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召喚獣の億劫  作者: DTスナギツネ
黒狼プラウドウルフ
8/10

第2話 星に仕えた黒狼

違うッ


黒狼が自分に向けられた剣を牙で受け止めると平野に甲高い音が響いた。あたりには何もなく背の低い雑草が地面を覆っており、その上で少年達が横になっていた。


目の前の少年は向かってくる俺にあろう事か短剣を振りかざしてきた。そんな大ぶりでは獲物の息の根は止めることはできない。


「今だっ! やれっ!!!」


動きを止めたストラの両側から少年が攻撃を仕掛けた。片方は刃こぼれした斧をを両手で持って飛び上がると思い切り振りかぶり、もう片方はショートソードの先を地面に擦らせながら走り切り上げようと。


その二つとも俺の首を切り飛ばそうとしている。


ストラは首を回す。短剣を持った少年は咄嗟に手を話そうとするが間に合わずそのまま一緒に一回転し、ストラに迫っていた少年たちの横っ腹にぶつかって巻き込み、吹き飛んでゆく。


次だ。


そう足を進めようとした瞬間に風を切る音がしてストラの目の前に矢が突き刺さった。止めた足を見てか、次は横っ腹に火の塊が迫る。急速に向きを変えてあえてそれに向かって走り出すと飛び越えて躱す。


