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チャーリー・パーカー「ジャスト・フレンズ」

 チャーリー・パーカーとはモダンジャズにおける信長だ、と以前エッセイに書いたと思うのですが、これはつまり、モダンジャズの革命を起こしたのが彼だからなんです。

 ジャズの歴史を簡単に語ると、これは西洋の楽器とアメリカの黒人が出会ったことから始まるわけです。それは20世紀に入ったばかりで、その場所は諸説ありますがアメリカのニューオリンズでした。ここで黒人とクレオール(白人と黒人の混血の人)の二つの音楽文化が合流することによってできたものです。(クレオールは西洋音楽の教養がありました)そして、西洋音楽にはピアノやサックスなどの楽器があり、ハーモニーやコードという理論があり、黒人音楽にはサウンドとリズムの独特の感覚がありました。(ですから、ハーモニーを度外視して、色々なメロディーを吹きまくるフリージャズはそもそもアフリカ的なものです。また、マイルス・デイヴィスが「ビッチェズ・ブリュー」で形にしたポリリズムのリズムもアフリカ的なものです)。こういう二つの音楽文化が合流して出来た。そこには、マーチングバンドや黒人霊歌などの影響もあります。ラグタイムピアノなどの影響もあります。もちろんブルースの影響もあります。ピアノに関しましては、そもそもピアノを打楽器的に演奏するという発想が黒人的なものだったらしく、ブギウギ・ピアノなどはその典型でした。さて、ニューオリンズで出来た初期のジャズをニューオリンズジャズといいます。

 さて、ジャズの偉人が三人いて、最初の二人は録音が残っていなかったりして、どうしようもないので、三人目から解説します。ルイ・アームストロングです。ジャズの父です。まず、ルイ・アームストロングはスキャットボイスの発明家であり、最高のトランペッターであり、ボーカルでした。自由に楽器を演奏していいというジャズの精神を築いたのも彼です。

 そこからジャズは、ビックバンド(つまりオーケルストラのような)で踊れる音楽を生み出すスウィングジャズの時代に突入しました。スウィングジャズは特に第二次大戦の中で、とても盛り上がりを見せました。この時代の偉人は、まずピアニストのデューク・エリントン。代表曲は「A列車でいこう」とか「キャラバン」「センチメンタルムード」です。あと有名なのはベニー・グッドマンの「シング・シング・シング」。絶対に外せないのはカウント・ベーシー。庶民派では、グレンミラー。代表曲は「イン・ザ・ムード」「ムーンライトセレナーデ」。

 しかし、ここまででまだジャズのアドリブは、少しメロディーを崩したり、テンポを変えたりする程度のものでした。それが変わり始めるのは中間派からで、このあたりからジャズをもっと自由に演奏しようという意識が高まってきます。チャーリー・パーカーが登場するのはこのような時期です。ジャズがアドリブ中心のモダンジャズへの姿を変えたのは、パーカーひとりの手柄ではなくて、つまり中間派と言われる同じ意識をもった人々がニューヨークのジャズクラブに集結していて、実験的な試みをしていたということが前提としてあったわけです。1939年になり、チャーリー・パーカーがニューヨークのジャズクラブに姿を現しました。

 彼はこのジャズクラブで、時々、ジャムセッションに参加しました。そして彼は、アルトサックスを吹きまくり、いつしか、コード進行に基づくアドリブ演奏を繰り広げるようになりました。その演奏はまことに自由なもので、原曲がわからないほどでしたが、テクニックも超人的で、美しく、鳥が大空を飛びまわるようで、とにかく前衛的なものでした。ここからジャズは、ビーバップの時代に入ってゆきます。この時代のピアニストは、バド・パウエルとセロニアス・モンク。ドラマーは、ケニー・クラーク。ライバルのトランペッターは、ディジー・ガレスピーでした。


 というわけで、ジャズの歴史第一回はこのあたりにしておきましょう。チャーリー・パーカーはアドリブ演奏の改革者だったわけですね。そのパーカーがステージを上でディジー・ガレスピーと火花を散らすような演奏を繰り広げる『バード・アンド・ディズ』という素晴らしいアルバムがあるのですが、はじめてパーカーを聞こうという方には少々ついていけないところもあると思うので、ここはあえて『チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』から「ジャスト・フレンズ」と「エブリスィング・ハップス・トゥー・ミー」をご紹介したいと思います。


 こちらは弦楽隊の美しい伴奏の中で、パーカーが実にパーカーらしいサックスの演奏を繰り広げらというもの。パーカーは当時ものすごく前衛的なプレイヤーだったので、こんな聴きやすい、または古くさい音楽をしたがるはずがない、と、ディレクターが無理にやらせた、とか色々囁かれたのですが、パーカーは本当にこういう美しい演奏が好きだったようです。そして、パーカーの演奏が単にアバンギャルドなものとか、テクニックを見せびらかすようなものではなくて、純粋に美しさとか情緒といったものを求めていたことに気づくと、その他の演奏の魅力もはっきりしてくると思っています。

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