ルナ外伝 ~月の約束~ 3
フリード・ムーンハート
コーゴー平和執行局序列内聖戦士序列32位、ホーウェン班分隊長。
単体で世界を滅ぼせる唯一の種族と謳われるソラの一族であり、さらに一族でも名家とされるムーンハート家の出身だ。
そしてルナと同期であり、最も親しい友人だ。
「飲むか?」
「いただこう」
筋骨隆々で大柄な体格であり、見た目通りに大変な酒豪である。
自前の蛇口付き大樽の蛇口をひねり、透明な酒をジョッキに注ぎルナに手渡す。
「乾杯!」
「乾杯」
いつものようにジョッキを交わしての一気飲みをするフリード。
「プワッハアアアァァァ!!! 最高だなこれ!!」
「度数幾らだ」
「知らねぇ、55くらいじゃね?」
ルナは半分魔人の血が入っているため飲むことは出来ない。
ので一応注いではもらうが、乾杯が終わればフリードが気持ち良く飲み干す。
最初の頃は注いでもらう事を拒んだのだが、フリードはどうしても酒で乾杯したいとの事で毎回注いでもらっている。
「にしても、またとんでもねぇことやってくれたな!」
「まだ足りない、あの程度の紛争の解決に半日もかけては……特等には……あいつには届かない……」
「はいはいまたそう背負い込むなって、復讐もいいけど友との宴は楽しみなさいよ」
「……そうだな」
「っははは! 酒も飲めねぇのに何で俺より強ぇんだって話だな!!」
※ ※ ※ ※ ※
同時期にコーゴーの育成戦士隊への入隊を果たしたルナとフリード。
「今日から君たちの教官として、立派なコーゴーの戦士として必要な物事を叩き込む、シキシマ・アヤセだ、よろしく」
コーゴー本部である〝神樹ウーヴォリン〟の根元にある育成戦士養成機関。
その大広場の北にある壇の上に立つシキシマを前に、育成戦士志願者約700名は敬礼する。
───ただ1人を除いて。
(お、久しぶりだな~敬礼しねぇのは……エスタ以来か?)
少し面白そうに笑うシキシマは台を飛び降り、ルナの元に歩み寄る。
「……うおっ、君すごいな……名前と種族は?」
「……ルナ……人間と……魔人の混血だ」
混血と聞いてどよめく周りをシキシマは両手の平を広げて黙らせ、最年少と思われるルナの話を続けて聞く。
「ほう混血か……何のためにここに来た?」
通過儀礼にある通り、しかしこの言葉にはシキシマ自身の単純な興味があったとされている。
少年はさらに目の色を鋭くし、シキシマも思わず鳥肌の立ったオーラを放ち思いを口にするもの
「───あいつを……ハロドック・グラエルを……
───殺すためだ」
明確な殺意、向けるは実の父親。
コーゴーの育成戦士には数年に1度の確率で、ルナのように復讐などの負の感情に飲まれた者がちらほら現れる。
その者は大概成績が良く、そして実戦で5度目以内に死ぬ確率は100に等しい。
だがシキシマは、ルナをその有象無象とは違う別格の器を見抜いた。
「なるほどな、だがルナ、ハロドック・グラエルは特等聖戦士と同格の強さを誇る、何より神出鬼没のためにまず見つからない、情報もほぼ無い」
「分かってる、ドルドさんも言っていた」
「よし、俺からは何故復讐心に駆られたのか聞かねぇ、だがお前は見込みがある、ここにいる誰よりもな」
再び周りはどよめく、こんな特別扱いを匂わせる発言はいいのだろうかと。
コーゴーは実力至上主義のため優遇などはザラにあるが、仮にも教官長であるシキシマが初日に育成戦士全員の前でそんな発言をするのは問題だろうと。
しかしフリードをはじめとする育成戦士の本物の実力者数人は気付いている、その程度で批判したり心を痛める雑魚はここには必要無いと。
「訓練は明日から、育成期間は最長5年、それでも戦士になれなかったら悪いが諦めろ、ちなみにノルマをクリアして最終試験に合格すれば1年だろうが半年だろうがでも卒業出来る」
シキシマは台の上に戻りながら全員にはなしかける。
そして台の上に戻り、最高の笑顔でこう投げかける。
「これからやんのは死ぬ方がマシなのばっかりだ、はっきり言って俺も受けたくねぇ、だから超えてこい、戦いはもう始まってるぞ」
入隊式ではお決まりの言葉となっているシキシマの言葉の後に、ルナ以外の全員が緊張感のある敬礼をする。
これがルナとフリードの、初めての出会いだ。




