。好きな映画とかある?」

結はかなり積極的だ。

「インターステラーとかビューティフルマインドとかが好きだけど。」

「結構大人っぽい映画が好きなんだね。」

結がニコッと微笑む。

その後も結の質問攻めが続きながら、映画研究部のあるコンピューター室へ向かうことにした。


階段を登っている途中、結はこんなことも聞いた。

「どうしてこの学校を選んだの?」

ありふれた質問、新入生の常套句(じょうとうく)だ。

これに透花は「なんとなく」とだけ。

こんな理由の人は普通いないだろう。

その直後、

「なぜ私なんかを誘った?もっと他にいい感じの人沢山いたろ。」と透花は返す。

 結は驚きつつ、「何でだろ?なんとなく信頼できそうだなって。」と返す。

彼女の素直に微笑んだ表情を見ながら、透花は「ふーん」と一言だけ返した。結はそれ以上聞くことをやめた。

 コンピューター室は パソコン部・映画研究部・アニメ研究部 の3部活がひしめき合っていた。こんな高校は珍しい。緊張感と(にぎ)やかさが漂う部屋の中、映研部(えいがぶ)の説明を聞き終わってすぐ、

 「ごめん入部はしない。この後用事があるから先帰るわ。」

と言い残し、結がさよならを伝える暇もないほど素早く、静かに去っていった。


 


 入学から()()()しか経っていないのに、透花は()()()()()学校に来ていない。

先生も理由を言わない。結は彼女を忘れられずにいた。

「まだ入学したばっかなのに、、、何でだろう?理由もわからない、、もしかしてあたしのせい?!」

結は長々と独り言をつぶやきながら、眠気とくしゃみを誘う陽気の中、誰も座っていない左隣の席を見つめていた。


 そんな時、ガラガラガラ、、、 ゆっくり教室の後ろのドアが開く。おとなしそうな男子高校生が「先崎さんはいますか?」と言っていた。 確かに先崎さんといったよな? という疑いと驚きと好奇心がごっちゃになりながら、

「先崎さん、、、ですか?」と訊ねる。

「そうです、、。先崎さんです、、。どこにいますか?」どうやらほんとだ!ジャージが緑色、、、二年生のようだ。

「今、教室にはいませんが、」と応えると

「そうですか、わかりました、、、、これ渡しておいて下さい」と彼は少し落ち込みつつ胸ポケットから手紙を出した。


 「手紙、、、?」謎が深まり彼女は何が何だか分からなくなってしまった。

「手紙見たいけど、、、そりゃ見たら失礼だよな、、我慢!」

 そんな中、前の女子から話が漏れてくる。

「先崎さんやばくない?! まだ学校生活始まったばっかなのに来てないって!もうかかわるのやめとこー!やばい人なのかも~。」

「それなー」

 彼女はもう何もわからなくなっていた。自分のため、彼女のため、そして手紙の秘密を知るという好奇心のためにも、もう一度、透花に合うことを決意した。

 

結はまず、手紙を渡しに来た男子高校生に話を聞くことにした。「彼さっさと行っちゃったからな~。今4時間目だから、昼休みに探しに行こうかな。」そうして二年生の教室を回ることにした。

 彼はすぐに見つかった。教室で友人三人と食事しているところを。

恐る恐る教室に入る。

「すみません。さっきクラスで手紙を受け取った者です。少し聞きたいことがあるのですが、、、」

と彼に言うと、彼を含めた教室の人たちがが目を丸くして止まる。一瞬時が止まったようだ。一呼吸おいて彼は、

「なん、、、でしょうか、、、」と返した。

「先崎さんについてです。どういった関係なんですか?」

「言いたくありません、、、」

「彼女全然学校来ないんです。どこにいるか知ってたりしますか?」

「それも言いたくありません。」

周りの空気が止まる中、4つの囲んだ席の空気だけが動く。またしても意味が分からない。この空気と彼の返答から、これ以上手紙については聞けないことを察するとともに、できる限りの情報を得ようと咄嗟(とっさ)に考えた。

「彼女について少しでもいいので教えてください。」

これが結なりの最善策だ。それに対して、

「彼女は凄い、、、これしかいいたくありません、、、。もういいですか、、、」

とだけ言われた。


 『凄い』これだけが情報?意味が分からない、、、なぜ教えてくれないのか、、、言えないことなのか、、、本当に彼女はやばい人なのかも、、、 結の頭の中にも『かかわるのをやめる』この言葉がよぎる。それでも『確かめる』の思いが勝る。

