01 - 一回目 / 目覚めたのは夢は僕なのか
最後に見たのは。
意識を食いつぶすような、白い光の渦だった。
(……朝?)
焼き尽くすような光が過ぎて、眼を開く。
――あの光は、眼だけじゃなく、身体そのものも熱く捻り回したはずなのに。
カメラのファインダーを動かすようなイメージで、瞼を開く。
身体は、もう目覚めているんだとわかる。
でも、意識のどこかには、まだ白い光が引っかかっている。
(おかしい、な)
目の前にあるのは、見知った風景。
病院の白い壁でも、ベッドの布でも、どこかの見知らぬ別荘でもない。
ただ、昨日まで住んでいた、家族に割り当ててもらった、自分の部屋という空間だった。
「うっ……」
情報がまとまらず、右手で頭頂部を押さえる。痛みがあるわけではなかったが、こうすると落ち着く気がしたからだ。
(……なんで、家にいて、無事なんだ)
問いかけても、記憶も、感覚も、手がかりもない。
では、これは夢なのか。それとも、昨日あったことが、夢だったのか。
――僕は、車の事故に巻き込まれ、死んでしまったはずなのに。
「死んだ?」
自分の脳裏に浮かんだ判断を、記憶が疑う。
あの一瞬で、巻き込まれた僕が、その判別をつけられるのだろうか。
――死んでしまったのではないか、というのが、正確か。しかし、死んだのなら、今ここに存在できるはずがない。
(五体も、ちゃんとある)
ベッドの上で、手を動かす。意識しないと、まだ夢の中のような、自分の手足。
四肢は無事、ついている。眼も身体も、さっき起きた時のように、気味が悪いくらい軽快に動く。
……本当は、誰か、別の身体なんじゃないか。作り物なんじゃないか。夢の中にいるんじゃないか。そう、想うくらい。
ふわっとした気分は抜けなくて、ぐるりと部屋を見回す。けれど、やっぱりまだ僕の部屋だ。
「鏡……」
タンスにかけてある鏡に向かって、ベッドから降りる。カーペットを踏む感触が、なぞられるように感じられ、不思議な感じがした。
ぎこちなく動かす身体に、やはりどこか他人のような感覚があった。言うなら、昔の記憶にある、リモコンで動かされるロボットのような。
でも、鏡に近づいて見た姿は、昨日までの記憶にある、僕の姿と同じだった。
――記憶にある、というのが、他人のような心地でなければ。
(……部屋の、外は?)
パジャマのまま、着替えず、部屋のドアを開ける。
かちゃり、と、ゆったりした音が耳に届く。
扉を開けたことで、空気が変わる。部屋の湿り気が抜け、廊下からひやりとした空気が入ってくる。
その中には、匂いもあった。焼けたパンと、卵の匂い。
併せて音がする。水が食器に当たるような音と、なにかが焼かれているような熱の音。
そして、かすかに混じる、人の声。嬉しそうな、女性の声。
(わかる……みんな、わかる?)
それらの全てが、なじみ深く、親しんだものだったから――僕は、頭に手を添え、口元を抑える。今度はやってきた、奇妙な頭痛と吐き気、それを止めるために。
「……っ」
このまま部屋に戻るべきだ、と、頭が警告する。
でも、たぶん、それは無意味だ。
――記憶が、教えている。
今まで、生まれてから、ずっと知っている。
たとえ逃げても、この場所と違う場所で起きたとしても、この怯えは消えないんじゃないかと感じられる。
――そんな感覚だけは、しっくりと、この身体になじんでいる。
(身体だけ、起きちゃったのか)
奇妙な違和感を、そう想いこませ、感情を抑えつける。
……そうだ。記憶がある。いつもそうして、朝の日々を抜け出していた。
ぼんやりとした頭で、しかし、仕方なく足を踏み出す。
とん、とん、と階段を降りていくと、匂いと音が近くなる。
階段下について、少し歩いて右側に。玄関からだと左側になる場所に、リビングがあった。
リビングルームには、大きなテーブルが一つと、テレビとソファー。少し離れた場所には、キッチンが備え付けられている。
家族四人が住むのにちょうど良かった部屋は、両親の海外転勤で、二人で使うにはやや大きすぎた。
そう感じるようになったのは、つい最近。――それを知らなかった頃は、まだ、見えない部分もあったのに。
「――おはよう。いい夢は見れた?」
キッチンからかけられた声に、背筋を震わせながら、眼を向ける。
そこには、食事が乗った茶色いトレーを持つ、一人の女性の姿があった。
「姉さん……」
長い金髪をポニーテールにまとめ、白く清潔なエプロンをまとった、一見しただけで美しいと感じる人。
それは、かつて……いや。
今も僕を追いつめる、完璧な姉の姿に他ならない。
「あら、おはようはどうしたの?」
優しく、けれど質問するような言い方。
朝の挨拶は、毎日のように注意されるから、必ずするようにしているのだ。――そう、記憶が教えてくれる。
「おはよう、姉さん」
答えると、にっこりと笑った姉は、トレーを置いて朝食の準備に戻った。
いつもどおりの、朝。両親がいなくなってからは、姉と二人で家のことをやっている。
ただ最近は、友人の家に外泊する時もあって、少しまかせきりの時も増えていたようだけれど。
――他人の記憶のように、それらを想い出しながら、眼を細める。
「どうして、僕は……」
気になるのは、胸の中にある、ざわつきだった。これは、いったい?
