マイルス・デイヴィス「Mailestones」
このエッセイのジャズの紹介の仕方を、色々と考えていたのですが、とにかく好きなものを先にということでいきたいと思います。
そうなりますと、マイルス・デイヴィスは欠かせません。
というよりも、半世紀もの間、ジャズの中心にはマイルス・デイヴィスがいました。それほど、重要な人物です。
それで、僕の好きなマイルス・デイヴィスの演奏といえば、例えば「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」とか「バグス・グルーヴ」とか……とにかく、数え切れないわけなのですが、今回は、僕がジャズにハマるきっかけにもなった「Mailestones」でいこうと思います。
こちらは1958年の作品で、言ってみれば、ハードバップとモードジャズの合いの子のようなものです。時代が大きく変わるその転換の最中にいるような作品なのです。
この後に「カインド・オブ・ブルー」という歴史的な名作が誕生することになります。
この作品では、マイルス・デイヴィスが大人っぽくそっとトランペットを吹き、ジョン・コルトレーンが目まぐるしくテナー・サックスを吹き、キャノンボール・アダレイが華麗にアルト・サックスを吹くという……(実際のソロの順番はキャノンボール、マイルス、コルトレーン)とにかく、凄まじいメンバーが揃っています。ちなみにピアノはレッド・ガーランドです。
個人的には、僕はこの作品でキャノンボール・アダレイに出会いました。はじめはキャノンボール・アダレイなんて名前も知りませんでしたから、やけに心地良い音をリズミカルに吹く人がいるなぁ、素敵だなぁ、と思っていたぐらいでした。でも、だんだんと病みつきになっていきました。
マイルスはどうか、と言うと、マイルスも少ない音を大切に使って、素晴らしいアドリブをしているのですが、それよりもキャノンボールが元気良く、空を駆けまわっているようで、僕にとっては微笑ましすぎます。
マイルス自体は、僕は「カインド・オブ・ブルー」みたいな静かな曲の方が好きですし「枯葉」なんて最高だと思うのですが、そういう意味で、僕にとってはキャノンボールに出会った一曲でした。
なんだか、曲全体が元気良いですし、あまり暗さや重さは感じないのですが、これはこれで、まず、間違いない傑作でしょう。
とにかく、この「Milestones」というアルバムは、モードジャズの試作段階のような感じがする曲も集まっていますが、まずタイトル曲である「Milestones」と、マイルスの影は微塵もありませんが、その代わりにレッド・ガーランドのピアノが冴え渡る「Billy Boy」の二曲は、ずば抜けて魅力的な曲と言えるでしょう。
[追記]
今ではなんだかんだで、マラソンセッションの時のマイルスが一番良かった気がします。いずれ、述べたいと思います。(2019.2.4)