着地した俺を見て少年は動きを止めて口が空いたまま閉まらなくなった。バカじゃない。詠唱は再開すれば間に合わず、襲われるということをちんけな頭で理解している。


振り返ると別の少年が第二射を番えていた。しかしそれも焦りのせいかもたついて無駄が多く到底間に合わない。


地面を抉り土を飛ばした。一秒と待たずにストラの顎が少年の頭を捉えた。


俺は懲りずに力を込める。頭蓋を砕き、脳漿を飲み込んでやろうとする。


「ヤメっっっ!」


だがやはり契約はそうさせない。決して俺にこの少年たちを殺させない。


こんなクソくだらない仕事、こいつらの命を持ってしても対価としては不十分だというのにそれさえもソルジは許さない。


ああ、なんて嫌な仕事だろう。


孤高で誇り高きハンターであったあの頃へはもう戻れないというのだろうか。


ストラは頭を吐き出すと少年達に背を向けて歩き出す。


それを見たソルジはヤレヤレと肩をすくめ、少年達に帰るぞと告げた。


「くっそぉ……もうちょっとだったんだけどなぁ。」


「全然そんなことなかったよっ! だから嫌だって言ったのに……。」


「まぁまぁ、そんなこと言うなよカインド。レイブリーの馬鹿な作戦に乗った俺らが悪かったんだよ。」


「なんだとルフネス! テメェだって賛成してただろうがっ!!!」


仲良く吹き飛ばされた三人の少年たちは起き上がってあーだこーだと言い合いを始める。


ソルジはそれを見て顔を押さえると疲れた声でさっさと寝てる連中を起こして連れて帰るぞといった。


「あ、ありがとう。」


「不運でしたね。」


ロッドを持つ少年リージェンスは顔中が唾だらけの少年チミティに手を貸してやる。


三人の元気な少年は気絶している他の少年をゆすり、ビンタして起こしていた。


それでも起きない少年はソルジが全員を一まとめにして肩に乗せた。


「よっし、帰るぞ。」




たどり着いたのは町の離れに立つボロい一軒の家だった。


十数人の人が住むのには少し小さすぎる。


その頃には気を失っていた少年たちも目が覚めてふらついた足取りでなんとか歩いていた。


空の色はもう既に赤から灰色に変わり始めていてすぐに夜が訪れるのが分かった。


「よっしゃ! 飯にするかっ!」


ソルジの掛け声で少年達の全員に活気が戻り、服を掴んで早く作ってくれよと急かし始めた。


ストラはその騒々しさに苛立ちを覚えていた。力のないガキという存在は嫌いだ。それに情けをかける弱い奴も嫌いだ。


この家には行き場を失った身寄りのない少年達が集められてソルジが面倒を見ていた。


一体それでソルジになんの得があるのだろうか。


腹立たしいのは俺が呼びかけに応えた男がこんな弱者同士の傷の舐め合いなどにうつつを抜かす腑抜けだったことだ。


吊り下げた肉を削ぎ落として鉄板に落とすとはやくはやくと少年らにせがまれるたびにソルジの頬はほころび実に嬉しそうだ。


あれは弱者の顔だ。戦士の顔などでは決してない。


だが一番腹立たしいのは未だそんな男の召喚獣に甘んじている自分自身だった。


俺は誇り高くあらねばならない。黒狼として、プラウドウルフとして。


ソルジは俺が不満を抱いているのを知って剣を抜いた。


俺たちは森で相対した。肌がピリつくのを感じた。強者の圧を受けるあの感覚、間合いの測り合い。


ソルジはタダ一度、剣を振るった。それは俺に届かないはずだった。取り回しの悪いロングソードでは森の木にぶつかって俺の牙だけが首に至るはずだった。


あろう事かロングソードは剣をすり抜けた。


切り伏せたのではない。現に木には切り傷一つ残ってはいなかった。


マジックソード。魔法が込められた剣は障害をすり抜けて俺の首筋に充てがわれた。


ソルジはそれ以上に力を込めることはなかった。剣を鞘に収め背を向けた。俺ではあいつに勝てなかった。腑抜けた戦士に勝てなかった。


では俺は一体何だ。なんだというのだ。


ストラは月を仰いだ。風に揺れる黒毛が何処か寂しそうだった。


今の俺では、偉大なあなた様に仕えることも叶わないでしょう。


家の前に置かれたでかい机の真ん中に乗るランタンが夜を照らし、並べられた肉に皆一様に食らいついていた。落ち着きがなく口の周りを油でベトベトにすると、ロクに噛んでいない肉が喉に詰まって胸を叩いた。


