■両手を合わせて 『第一章 扉をあけて』
ないよー
砂場遊びが好きでした。
一人で夕暮れまで、砂で何かを作るのが好きでした。
ママゴトに誘われる時もありました。
ても、いつもお父さん役をさせられていました。
妹ができました。
妹が出来てから私は何故かよく怒られるようになりました。
母が洗濯を忘れて汚れた服を着て学校にいきました。
あまりにも汚かったせいか、ジャージに着替えた女子が制服を貸してくれました。
いっぱい笑われました。
家を飛び出した事がありました。
雨の中濡れたまま歩き、疲れて雨宿りしていました。
綺麗な女の人が来て、笑顔で私の手をとり、部屋へ連れていかれました。
シャワーを浴びせ、食事を作り、私を抱きしめながら暖かいベッドの上で彼女は泣いていました。
初めて柔らかい闇の中で眠りにつきました。
戸を激しく叩く音で目が覚めると、彼女は透き通るように白く冷たく、とても綺麗でした。
今度は男の人が戸を開けて入って来ると、そのまま無言で私の手を掴み、連れていかれました。
彼はいつも私を激しく抱きしめ、最期の時は私の上で子犬の様に眠りました。
そして彼はいつも激しく戸を叩き、私の知らない言葉でよく叫んでいました。
サイレンが響く雨の夜、私の子犬は帰ってきませんでした。
寒さとひもじさの中、独りで何夜も過ごしました。
押入れをあさると、サンタさんの袋を見つけました。
袋をあけると、沢山の小さな袋に入った雪のように真っ白く輝くものが私の目を奪いました。
薄れゆく意識のなかで、ただひたすらソレを口の中に頬張りました。
視界が歪み、体が軽くなり、生まれて初めての笑顔がこぼれ、そのまま瞼が落ちました。
目が覚めると、真っ白な天井と、一定のリズムの機械音が静かに私を包み込んでいました。
いつも綺麗なベットで何日も寝ていると、シワシワのコートと、帽子を被ったおじさんがやってきて
名前を書いてと頼まれたので書いてあげました。
それから暫すると、わたしのベットは硬く冷たい布団に変わり、数人の人達と同じ部屋で過ごす事になりました。
とても規則正しい生活になりましたが、彼らも規則正しく電気が落ちると色々な物を私に与えてくれました。
格子の外に見える景色が白くなりはじめる頃、ガラス越しに見た二人はとても血の繋がった人たちには見えませんでした。
プレゼントは一枚の印鑑が押された薄い紙と、妹だった人の写真をもらいました。
これでどうやら私は誰にも必要とされない独りなのだと分かりました。
残された一枚の人が映った物を時間があるときに眺めては、綺麗だなと思い、いつしか毎夜繰り返される儀式には私は彼女になっていました。
そして、何度目かの冬を越え、格子の外から柔らかく優しい風が匣に入り出した頃、わたしは子犬達とお別れの記念に刻んだ
桜の木の爪跡を一目みて門をくぐりました。
続きはリクエスト次第。