夢の高校生活
初めて恋愛を書きました。気に入っていただけると嬉しいです。まだまだ続きますのでよろしくお願いします。
親愛なる未来の僕へ。
ここに僕が彼女との日々をここに記します。
彼女と喧嘩しちゃった後、見てください。
悲しい事があった時、見てください。
不安になった時、見てください。
別れようと思った時、見てください
それで思い出してね。彼女に救われたあの時の事を。それで考え直してください。話し合ってください。そして、その後なら、僕は僕自身の選択を応援します。だけど後悔だけはしないでください。
過去の僕より。
※※※
中三の冬、雨が降る中、僕は無惨にもフラれていた。
「私、引っ越すんだ...。大阪に。」
パラパラと傘に当たって飛び散る、どこか悲しげな雨の音が聞こえる。普段と変わらないはずなのに。
「だから、ごめん。あの、そういう訳だから青野君とはもう付き合えないんだ...。」
振られるの練習してたはずなのにな。ダメだな僕、胸が苦しいよ。でも、僕はそんな気持ちを悟られないように、言葉を絞り出した。
「あ、えっと...。そうなんだ。なんかごめんね。あの、その...」
「あ、ううん。大丈夫だよ。あの、そういう事だから。今までありがとう、青野君。ごめんね、こんな感じでお別れになっちゃって。じゃあ元気でね......。」
彼女はそう言って、雨の中教室へと走っていった。
見て分かるように、僕は中学三年生の冬に、今まで付き合ってきた女の子に振られてしまった。
情けないとでも言えばいい。それでも事実は変わらない。僕はこれ以降、『恋を出来なくなった』
※※※
桜が満開の春。僕は無事、第一志望だった地元の賢いとは言えないけどそこそこの高校へと合格。この春から高校生である。
「くぅぅーっ!」
僕は思わず小さくガッツポーズ。夢の高校生活の幕開けだー!誰でも少しは興奮していると思う。
「よっ、青野!」
「あ、おはよ亮太」
「ったく...。朝から暗ぇーなお前は。夢の高校生活だぞ、楽しみじゃねぇのかよ」
「何言ってんのさ、僕は暗くないよ」
この元気な奴は桜壁亮太。見た目はキツそうだが、実際はかなりビビりの優しい奴だ。中学時代からの親友の一人。僕が振られた時に一番に励ましてくれた奴でもある。あともう一人居るんだが...。取り敢えず良い奴って事は分かるね。
噂をすれば影がさす。
「ゆぅーとぉー!!」
背中に物凄い衝撃がはしった。背中がヒリヒリする。後ろを振り向くと手を振っている綺麗な女の子がいた。
「おはよー、ゆーと!今日も元気?」
「おはよー香織。元気...かな」
「あ、おはよー亮太君!」
「おう、おはような、新庄さん」
この子の名前は新庄香織。僕が小学生の頃、隣の隣に引っ越してきたいわゆる幼馴染である。香織は父親がアメリカ人で、それまで父親の親戚とアメリカに住んでいたと聞いている。そして母親の里帰りのついでに日本に住むことにした。いわゆる帰国子女ってやつだ。
そして僕は思う。大半の人に帰国子女のイメージを聞くと、帰国子女といえば優秀、だろう。だけど僕はそのイメージは正しく無いと思う。
その例がこの香織である。彼女の口調と行動は、お聞きした通り、アホにしか見えない。朝からテンションがめちゃめちゃ高いし、僕に会う度に背中バンバン叩いてくる。そしてそれはとても正しい。彼女は生粋のアホである。
「なぁに考え込んでるの、ゆーと」
「んー?やっぱ香織はアホだなって考えてた」
「えぇー!私そんなにアホなの!?」
「俺も青野に賛成。逆にどう見えるんだよ、主観的に」
沈黙...。
「可愛くて頭良い一緒にいて楽しくて面白い可愛い女の子以外にどう見えると、男子諸君。」
「「アホな女の子」」
「な、なんですと!」
「「あはははー」」
香織は顔を真っ赤にして怒っている。あ、この流れは...。
「私、これからはアホだって思われないようにする!!」
「「.......」」
最早恒例行事となりつつある香織のアホ辞める宣言。当然の事ながら一度も成功した試しがない。
「さて、青野君と新庄君。我々のクラスを見に行こうではないか。」
「あいあいさー!みんな一緒がいーね」
「そうだね、香織。じゃ行こう」
僕はニコって笑いながら後ろを向いた。亮太がこっちを微笑みながら言った。
「おう!」
※※※
クラス分け表はホワイトボードに貼り出せれていた。この学校には全部で8クラス、一学年にある。1クラスに三十五人生徒がいるらしいから、僕ら三人が同じクラスになるのは難しいのかもしれない。
「亮太ー、どう?僕達の名前あった?」
「いや、まだ見つかんねえ。青野は見つけたか?」
「僕もまだ。アホりはー」
(プイッ)
「「......」」
僕はチラッと亮太を見た。亮太もこっちを見てる。目が合うと互いに理解した。流石にいじりすぎた。さあ、香織の機嫌を直そう!
「「ここら辺に、可愛くて頭良い一緒にいて楽しくて面白い可愛い女の子はいませんかー?」」
(ビクッ)
よし、対象が反応した事を確認。次のステップへと移行せよ。速やかに移行せよ。
「亮太、ここいらには居ないみたいだよ。香織って子がまさに僕らが探してるのにベストフィットだと思ってたんだけど。」
「しょうがないだろ、居ないみたいなんだから」
「そうかー。残念だね」
「青野、そんな子が一緒に居たら楽しいよな、絶対」
そして必殺。
「「今がラストチャンスなのになー」」
僕と亮太はまたチラッと香織の方を向いた。香織は頭を抱えてうなっている。その様子を見て、僕と亮太は互いに頷きあった。
「じゃあもう行こう、亮太」
「おう、そうだな」
「そ、そそそれ私ですー!...二人とも分かっててやってて意地悪」
案の定、最後の最後で釣れたぞ。
「ごめん、香織。香織が全然反応してくれないからさ、ちょっと意地悪しちゃったんだよね」
「おい、ホワイトボード周りに残ってんの俺らだけだぞ」
「あ、私もうみんなの分名前見つけてきたよ?」
「「どうだった!」」
僕と亮太の物凄い剣幕を前に香織はビクッと驚いた。
「えっーと、私達全員はぁ、ドゥルドゥルドゥルドゥル...テン!1年D組だったよー!」
口を閉じるのと同時に香織が僕に猛烈なタックルを繰り出してきた。でも残念だったな、僕は元剣道部だ。そんなもの当たらない。香織は見事にタックル出来ずその勢いのまま壁にぶつかった。
「やったね、亮太」
「おう、これで夢の高校生活の実現だぜ!」
「ゆーと、躱すなんて、酷いよ?鼻赤くなっちゃったじゃない。せっかくこんなハーフの超絶美少女とハグできるチャンスだったのに。もう一生女の子とハグ出来ないかもよ?」
確かに香織はとても魅力的だ。普通の男子高校生にとって、目が合っただけでドキドキしてしまうだろう。でも僕は彼らとは違う。恋愛は一時の幸福感と永遠の悲しみしか生み出さないと思っている、だからしない。
「いいから。ほら香織、こっち来て」
香織は僕と亮太の所までテクテクと歩いてきた。
「という訳でこれからもよろしく、亮太、香織。」
「よろしくね、ゆーと、亮太君」
「おう、よろしくな、二人とも!」
こうして僕の波乱に満ち溢れた高校生活は始まった。
夢の高校生活を送りたいなー