バド・パウエル「Cleopatra's Dream」
かつてのバイト先で、日頃はかなり激しい(騒がしい?)系統のロックを弾いている、ギタリストのお兄さんがいたのですが、そのお兄さんに「最近、ジャズにハマっているんですよ」という話をしたんです。
そしたら、お兄さん。
「へぇ、Kanちゃん、バド・パウエルってピアニスト知ってる?」
「バド・パウエル?」
「その人の「クレオパトラの夢」って曲が滅茶苦茶良いから。なんかずっと耳に残ってて、これ何の曲だろうなぁって思ってたんだけど、この前、テレビでやってて、おお、これだこれだってなってさぁ、そっから全力で探したんだわ」
「そんなに良かったんですか」
「もう、半端ないです」
というような会話をして「クレオパトラの夢(Cleopatra's Dream)」の存在を知りました。
それから調べて「The Scene Changes」というアルバムに収録されていることを知り、家の近くを探しまわりました。そしたら、案外すぐに見つかったのです。
さて、早速聴いてみると、なるほど、ロックのお兄さんが好きそうな、強烈なサウンドのピアノ演奏が始まりました。
また、どことなく妖しげな雰囲気が、クレオパトラっぽい印象でした。荒々しくてダークな感じというと分かりにくいですが、これがまたハマってしまいます。
さて、後になってバド・パウエルが、ビ・バップの代表的ピアニストだということを知りました。
ビ・バップとは1940年代頃から流行った演奏のスタイルで、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーなどによって生み出されたものです。これは、いわばモダンジャズの草創期に当たります。
当時は、コード進行に則ったアドリブソロが全盛を極め、演奏のスピードや音数はどんどん増してゆきました。非常にスポーティーな曲が好まれた時代でした。
彼らはクラブのミントンハウスなどに集まると、そこで激しいジャムセッションを繰り広げ、互いの技を競い合ったと言います。
この時代を代表するピアニストが、セロニアス・モンクとバド・パウエルになります。
そういうわけで、バド・パウエルにハマってしまったのですが、その後はあまり聴きませんでした。その後、すぐに僕はオスカー・ピーターソンに流れて行ってしまったのですから。
[追記]
この時代のバトパウエルは、超人的だった時代が過ぎて、精神的に病み、指が動かなくなって(電気ショック治療の後遺症とかいう話も)聴きやすさが増した時期になります。彼の超人的なスピードの演奏といえば『ザ・ジーニアス・オブ・バドパウエル』の「ティー・フォー・トゥー」。とにかくアドリブが速い。(2019.2.4)