光を避けるようにしてストラは影の中にいた。


何かを囲うよう、体で円を書くように座り混んでいた。


コトリ


ストラの目の前に皿が差し出され、その上には分厚く切られた肉が置かれている。


「ほら、腹減っただろ。」


ソルジはそう言って笑いかけるとまたすぐに少年たちの元に戻った。無性に腹が立って肉を一口で頬張り咀嚼する。


「あーっ!!! ストラの肉が一番でっけぇ! ずりぃ!」


遠くでそんな声が聞こえた。




「これでっどうだっ!!!」



「「「同時攻撃だっっっ!!! ぶへぇぇぇぇ」」」



「当たってっっっ!」



「燃やし尽くせっ!」



「お前もマダマダだな。」



月日は残酷に過ぎ去ってゆく。少年たちの刃はやはりストラに届くことはなく、ストラの牙はやはりソルジの首に至らない。


ああ、気高くあらねば。


気高くあらねばならぬのだ。


ギリリと牙がなった。


少年たちはすっかり見違えて今は血色がよく肉も付いた。剣を持つ腕も地を駆ける足も太くなった。


ソルジはそれを見て嬉しそうに笑うと狩りに出る。なんの縁もない少年たちを一人で養う。


一体、こんな生活に何の意味があるというのか。


「お前たちには、俺と同じハンターになってもらう。」


音がピタリと止んだ。騒々しかった少年たちの動きが止まった。


「今更あらたまって何言ってんだよ、親父。みんな薄々気づいてたってーの。」


レイブリーのその言葉に続いてほかの少年たちもそうそうって頷いた。臆病なチミティは僕はちょっと怖いけどと申し訳なさそうにして小さくなった。


そんな姿を見てルフネスは大丈夫、オレが守ってやるって肩を組む。


「お前たちはどうして今の武器を選んだ。って言っても十分に選べるほど武器が揃ってたわけでもないが。」


少年たちは少し考えてカッコよかったからだとか楽そうだからだとか好き勝手言った。


繰り広げられる茶番劇がえらく鼻についた。


「僕は怖いから、近づかなくていいように……。」


隅に置いていた弓を抱き寄せてチミティは言う。


「俺は……短剣は短いから、近づかないと殺せないから、俺が一番前にいればみんなを守れると思って。」


皆が息を飲んでレイブリー見つめた。それはストラも同じだった。


綺麗な瞳だ。


ストラは短剣を握り締める手が机の下で震えているのに気がついた。


なんて弱い。


「ったく! 冗談よせよ、お前みたいなバカがそんな事まで考えてるわけないことぐらいお見通しだぞ。」


「なんだもう。ビックリしちゃったよ。ちょっとカッコイイなって思ったのに。」


ルフネスが茶化し、カインドが少しガッカリした表情を浮かべる。それに続いてレイブリーさえもバレちった?とおどけて見せた。


人はなんて弱い生き物なんだと思った。




月日は残酷に過ぎ去ってゆく。やはり負けず、勝てずにもどかしさが募った。


そのままに時が来てしまったのだ。


「おい、それ俺の肉だぞっバカっ!!!」


「早いもんがちなんだよおっ!!!」


「ですからね、ルフネスは少し雑すぎるのです。私たち後衛をしっかりと意識してもらってですね。」


「……すみません。」


「大丈夫だよ。チミティの元まで敵は向かわせない、それが僕らの仕事だから。」


「う、うん。頑張ってみるよ……ありがとうカインド。」


「おい! とうとうぶっ倒れたぞ! 顔が真っ赤でこれ……やべぇんじゃねぇか!?」


明日、少年たちはハンターとなる。新たな戦士の誕生を祝って夕食はより一層騒がしかった。


弱き人が弱き人を慰める。それはなんて健気で哀れだろうか。


酒を飲み、騒ぐことで自らの内にいる恐怖を忘れようと、誤魔化そうと。


逃げ出してしまいたいと震える足を酒のせいにしてやればきっと怖くなくなると。


「おいおいっ! やっぱりストラの肉だけなんか出けぇぞおっ! ずるだずるっ! 俺と勝負しろっ!」


千鳥足のレイブリーはまた馬鹿な事を言う。勝負をしたって結果は決まっているというのに。


ストラは一口で肉を飲み込んでレイブリーに背を向けて歩き出す。


レイブリーはそれが来いと言っているのだと思った。


闇夜に黒毛が溶け込んで瞳だけが月光に反射して輝いていた。合図は無かった。


光が消えて唐突に目の前に現れる。レイブリーは咄嗟に身をよじらして躱すと即座に短剣と盾を手に取った。