「朝食まで、少し待ってね。卵の焼き加減が、もう少し……」
姉の受け答えは、普通のもの。
でも、僕の記憶は、訴えかけている。
「白い、光が……」
「さぁ、ご飯を食べましょう。今日は、あなたの好きな……」
「姉さん、聞いてよ! おかしい、おかしいんだよ!」
――そうだ。
どうして僕は、普段通りに目覚めて。
当たり前のように、姉は朝食を作っているんだ?
「僕は、車に牽かれて、死んだはずなのに!」
絶叫して、姉に抵抗する。
「……」
いつもどおり、姉のペースに飲まれたら、うやむやにされてしまうかもしれない。そんな怖さもあった。
――姉は、口を閉ざしている。こんな時の姉は、なにか、している。僕の記憶が、そう訴える。
姉は、美人で勉強もでき、学校でも眼を惹いて、人付き合いも達者な人だった。僕とは違い、みなの憧れであり、嫉妬されてもいた。
そんな姉だが、なぜか……僕のことを、よく気にかけていた。正確には、気にかけていたというより、監視に近いほど注視されていた。
近所でのつきあいも、学校での人間関係も、気になる女性との距離感も、勉強の進め方も。
……知らないうちに、姉の敷いたレールの上を、歩いている。
その姿を見て微笑むのが、記憶にある、僕の姉という存在だった。
「牽かれる……?」
息を吐くようにささやかれた、一言。
「そうだよ。僕はもう、耐えられなかった。だから、怒って出て行ったんだ」
姉の干渉は、両親が居なくなってから、ますますひどくなった。
食事の時間や外出の時間、考え方や話し方、お金の管理や自分の部屋の整理にまで。
およそ考えられるあらゆることに、手を出してくるようになった。
『――全ては、あなたのためなのよ?』
イヤだと言っても、姉は笑っていた。聞く耳も持ちながら、その言葉は、違う意味にとらえているようだった。
僕はイヤになり、友達の家などに外泊するようになった。
が……その友達の様子がおかしくなることもたびたびあり、その手を使うことも次第にできなくなっていった。
出来ることと言えば、集中力を切らさず、姉に干渉される線を引き続けることくらい。
だが、そんな日々を送り続けた人間に、ストレスがたまらないはずがない。
――限界を迎え、また解放を望んだ、ある日のことだった。
「逃げ出すなんて、悪い子ね」
愛と憎悪の、混じる瞳。
口元は笑っているのに、眼は、ぜんぜん違う。
「姉さんが、僕のプライヴェートに、干渉しすぎるから」
……そうだ、想い出した。
この日は、恋人と出かける約束があったのだ。
大切な人。明るく前向きで、目標に向かって、でも僕と話すのを楽しんでくれる彼女。良い部分も悪い部分も教えてくれて、ただ、受け入れるだけじゃない子。
「あの子は、あなたにふさわしくないわ。だから、別れてもらったの」
――その楽しい時間が終わり、僕と彼女が、別れた後。
姉は、彼女と会い、僕との別れを切り出したらしい。
「そんなの、姉さんが決めることじゃないだろう!」
電話が来て、彼女の嗚咽混じりの声。はっきりと、記憶を読み出すことが出来る。
彼女は落ちこみながら、姉に否定されたことを、悲しんでもいた。
どうしてなんだろう、って、何度も僕に問い返してきた。
「そうだ、彼女はあんなに、夜に泣いて……」
――言ってから、自分の言葉の奇妙さに気づく。
(今が朝、なのに……夜?)