 違法的なこと?ギャンブル?夜の街で働いてる?、、、日中からいない、、、あのおとなしそうな男子高校生がそういうことにかかわるだろうか、、、とにかくそういう店をあたるしかないのか、、、それなら行きたくないな、、、

 五時間目の数学の授業を一切耳に入れず、結はじっくりと考えていた。

「どうしよう、、、、、、、あ!!!」

結はダメもとで先生に①〔彼女が学校に来ない理由〕と、ついでに②〔彼女の家の住所〕を聞くことにした。


 「先崎さんが学校に来ない理由がわからないよ。僕も二回訪れたんだけど『今は行きたくない』の一点張りでさ。君が家まで行って話かけてくれるだけでも助かるよー。」

帰りのホームルーム前、担任の先生は簡単に答えてくれた。どうやら先生も理由はわからないらしい。住所は簡単に知れた。先生が軽いのか、結の『彼女と友達になりたいから』という理由が効いたのかわからないが。

「先生が二回話に行けていることも考えると、私は考えすぎで、彼女はただ家に引きこもっている可能性もある。てかそっちの可能性の方が高いか、、、映画の見過ぎみたい。もしそうだったら学校に来ない理由を知りたいな、、、」

また結は長々と独り言を言う。まだ謎は多い。




 結は映研部(えいがぶ)が休みの日である水曜日の午後、透花の家を訪れることにした。

 曇りでパッとしない天気の中、学校から駅までのいつもの道を15分ほど歩き、いつもの帰り道とは逆のホームへ。

電車で40分揺られる。

帰宅部の高校生とご高齢の方が大半を占め、少しだけスーツ姿の人がいる状況の電車内。

席がちらほらと空いている。

どんどん知らない街へ景色が変わりゆく。

いつの間にか目的の駅へ着いた。

階段を降り、地下道を通る。

『北口』の矢印のほうを曲がり、どんどん歩く。

地上へ浮上する。

さらにそこからスマホのマップに従い、10分ほど歩く。

道は細く、ガタガタ。

建物が密集・密接している。

お店はほとんどシャッターが下りている。もう何十年と下りたままかもしれない。

そして、迷うことなく『先崎』という標識(ひょうしき)を見つけた。

知らない場所・降りたことない駅ということもあり、実際より時間を長くを感じた。


 その家はかなり古めの一軒家で、形は長方形のよう、二階部分は少し小さい。駐車場はなく、自転車が2・3台停められるくらいのスペースがある。そして道は相変わらず狭い。

「ここかな?すごい住宅が密接・密集してる、、、」

高度経済成長期の時代から変わらない町なのだろうか、、、降りた時から彼女は古臭さを感じていた。

 「珍しいね~。こんなところに高校生がいるなんて。何の用で来たんだい?」

ギクッ!!!彼女は不意を突かれ驚いた。どうやらおばあさんが話しかけて来たみたいだ。

「ちょっと人探しをしてまして、、」

「そうかい。この辺昔はすごい栄えてたんだけど、今は高齢化で年寄りばっかになっちゃってさ。高校生を見かけるのは珍しいと思ってね。最近の若い子は都会の駅で遊ぶみたいだしね~。昔はボウリング場もカラオケ屋さんもあったんだよ。今は夜にヤンキーがうろつくぐらいだからね。ずいぶん変わったよ。早めに帰ることをお勧めするよ。」