またストラは姿を消した。


ふと思い出す。


俺が孤高のハンターであった時の事を


そんな俺が人間のハンターを育たさせられるとは、随分と皮肉の効いた冗談だ。


多くの獲物の心臓をえぐった。無数の獲物の首を裂いた。数え切れない獲物の頭蓋骨を噛み砕いた。


ストラは地を蹴って掛けた。


地面がえぐれるて砂埃が待った。暗闇の中でぼやけた茶色が混じってレイブリーは咄嗟に盾を向ける。


なんとか間に合ってストラの頭突きを防ぎ、盾は後方へ飛んだ。


もう一度見失った。


レイブリーは確かに手応えを感じていた。見えなくても音がある。次なら土を抉る音を聞いて間に合うと感じていた。


そして。


音がした。


レイブリーは短剣をその方向に向かって突いた。タイミングを計る必要はない。それだけにストラが早い事を知っていた。


ストラはただ頭を振るだけだった。


探検がくるくると中を舞って月に重なり黄色に光り、はるか後方の地面に突き刺さった。


ストラはレイブリーの前でちょうど止まるとそれ以上動かなかった。


今度は小便を漏らさなかったか。


「やっぱり勝てねー。」


レイブリーはさっぱりと諦めて両手を挙げたまま後ろに倒れた。


空には雲一つなく欠けて曲がった月が浮かんでいた。


「行ってくるよ、アニキ。」


レイブリーは間違いなくストラに向かってそう言った。


ストラはただ何も言わず、振り返りもせず家へと戻った。




くすぶっていた。


俺の中で確かに何かが燃え始めて狼煙を焚いている。


オガ屑に火の粉が移った程度のあまりに小さな炎が確かに存在するんだ。


ストラはその感情をもどかしさと呼んだ。


次の日にソルジと少年らは魔獣の討伐に向かった。それがハンターとしての役目だから。


ソルジは留守を任せたと笑い皆を引き連れ森へと向かった。


興奮と不安が入り混じって落ち着かない少年らの足取りは実に愉快だった。


日が傾き、暮れて月が出た。


もう一度日が昇り、傾き、暮れて星が出た。


男たちは帰ってこなかった。


次の日も、また次の日も


俺は腹が減った。


ただ、それでもここから動くのはなにか癪だった


もう一度、朝が来た。


ザッザッと土が擦れる音がして、赤くなった日を背にして大きな影を作る男がいた。


地面が揺れて、山を突くほど巨大な猪の死体が横たわっていた。


ソルジはカインドを担いでいた。少年たちは皆傷だらけだった。


「俺たち……生きてる?」


「生きてるぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


一人が声を上げると皆がようやく生を実感して沸き立った。


「ありがとう、アニキ! アニキが鍛えてくれたからっ……ありがとう、ありがとう。」


レイブリーは俺の下まで来ると跪いて大声で泣いて礼を言った。それに続いて後ろの少年らも俺をアニキと呼んで礼を言った。


肉を食った。少し獣臭いがそれがイヤにうまかった。少年らは我先にと焼けた先から齧り付いてうめぇと声を漏らしていた。


疲れているというのに踊れや歌えの大騒ぎ、一人二人と力尽きてそのまま地面で眠りこけた。


イビキを掻く小年らは本当に寝ているのかと疑うほどに騒々しかった。


少年達を全員家の中に放るとソルジは俺の前まで歩いて留守をありがとうと言った。


いつもと変わらない実につまらない仕事だった。


「なぁ、お前から見てこいつらはどう思う。」


ソルジは腰を下ろし胡座をかくとストラの目を覗き込んで聞いた。


机の上でランタンの日が消えて月の光だけが夜を照らして二人を映した。


そんなものを聞いてどうするのか。答えは決まっているというのに。まだまだ未熟で弱っこい少年だ。


その時、ストラはふと思った。では自分はどうなんだろうかと。


俺はすっかり腑抜けてしまった。あの日、レイブリーと戦った日、とうとう俺は奴の頭を噛み砕こうとはしなくなっていた。


そうなってしまったのは一体いつからだ。


俺は随分と弱くなってしまった。


ああ、今の俺はこいつらよりも誇り高き戦士と言えるのだろうか。


男たちはまた狩りに出た。夕方には帰る日があれば、三日たっても音沙汰ない日だってあった。しかし決まって男たちは傷だらけの仲間と息絶えた魔獣を担ぎ戻った。


増える傷跡と共に体が大きくなった。男たちは笑い方がソルジに似て、豪胆に笑うようになった。