……なぜ僕は、今、未来のことを姉に話しているんだ?
彼女が泣いていたのは、昨日のことなのだろうか。
でも、記憶にある今日の日付と、昨日の出来事が、ズレている。
「いけないわ。その会話、まだ朝の時点ではしていなかったじゃない」
そんな僕に追い討ちするかのように、姉は、奇妙なことを言い出した。
「朝の、時点?」
奇妙な言葉に、僕も気づく。
――そうだ。それは、今日の夜……まだ、これからのことじゃないか?
疑問に頭がとられる僕の目の前で、姉は、ふっと笑った。
背筋に、イヤな感覚が這う。いつもの、執着するような姉の笑みとも、また違う。
それは、なにかに憑かれたような、どろりとした微笑みだった。
「でも、やっぱり夢は便利だわ。何度でも、連れ戻せるからね」
「夢……? 連れもど、せる?」
「さぁ、朝食にしましょう。あなたの好きな、フレンチトーストとハムエッグよ」
席に座るよう手招きされ、おとなしく席に着く。
眼の前の食べ物は、確かに姉の作る、僕の好きな料理の味がした。
した、のだけれど。
「どうしたの?」
「いや……なんだか、久しぶりのような、おいしさで」
――初めて食べたもののような、記憶と感覚の、食い違い。
「まぁ。そう言ってもらえて、わたしも作りがいがあるわ」
こうして見れば、綺麗で優しく、高嶺の花とも呼ばれる姉の存在は、素晴らしいことなんだろうと想えもする。
だが、姉の異常な愛情。これだけが、思春期の僕の気分を、重くさせる。そしてその愛情は……僕だけが、知るものでもなかったようだ。
――あいつの姉は、異常だ。
そんな噂もありながら、それでも姉は、立ち居振る舞いや成績から、悪評をはねのけてきた。もちろん、人に対する表裏の見せ方も、異常なまでに上手かったというのもあるのだろうが。
だから逆に、僕は籠の鳥のように、姉の手の中にあった。
嫌がっているとしても、みんなには逆に注意された。
――なら、代わってくれと願ったこともある。全て監視され、判断されるという、環境を。
「……出かけてくるよ」
彼女と会うことは、バレてしまっているような気もしたが、仕方ない。
せめて、まだ気づかれていない時間と場所には、もう触れないようにしないと。
そう想い、僕は予定していた外出の準備をする。
「楽しんできてね」
姉には、偽りの場所を教えてある。
もしかすると、僕の携帯や部屋の中から、今日の出かける場所を調べているかもしれないが……その時に備えて、いくつかプランは用意してある。
準備を終え、玄関を前にし、奇妙な安堵感が胸に起こる。姉から解放される、その記憶のせいだろうか。
がちゃり、とノブを回し、玄関を開ける。次いで、外の音が耳へと流れ込んできて――。
「……あ、れっ?」
――全身に、奇妙な感覚が走り抜けていくのが、わかった。
そうして、一瞬。いや、頭のなかでは、何時間もの時間を過ごしているのを記憶しているのに。
「……ただ、いま?」
僕は、玄関の扉を閉め、実感のない言葉を口にしていた。
まだ、夢は続いているのか。頭が、起きるタイミングを逃してしまったのか。
外出し、すぐに戻ってきたかのような、生々しくも虚ろな感覚。タイムラグで動画が何秒か飛んでしまった時のような、処理できない違和感。それが、僕の頭と身体に、一瞬でこびりついていた。
(出かけた……僕は、恋人と、デートに行った)
現実感のない記憶とともに、帰宅している自分。
今日の出来事が、すっと、頭のなかに残っている。
姉に隠して、恋仲になった相手と出かけ、映画に行き、食事をした。唇の感触も、身体と記憶には残っている。
疲労感はあったし、記憶はあるのだから、外出したんだということなのだろう。身体が伝える感覚は、そうなんだと、教え込もうとしている。
――でも、違う。
なにか、一瞬で、それらの感覚をインストールされたような……現実感のないなにかが、僕の気分を満たしている。
「おかえりなさい」
姉の声も、穏やかで、いつもと同じ。
――あの日と、同じ。
「わたし、これから出かけてくるわ。食材、足りないものがあるから」
そうして、僕の横をすり抜けていく、姉の姿。
(これから、姉は……どこに、行く?)
