閑話 子供
クアァァ
目を開けると真っ白だった。いつも目を開けても真っ黒で何もなかったのに。今日は真っ白が広がっていた。
少し開けられた窓から風が漏れ、清潔感のある白いカーテンが揺れている。
ベットの上では桃色の髪をした少女が穏やかに寝息をたて、その上で小さな龍がアクビをする。
白いシーツの上で龍は不安そうに辺りを見ると自らの主を見つけ、少しふらついた足取りで歩いた。
どこもかしこも真っ白で、真っ白の地面の先でママを見つけた。たしかに僕を読んでくれたママの顔を見間違えるわけがない。僕はママのお腹の上で眠ってたみたいで、どうりで体がポカポカと暖かいわけだ。
僕がママの顔まで歩いていったのにママは動かなかった。どうしてだろう。ママ、僕を嫌いになっちゃったの?
「んっ……。おこしてくれたの? ふふっ、ありがと。」
僕がママの顔を舐めるとようやく目を開けて、ママも寝ちゃってたみたいだった。
ママの鳴き声は難しくて、なんて言ってるのか分からなかったけど優しく僕の頭を撫でてくれた。
やっぱり、僕のママは思ったとおり優しくって、とってもポカポカだ。
ガチャリって音がして、また別の誰かが入ってきた。あの時、僕が初めてママにあった時もいたヤツだ。今はあの嫌な感じのする棒を持っていない。
「よかった、起きたんだね。まったく無茶をして、もう心配したんだから。」
「ごめんなさい。でもっ見て先生! ほらっこの子、まだちっちゃいけどきっと強い子になると思うの。」
黒髪に透き通るような青い瞳の女性はベットの脇に持ってきた食事を乗せると膝をついて少女と同じ目線になる。
少女の腕を取って手でなぞると傷がないのを確認して心の底から安心して息を吐いた。
そのあとで少女の嬉しそうな顔を見て少し乱暴に頭を撫でる。すると少女のそばのドラゴンがクルルゥと低く唸る。少し警戒をさせてしまったようだった。
それを見た少女は龍の頬を人差し指で撫でて大丈夫だよと優しくどこまでも甘く囁いた。
誰だか分からないけど、そいつはママの頭を乱暴に振り回したんだ。
もしかしたら敵なのかもしれない。でも、ママは抵抗しなかった。それで、僕の頬を優しく撫でてくれたママはとっても嬉しそうな顔をしていた。
僕はもしかしたらコイツはママのママみたいな人なのかもしれないと思った。
少しするとソイツは立ち上がってまたどこかに行った。ママはお腹がすいていたみたい。ソイツが持ってきてくれたご飯を大きな口でいっぱい食べてた。
「お腹すいてないのかな……?」
それを僕にも差し出してくれたんだけどあまり好きな匂いじゃなかったから食べられなかった。ごめんねママ。
ご飯を食べ終わったママは僕を外に連れて行ってくれた。
ママは空を飛べないみたいで歩いて進んだ。だから僕が飛ぶのを見せてあげたらとっても褒めてもらえたんだ。言葉は分からないけどとても嬉しそうな顔をしていたからやっぱり褒めてくれていたんだ。
真っ白な部屋から出ると気持ちのいい風が風を通り過ぎていった。でも、ちょっとまだ僕が乗るには強い風で少しふらついちゃって、そうしたらママが僕を両手でソっと受け止めてくれて頭に乗せてくれた。
太陽の光が暖かくて、ママのいい匂いがして少し眠くなった。
連れて行ってくれた場所はとっても綺麗な場所だった。風が吹くと赤や青や黄色の粒が空に吸い上げられていった。
僕みたいに二つの羽根を持つ不思議な生き物が飛んで、赤の鱗?が四つ集まったいい匂いのする不思議な物に止まって唇を指していた。
ずっと黒だけだった僕の世界はママのおかげでどんどん色が増えていく。辺り一帯にある綺麗なウロコは触ると柔らかくて、少し濡れてて飛び込んだら冷たかった。
ママはウロコを指差してハナって言った。この鱗の名前はハナって言うみたい。
僕はハナが好きになった。ママの髪みたいに綺麗な色でママみたいにいい匂いがするんだ。
それでもやっぱりママが一番だけど。
ママは僕を抱えてまた別の場所に連れて行ってくれた。
ママに似た奴らと全然違う生き物がいっぱい居る場所だった。
ママは皆を指差すとヒトって呼んだ。
ヒトは棒っきれをもってみんな何か鳴き声をあげていた。不思議な音だった。