一人でさえやかましかったのに随分と迷惑だ。


ストラはいつものように影で丸まりアクビをかきながらそう思った


次の日もまた狩りの仕事が入っていた。


皆そうそうに湯を浴びて床に着いた。ヒンヤリとした空気が毛を撫でて虫の音が耳で溶けて消えた。


「アニキ、また頼むよ。」


なんとなくそんな気がしていた。こんな風に月の見える夜、レイブリーは決まって俺と戦いに来た。


呼吸は風に潜め悟らせない。夜に溶け込んで牙を研ぐ。鈴の音よりも小さく土を蹴り駆ける。


いつの間にか俺は召喚された時を遥かに凌駕する力を手にしていた。


そうだというのに、ストラはひどいもどかしさを感じていた。


レイブリーは俺の牙を盾で受け止め、短剣で喉元を突いた。俺はすかさず盾を足蹴にして後方へ飛びもう一度暗闇を被る。


下手に小細工をする意味はないだろう。レイブリーは神経をどこまでも研ぎ澄まし俺の位置を正確に把握してみせた。


宙から強襲を掛けたっておそらく結果は変わらない。


まっすぐと向き合って、掛けた。


レイブリーは盾を構えて短剣をまっすぐ俺に向けていた。


地面を抉った。大きく砂埃を起こすと共に加速した。しかしレイブリーはどこか落ち着いていた。


タイミングがずらされて、間に合わないだろうと結末を悟った。


時はゆっくりと動いて腕が半ば自動的に突き出された。


ザクリ


月の光が二人を照らしだした。


短剣の刃はストラの左目に深々と突き刺さり、静かに血を垂らしていた。


「は、ははは。やったよ……。」


レイブリーは短剣から手を離すと手のひらについた血を見た。怯えるように後ずさって尻餅をついてこけると静かに頬を涙が伝った。


冷たい風が黒狼を労わり毛をなでた。黒狼は静かに少年へと歩み寄りその顎を小さな顔へと近づけた。


レイブリーは食べられるのだと思った。どうしてか、思っていたよりも怖くはなかった。


ペロリ


冷たい感触が頬を撫でてストラが涙を拭ってくれているのだと。レイブリーは理解するのに時間がかかった。


「ごめん……ごめんよ、アニキ……。」


レイブリーはストラの顔を抱きしめてポロポロと涙をこぼした。


始めて吐く弱音だった。誰よりも勇敢で、皆のために剣を取るレイブリーはいつも怯えていた。


ああ、知っている。お前も、皆も孤独だったな。寂しくて怖くて悲しくてそれでもお前たちは立つことを選んだ。


逃げ出してしまいたかっただろう。いつ今の幸せが崩れてしまうんだって不安で仕方なかっただろう。


お前たちは前に進む道を選んだ。いつの間にか強くなっていたんだな。

誰よりも偉大な男たちだ。


ストラは夜空を仰いだ。


俺たちはお前たちという星に仕える夜の空になろう。


そばにいる。だからもう、怯える必要はない。


黒狼プラウドウルフはその美しく深い黒の毛並みから穏やかな光を映す夜の闇として偉大なる月に使える誇り高き魔獣として知られる。


ストラは泣きつかれて眠ってしまったレイブリーを囲う用にして丸まった。


俺の胸にはなにかずっと引っかかっていた。それがひどくもどかしかった。


ああ、ようやくわかった。


俺はこの役目を誇りに思っていた。




次の日、男たちはまた討伐へと向かう。


俺は静かにそれを見送った。


その日、男たちは帰ってこなかった。


次の日も、次の日も、次の日さえも。男たちは一向に帰ってこなかった。


暗い夜だった。星の光の一粒も刺さない、完全なる闇が空を覆っていた。


血の匂いがした。


赤く染まった男たちは皆、家を見て安心しきり倒れた。一人足りなかった。


匂いは残っているのに、どこにも姿が見えなかった。


臆病なチミティが震えていた。チミティからはもう一つの匂いがした。


チミティは短剣を握っていた。チミティは血をかぶっていた。


鋭利な赤い香りが脳を突き刺して穴を開けた。ああ、教えろレイブリー。


お前は今どこにいる。黒毛が逆立って俺は夜空を仰いだ。月が、星が全て暗雲に連れ去られて見えやしない。


これではお前を探せないじゃないか。


ああ―――なんて嫌な仕事だ。

ちょっとまた書き方変えたので読みにくかったらごめんなさい!

あともう1話すぐ更新します!

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