「ご丁寧にありがとうございます。」

親切な人と理解し、彼女は安心した。

 ピンポンを押しても誰も出ず、もう五時半。これが本当に透花の家なのか疑問に思いつつ、おばあさんの言うことを忠実に守り、今日は一旦引くことにした。




 「ごめんなさい佐藤先輩!今日どうしても外せない用事があるので!」

先輩のファミレスの誘いを断り、結は部活が12時に終わる土曜日、日差しが明るい中急いで再アタックを試みた。

前回よりもホームが空いている。

電車内も家族連れが多く乗っており、前回よりも席が空いている。

彼女の家まで付くのはあっという間だった。

そこからがきつかった。


 インターホンは出ず、1時、、、2時、、、3時、、、4時、、、5時、、、時間がどんどん過ぎてゆく。

全く知らない町にいるような、タイムスリップしたような感覚。

玄関前の段差に腰掛けて待っている中、目の前をスクーター、、、軽トラ、、、(じい)さん、、、ネコ、、、が通り過ぎてゆく。

人が通る度に顔を上げていたが、みんな不思議な顔をしてくる。

だから顔を上げるのはもうやめた。

自分のやってることがばかばかしく思えてくる。

弁当も食べ終えて、本も一冊読み終えた。

後半になるにつれてどんどん虚無感(きょむかん)を感じてきた。

でもあの入学初日の不思議な感覚が消えないでいる。

自分の感覚が。


 「おい!あんた何やってんだ?こんなとこで寝る馬鹿がいるか!ヤンキーに見つかってないって奇跡かよ!」

「先崎、、、さん、、、?」

結は寝てしまっていたようだ。声がしっかり聞き取れない。

「ああ。はいれ!」

「本当に先崎さん??」

「そうだよ!いいから入れ!」

結は目標達成できた嬉しさと同時に首の痛みを感じた。

 「何でうちの前にいんだよあんた!」

「先崎さんが学校来ないから、、、気になって。そしたら先生がここを教えてくれて、、、どうして学校来ないの?てか野球の服装?!?!?!」

結は玄関で顔を上げ、透花の服装を見ると同時に顔が固まり、聞きたいことを忘れた。

「この服装?土日は少年野球を教えてんだよ。うちには泊められないぞ。駅まで送るから帰りな!」

「えっ、あっ、ありがとう」

結は寝ぼけながらそのまま駅へ。電車内でまた寝て、いつの間にか自宅の最寄り駅に着いた。


 時計は夜9時を回っていた。「あんた連絡ぐらい入れなさいよ!ほんとに何もないんだね!学校に連絡入れようかと思ってたところよ!高校生になったからってこういうところ気を抜かないの!」

「ごめんなさい。」結は自宅に着くなり、早速母に怒鳴られた。

結はクラスの友達と遊んでたと噓を付き、何とか母親得意の長説教は回避した。


 食事・風呂・明日の準備、、、

 すべてを済ませ布団に入るが、玄関前と電車内で寝たせいで全然寝れない。そんな中、

「あっ!!!!!!」

結は自分にだけ聞こえるかすれた声を発した。聞きそびれたことを思い出したのだ。

 「土日は少年野球を教えてるって言ってたよね?、、、」

彼女はすぐさま、ベットの真横にある机の上のスマホを取り、暗闇の中マップ機能で『グラウンド』と検索する。「あの家の近くにあるグラウンドは、と、、、でもあんま子供いないっていう雰囲気だしなー。おばあさんも年寄りばっかって言ってたし、、、。とりあえず半径五キロ以内のグラウンドをあたるか、、、」

半径五キロ以内には三つグラウンドがあることを突き止めた。




 「本当はこんな噓つきたくないんだけど!!!!!!」

結は翌日の部活終了後、先輩の飯の誘いを家庭の用事と言って断り、家族には友達と遊ぶから遅くなるかもと連絡し、すぐにグラウンド巡りへと出た。今日は電車内の時間が長く感じる。焦りもあるだろうか、、、気になって仕方ない。

 目的の駅を降り、マップを開く。3グラウンドのうち、2つはこれまでとは逆の南口、1つはこれまでと同じ北口だ。

「まずは南口方面からあたろうかな。」

地下道を通り、

今回は『南口』の矢印を曲がる。

地上へ上がった。






 

 南口は全く雰囲気が違った。

 北口側と打って変わって道が広かった。歩道もきれいに舗装(ほそう)されており、少し歩いたらコンビニも見つかった。一キロほど歩くと新しい住宅街、保育園や中学校、更にはチェーン店のスーパーや書店も見つかる。

