第6話 仮
このお話は未完成です。
内容が変化して、尺も延びていきます。
ご了承下さい(-人-)
母猫が子猫に優しく呼び掛ける声が聞こえてきて、視線をそちらに巡らせた僕の視界に、子猫がトタトタと覚束無い足取りで三匹出てきて、尻尾を立てて母猫にすりより、甘えた声で鳴いている光景が見えた。こんな世界になって仕舞っても、動物達の世界は見ていて和むのだが、今現在、目下僕はそれなりに必死で逃走している身分である。
この世界は今、老人ホームの空き枠が無くなっている問題と似たように、今度は地獄の空き部屋が無くなって仕舞って、代わりに生者の世界に新しい枠を作り始めたのだろうか、理由は判然とは判らぬが、兎に角も、世界中で死者の群れが闊歩しており、死者達が生者を見ると恨めしいのか何なのか、執拗に追ってきては、生者の抵抗が尽きたところを貪り喰っている。そんな世界になって仕舞った。
弱肉強食…とはまた違う社会。強者が弱者を喰うのではなくて、勿論と、そんなパターンもあるのでは有るが…それは生き残った人類達の数少ないそれであって、今現在に於いて主流を占めて仕舞っているこの現象は、逆に、弱者が群れて強者を間断なく襲い続けて喰らっている。そんな地獄になっている。
強者・弱者の定義にも色々な判断基準は有るのだろうし、この例えが適当かどうかは判らない。他の、僕よりかはよっぽどに分別に勝った人間が僕のこの考えを聞いたところでどの様に判断するのだろうか?
まぁ、そんな『他人』が今、僕の周囲には全くと言って良い程に存在しておらずに、僕はもぅ数日間もずっと身を潜ませて僕以外の生存者とは全く誰とも遭遇せずに、人類達が遺した『真新しい遺構』とも形容すべき荒廃し始めたばかりの、少しだけ前の時間では人間が当然としてこの世の主人の如くに振る舞う事が出来ていた、そんな文明社会に僕も身を置いて居たのではあるが、それ等が既に嘗てとなってしまっているこの場所で、奴等の気配を探り身を隠しながら、走者が投手の隙を目敏く見て盗塁するみたいにして、影から影へと、壁から壁へと、掩体を色々と変えながら移動を繰り返して、真新しい遺構の数々…それはコンビニの跡であったり、スーパーの跡であったり、大型商業施設の跡であったりするのであるが、そんなオブジェクトを見出しては、日持ちする缶詰め等の食料品やなにかを探して集めて、また、影から影へと、壁から壁へと、掩体を利用して奴等から姿を眩まし続けて暮らしている日々だ。
つまりは、平たく言って仕舞えば、この世界がゾンビパニックみたいな感じになっている。と言う次第だ。