ルナ外伝 ~月の約束~ 2
「ご苦労だった、迅速かつ最低限の被害数でこなした事は評価に値する」
「ありがたきお言葉、感謝いたします」
後日、任務遂行の報告をホーウェンに伝えるルナ。
ルナはホーウェン班の班員でたり、副班長も任されている。
今回の紛争解決の任務もホーウェンがルナの力を試すにうってつけだと踏んで単独で行かせたものだ。
「だが本物の特等聖戦士ならばこの程度、3時間で解決出来る、精進しろ」
「は!」
※ ※ ※ ※ ※
敬礼をしてホーウェンの部屋を出たルナは、昼間だが本日の仕事を全て終えたため本部内の自宅に帰宅しようとした。
が、自宅のある階層の廊下を歩いていると突如背後から口を手で押さえられ、男子トイレの個室内に連れ込まれる。
(気配が分からなかった……という事は……)
「……いい加減にしてくださいアイン様」
「え~、いいじゃんかよ~」
最近ルナの事を狙ってはことごとく断られている暇人(本来は暇じゃない)特等聖戦士序列3位───アイン・ボルセン。
気配を消したのではなく気配の質を変え、その上で感じ取る感じ取れないという次元には無い消し方でルナに近付く常套手段だ。
ちなみにそのホーウェンですら気付けないその特殊な気配の消し方は、誰も使えないアインオリジナルである。
「今日ね……私ぃ……下履いてないの」
「そうですか、失礼します」
目を逸らしてモジモジしながら甘え声で口走るアインに対し、ルナは微塵も表情を変える事無く個室から出ようとする。
「ちょっと待って~!! 目の前で女の子が下履いてないって言ったらその気になるよね!?」
「あなたは常時履いてないに等しいじゃないですか、今さら痴女に発情なんてしませんよ」
「私はそんな軽い女じゃありません~!! 現に今日だってまだ4人としかヤってないし!!」
「もしもしゼルク様、例のブツ捕らえました……はい、聖戦士居住区80階です」
話し合いの余地なしと言わんばかりにルナは本部内でのみ使える〝携帯型言伝貝〟で特等聖戦士序列4位───ゼルク・アレスを呼び出す。
ゼルクは本部内でのアインの監視係を務めており、アインが問題行動を起こしたという連絡を受けたなら妖術による瞬間移動で駆け付ける。
ゼルクの到着を感知するとルナは個室のドアを開けて居場所を特定させる。
「……またか」
ちなみに普通の男達はアインに誘われる事を問題行動だと認識せずホイホイ着いていくので、ゼルクはあまり連絡を受けないのだ。
「ちょっと邪魔すんな! まだ私ルナちゃん食べてないの!!」
「ルナ、お前の合意があれば目を瞑るが」
「疲れてるんですね……」
ゼルクはアインの監視を妖術を駆使して行っているため、常に霊力を出し続けなければならない。
それは体にかなり深刻なダメージを与え、疲労が蓄積されていく。
そんなせいかゼルクは極力アインと関わる事を基本的に嫌がっており、可能ならばほっといてくれと言いだしたいそうだ。
「行くぞ」
「きゃああああ!! 痴漢よ痴漢!!」
「うるせぇな男子トイレに侵入してるお前が痴漢じゃねぇか」
「え? だって男子トイレに入らないと男いないじゃん?」
「お前普通に用を足す時も男子トイレ使ってんのか……」
ゼルクは妖術を駆使してアインをがんじがらめにして連行していく。
「あの、ゼルク様」
「何だ?」
常日頃から疑問に思っていた事を聞くためにゼルクを引き留めるルナ。
「その、どうやってアイン様を押さえてるのですか? お言葉ですが、この程度の妖術の拘束ならアイン様がひと暴れすれば容易に解けるかと」
「別に説教するわけじゃない、性欲故の暴走ならば性欲を満たせばいい」
つまりゼルクは、アインを拘束した後にアインの性的欲求を満たしており、アインもそれを満更でも無いと思っているため大人しく捕まるらしい。
「つっても化け物クラスの体力だ、半日責め続けなければ大人しくならない」
「凄まじい妖術ですね」
「おい変な想像するな、俺は妖術を使ってない、拘束した所をアインの部下にやらせてる……汚れ仕事は嫌いなんだ」
「誰が汚れ仕事だって!!?」
こうしてゼルクはコーゴー最強の問題児たるアインを連行して、トイレから瞬間移動で自室に向かっていった。
※ ※ ※ ※ ※
「お疲れ~、またアイン様に捕まってたんだってな」
「ああ、まあな」
帰宅したルナの自宅内にいたのは、お菓子を貪りながらルナの帰りを待っていた男───コーゴー序列内聖戦士序列47位、フリード・ムーンハート。
ルナの唯一にして無二の、親友と呼べる男である。