「こんなに違うんだ!北口側には古い自営業の商店1つしかやってなかったのに、、、」

結は少し期待しながら進む。

この町は線路が国境のような役割を果たしているみたいだ。


 三キロ歩き、ようやく一つ目のグラウンドに到着した。

「誰もいない、、、」

このグラウンドの敷地内だけ空気が古い。雑草は茂り、フェンスにツタが這っている、完全に放置されているグラウンドだった。

「ここはダメかー。もう一件行くか!」

もう歩いてから40分経っていた。足の動きが鈍くなっていくのを感じながら、もう一つのグラウンドを目指した。






                     ・・・・・・・・・・         ・・・・・・・・・・・

 「ナイスバッチィー!」

桜のピークが過ぎ、花びらが塀の(ふち)にちらとしか落ちていない。そんな校庭で少年達の高い声が響く。

市川サンダースが、小学四年生以下の児童が出場するルーキーカップに向け、練習試合をしている。

 「また打たれちゃったよ~。先崎コーチ、バッテリーの指導のほうお願いしますね。」

野球をあまり詳しくないパパさんコーチが指導をゆだねる。

「小学四年生ですからね。打たれてなんぼです。指導はしときますよ。」

彼女は少し笑みを浮かべながら答える。

 監督は市外で行っている高学年の試合を見てるため、この場にはいないのだ。


 試合後、三人のコーチの反省の話が終わり、少年達が帰りたいという雰囲気を見せながら片付けを行う中、透花はバッテリー二人を呼んだ。


「なんで今日打たれたと思う?」

「えっとー、、、、」

「自分が素直に思う理由を言ってごらん。間違っててもいいよ。」 

透花は冷静に返答を待っている。

「真司のコントロールが良くなかった。」 キャッチャーの健司が素直に答えた。

「俺のせいかよ!」 ピッチャーの真司が地面を一蹴りして怒った。

「正直に言うことは大切だ。でもどちらにも非はあるぞ。」 透花が少し強めの口調で制した。


 透花は続けた。

「 まず真司!確かにあんたはコントロールが悪い。でもそこは重要じゃない。ストライクを取りに行こうとして真ん中に遅い球を投げちゃうことが問題だ。

 今はコントロールが悪くていい。一生懸命投げろ。そうしてけば将来必ず実を結ぶ。だから今は全力で投げて、家に帰ったら何が悪かったのか考えて、修正すること!分かった?」

「はい!」 

真司は少し安心した表情で元気よく返事した。

「次は健司。健司はもっとインコースを使ってリードしなさい。全く要求通りのボールが来ないわけじゃないだろ?だったらもっとインコース使って相手を抑えな。今から実演するよ!」


 透花はマウンドに上がり真司にキャッチャー役をやらせ、健司を打席に立たせた。

「絶対振るなよー。でも打つつもりでボールを見ろよー。私も遅めに投げるから。行くぞ真司!構えとき!」 



「じゃあ、いくぞ。」透花は目の色を変えた。


透花がゆっくりと振りかぶって投げる。 

パシィッ!軽い捕球音が鳴る。  初球は外の低めにストレート。


「二球目行くぞ」またゆっくり振りかぶって投げる。

パシィッ!  また外の低めにストレート。


「三球目!さっさと行くぞ」

ビシュ! 透花は少し腕を速く振った。


バシィッ!!!前の二球より強い捕球音が響く。  

三球目は内角高め、健司の体の近くをさっきより速いストレートが走った。



「どうだった?最後の球は。」

「えっとー、、、少しびっくりしました。」

構えたままの状態で健司が応える。

「そう!びっくりするだろ。今日の試合の打席でも感じなかったか?」

「はい。」

「これはな、外角低め=体から一番遠い部分 に意識がある状態で 内角高め=体に近い部分 に投げるから、ストライクだけどびっくりするんだ。

 君たちはプロ野球とか見るか?勉強になるから見てみるといいぞ。二人とも試合にはまだ慣れてないし、これまではただ打つ・捕る・投げるしかしてこなかった。だから知らなくてしょうがない。