そのうち何人かがママのもとに走ってきたんだ。
「おねぇちゃん召喚に成功したってホント!」
「うん、ホントだよ。ほら、この子。」
ママよりちょっと小さなヒトは目をキラキラ光らせて僕を見てきた。僕はなんとなく、ヒトは敵じゃないかもしれないなって思った。
ママはその後もいろんなところに連れて行ってくれて……いっぱい僕に教えてくれた。
全部不思議な音で、僕は上手くその通りに鳴くことはできなかったけどママの言ってることが少しずつ分かるようになるのが嬉しかった。
ママも一緒に笑ってくれてとっても心がポカポカした。
いつの間にか青色だった空が赤くなってた。なんだか少し怖い。ママが教えてくれた炎みたいだ。
何が燃えているんだろう。大丈夫かな。僕には燃え移らないかな。
ママは震える僕を撫でてくれる。だからきっと大丈夫。よかった……よかった……。
目の前がグラって揺れた。ママが転んじゃったのか急に目の前でブレたんだ。
でも倒れたのは僕だった。
ママが何か声を上げている。大丈夫だよって言わなくちゃ。でも上手く言えないや。
お腹に力が入らない。グーって音が響いた。
体が揺さぶられるような感じがした。僕を抱いているママが走っているからだった。
ママはとっても辛そうで、すごく息が切れていた。それでもずっと走っていた。
不思議な匂いがする場所に連れてってくれて、ママは僕の口に何かを押し込んだ。
きっと食べ物なんだと思う。他の生き物たちはそれを口にしていた。
でもなんだかとっても嫌な臭いがして、僕は吐き出してしまった。ごめんね、食べれなくてごめんね。
「なんで、じゃ、じゃあこれは!」
ママは他の食べ物もくれたけど、その度に口の中が臭くなってむせて吐いちゃう。ママが悲しそうだから頑張って飲み込もうとするけど余計に跳ね返されて飛び出ちゃう。
ごめんね。ごめんね。
声がして、ママのママが走ってきた。後ろで細くまとめられた黒い髪がいっぱい揺れていた。なにかとっても焦ってるみたいで、体から水が出てて服が張り付いていた。
「師匠、どうしよ……この子、何も食べなくて。しんじゃうよぉ……。」
「っっ。 ……落ち着け、フォート。貴方が冷静でいなければこの子が余計に不安になる。思い出しなさい。召喚の時、この子が何を食べたか。」
ママのママはさっき会った時よりもなんだか真っ直ぐで力強くママに話しかけていた。それがとっても大きく見えた。
「雷っ……。」
ママのママが木の棒を渡すとママは必死に大きな声で何度も叫んでいた。サンダーって鳴いた。
周りの空気がシュウってちょっとだけ動いてそれでも何も起こらない。
「なんでっなんでっ! ごめんねっ……不甲斐ない主でっ……。」
なんでママの目から水が落ちてるんだろう。
なんだかとっても辛そうだよっ。
小さな龍の子は弱々しく顔を持ち上げて自分を抱きしめてなく少女の頬を舐め、涙を拭った。
それは泣かないでって言ってるようだった。
「私がしっかりしなくちゃいけない……。」
黒髪の女性が後ろから被さり、ロッドを握る少女の手に自分の手を重ねた。
「大丈夫だよっ。あなたは出来る子だから。」
その時、あたりの空気が喜んで、綺麗な石に向かって走っていったんだ。
そうして、綺麗な石から黄色のバチバチとした球が飛び出して。
ママはそれを僕の口に入れてくれた。
とってもとっても優しくて、美味しかった。
花がいっぱいのこの場所が好きだ。
ママが僕にいっぱいの色をくれた場所だから。
僕が空を飛んでいると少し強い風が吹いて連れて行かれそうになった。
そんな僕をママは抱きとめて頭を撫でてくれた。
色とりどりの花びらが青い空に吸い込まれていった。
ああ、とっても綺麗だ。
視点がいっぱい切り替わって読みづらくなっててごめんなさい。。。
まだ自分自身どう書けばいいか定まってなくって手探りの状態です……。
少しずつ読みやすい形を見つけていけたらなと思います。よろしければこれからもお付き合いください!
断定はできないんですけど次の話の1話を多分今日中に上げると思います。
もし上がらなかったらごめんなさい……頑張ります!