セロニアス・モンク『ソロモンク』「ダイナ」
アルバム「ソロモンク」から一曲ご紹介します。「ダイナ」です。ただ、はっきり言ってこれは「セロニアス・ヒムセルフ」ほどの名盤ではないと思います。なぜかというと、モンクの個性が控えめだと思うからです。また、本調子ではないのではないのかと疑うところも多々ありますので。
しかし、モンクにしては聴きやすいアルバムだとも思うのです。また、僕自身がこの「ソロモンク」から入門したもので、懐かしさを感じます。
モンクのリズムは独特なものです。普通のリズムではない。モンクの感性によってのみ、それが正解だと判断されているような、どこまでも独特な、いわば変テコなリズムです。歴史的に見れば、ラグタイムピアノなどもジャズの根底にはあり、ずらされたリズムから生まれるスウィング感は重要なものです。しかし、モンクのずらされたリズムは次元が違うように思います。常に、着地できずに宙を浮いているような不安定な感覚になるものです。
ところが、この「ダイナ」は、ストライド奏法というやつをやっていまして、要は、左手で「ズッチャッズッチャッズッチャッズッチャッ♫」とリズムを刻んでいるわけです。こうなると、あの独特なリズム感は控えめになるわけです。これがこの曲の聴きやすさの正体だとも思います。
モンクというと「ジャーン♫」と相当強く弾くことがありますよね。それはデューク・エリントンあたりもやっているらしい。おまけに不協和音的な音が沢山入ってくるわけです。そういうわけで、驚きに満ちているものなのですが、この「ダイナ」に関する限りはそれがあまりみられない。
個人的なことを言うと「ダイナ」はテイク2とテイク1が収録されていますが、僕はテイク1の方が好きです。こっちの方がモンクっぽいからかもしれません。
ところで「ダイナ」という曲は、アメリカのポピュラーソングで、このエッセイでは歌詞の内容については触れられませんが、かなり下らない駄洒落の歌みたいなものだそうです。
モンクが、ブギウギで「ダイナ」をやったとかいうことで話題になったそうですが、僕はいまだにブギウギのことをよく分かっていません。
僕はモンクが好きですが、モンクが嫌いという人は大勢いるそうですね。「なんだこれは、理解できねえよ。下手くそめ!」とかいう激しい拒絶反応を起こされるそうです。そういう方でも、馴染めるのがアルバム「ソロ・モンク」なのかもしれません。個性的すぎるジャズであり、だからこそ真のジャズだという天才ジャズピアニスト、セロニアス・モンク。
マイルスと喧嘩したモンク。コルトレーンを受け入れたモンク。一日中寝ている日もあるモンク。シャイなモンク。ステージで踊るモンク。モンク。モンク……。
最高ですわ。
[追記]
モンクの名盤、名演については、これからも紹介していこうと思います。