 でも野球ってもっと複雑で面白いってわかったかな?君たちでも勉強次第ではいくらでも強くなれるんだぞ。」

「はいっ!」

 二人とも素直な笑顔で返事した。

「疑問があったらいつでも聞きに来な!」

「はいっ! 」

再び二人の少年の返事が響く。


「丁寧な指導ありがとうございます。」

パパさんコーチが透花に礼を言う。

「全然かまわないですよ。コーチですから。

 このチームのモットーは去年から『エンジョイベースボール』に変わりましたからね。

 無理矢理じゃなく、野球を面白いって思わせることが指導の最優先事項ですから。

 そのためには丁寧な指導が大切です。あの二人、双子だしこれから楽しみですね。」

夕方一歩手前の明るい陽差しの中、早めのグラウンド整備が始まった。


 「うん?」

そんな中、校庭の入口から一人の女子高生がこちらに向かって走ってきた。

「まーたあいつか!」

透花は驚き、コーチは困惑した表情を見せる。

「こんにちは。、、突然すいません。、、今お時間大丈夫、、、でしょうか?、、、」

「大丈夫ですが、、、」

追いつき、息を切らしながらパパさんコーチと挨拶を交わした後、透花に話しかけ始めた。

「小学校だったんですね。、、、野球を、、、教えてる場所、、、」

「昨日に続き今日もかよ!あんたある意味すごいよ!探偵に向いてんじゃないのか?!」

「それは、、、ありがとう、、、」

「褒めてはねーよ。名前は丸山結って言ったよな?そんなに私と話したいのか?」

「名前覚えててくれてありがとう、、、話したいし、聞きたいこともあるよ、、、」

「もう今日で、それはよーーーく分かった。まずは水飲みな!」

透花はアクエリアスのペットボトルを渡した。

 

 結はグラウンド整備の邪魔にならない体育館前で座っている。パパさんコーチに断りを入れ、透花は結の隣に座った。

「どうだこの町は。面白いだろ。この町はこの世の中に似てる。初めてこの駅を降りた人は、降りた側しか見ずにこの町をわかった()()()になる。裏側には全く違う世界が広がってるのにな、、、」

透花は続ける。

「両側を知った後、今度は片方は()()()()()、もう片方は()()()()()()って決めつける。町の中の一つ一つの建物を見ずにな、、、本当はもっと複雑なんだよ、、、」

結は1つ目に訪れたグラウンドを思い出した。


 「そんなことよりあんたの聞きたいこと、、、の前に、私も一つ聞きたいことがある。なんで私にそんなこだわる?」

透花がまず質問してきた。

「なんか最初にあった時のこと忘れられなくて、聞きたいこともあるし、すごい大人っぽくて会うと安心するというか、、、」

「ふーん。そうみえるか?まー、いいけど。」

透花は少し困惑気味に言葉を返した。

「で、聞きたいことは?」

「学校はあの日以来来てないけどさ、何してるの?先崎さんに手紙届けに来た人いたし、悩みとかあったら相談するよ私。」

「大丈夫だ。平日のことはいえねー。学校にはあと一週間くらい休んだらいくよ。」

「どうしても言えないの?」

「どうしてもだ。もーいいか?」

「言えないのは分かった。でも明日は学校に来てよ!来てくれるだけで私嬉しいから!」

透花が指先を唇に当てる。

「うーん、、、、、、わかった。早退するけどいいか?」

「いいよ。」

もう空はオレンジ色に変わっていた。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


読者の皆様は知らない駅に降りる時、ワクワク感を感じるでしょうか?


私は感じます。そして、

・どんな店があるのか

・駅のつくりは

・コンビニはどのくらいあるか 

などを注意して見てしまいます。

 特に人が少ない無人駅などで、コンビニや商店、自販機を発見すると、「小さいながらに利用者を支えているんだなー」と感じ、何故か温かい気持ちになります。(伝わってたら嬉しいです。)


そんな訳で、私の短い人生の中で印象に残っている二駅を紹介します。

①下総松崎駅(JR成田線)

 千葉県にある駅です。これで「しもうさまんざき」と読みます。9時~16時半の間しか駅員さんがいないため、この時間帯以外は無人駅です。田んぼに囲まれたのどかな雰囲気がとてもよく、駅のホームにアイスの自販機が置いてあったことがとても印象に残っています。

②養鱒公園駅(会津鉄道)

 福島県にある駅です。読みは「ようそんこうえん」です。ここは完全な無人駅で、小さな屋根付きの待合場所が1つだけあります。近くにはラーメン屋さんなどの店があり、ここのラーメン屋さんの醬油ラーメンがサッパリしてて、美味しかった印象があります。


二駅とも、現実を忘れられるような駅です。

私は鉄オタではないので、行ったことある駅から印書深い駅を紹介させていただきました。

読者の皆様ももし、面白い駅を知っていたり、駅にまつわるエピソード等ございましたら、感想やコメントでお書きください。(作中に出てくるような駅があったら私は驚きます!)

また、作品の評価やコメントをいただけると幸いです。頂いた意見は次回に活かしていきたいと

思います。

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