止めるべきだ。だって、その結果を、知っているのだから。
(彼女はもう、呼び出されて……姉は、そこに行くのか?)
知らないはずの知識が、頭の中に流れ込んでくる。これから体験する、したはずの、自分でないような感覚とともに。
「行ってくるわね。ご飯……一緒に、食べましょう?」
その夕食時に、僕は、ずっと我慢していた怒りを爆発させることになる。
なのに、僕は……姉が出かけるのを、止めることができなかった。
顔を手で覆いながら、まるで自分のものでないかのような言葉で、自問した。
「どうして……今日の出来事が、頭の中に、あるんだ?」
どうすればいいのかわからないまま、姉が帰宅するまで、僕は玄関で立ち尽くしていた。
当の姉は、帰宅した時も普段通りだった。何をしてきたのか自覚していれば、僕は、あんなことをしもしなかったのに。そう考えてしまうほど姉は、当然とした態度で、買い出しを終えて帰ってきたのだった。
――だからこそ、僕の怒りは、爆発する。愛情ではなく、束縛である、姉への反抗として。
会話の流れも、朝、したようなものになった。
怒りはある。彼女への想いもある。姉への怒りもある。
……なのに、だ。僕は、怒りながらも。
ずっとその加熱した意識の隅に、気味の悪さを抱え続けていた。
「――どうして、こんなことを、したんだ」
怒るトーンも、あまり迫力をこめられなかった。
もちろん、今までため込んだ分もあるはずだから、声は荒々しいはずなのだ。記憶にある、今までの鬱積も、僕として上乗せした。
なのに、今一つ熱がこもらない理由は、自分としてわかっていた。
(まるで、他人のようなんだ)
僕は、姉の弟であるはずなのに……それがどうしてか、本を読んだような、薄い壁を感じている。
「ふふ……」
「なにがおかしいんだ、姉さん」
怒りの僕に、笑う姉。
すると姉は、あっさりと答えた。
「だって、二度目だもの。怖いけれど、少し、慣れるものねって」
――僕には理解できない、奇妙な理由を。
「なにを、言っているんだ……?」
理解できない姉の言葉に、混乱する。二度目、慣れる……いったい、なんのことだろう?
「姉さん、今の言葉は……」
「あぁ、やっぱり姉さん、嫌われてるのね。辛いけれど……でも、二度目だから、少し、慣れられたかも」
姉が告げる、回答のようで回答でない、同じような意味の言葉。だから僕も、もう一度、問いかけることしかできない。
「……どういう、ことだい」
「嘘じゃないあなたが、二度、見れたってことだから。嬉しいわ」
姉の言葉で、引っかかった言葉を、口にする。
「にど……め?」
唇が震えながら、聞き返す。
脳裏に、昔見た映画の一場面が再生される。不思議な装置を使い、何度も何度も同じ時間を彷徨う、未来を変えようとする男の物語。
――二度目なら、繰り返したのなら、同じ記憶があっても不思議じゃない?
だがそれは、映画の話だ。ここは、現実の世界。
「そんなこと、バカにしてるのか!?」
そんなもの、あるはずがない。――なのに。
「あぁ、そうそう。あの子だったら、そういうわ。うん、そう言う子だった」
「姉さん……!」
頭がおかしくなりそうだった。
もしくは、頭がおかしいのは、眼の前の姉の方なのか。
不安に声を荒らげる僕に、姉は、ただ平静としている。
穏やかな笑みを口元に浮かべながら、心から嬉しそうに、僕という存在に語りかけてくる。
「言ったでしょう? 夢は繰り返せるから、良いわねって」
「夢……」
「あなたは、夢。わたしの、夢。あの日の記憶と、ありったけのデータから造られた、あの子の亡骸。そこから生まれた、蝶の夢」
「なにを言っているのか、わからないって言ってるだろ……!?」
激高して、もう、眼の前の狂った女の口を止めようとして。
「あなたは、わたしと別れたあの日を、少しズレて繰り返す……最後の弟。そう、それがあなた」
――その言葉が、決定打。『僕』のなかのなにかが、カチリとはまる。
「死んだ弟の、夢。仮想空間の、ありえたかもしれない、あの子の一日。そのためのあなた……なのよ?」
姉の言葉に、僕は、呆然として呟く。
「……なんだよ、それ」
「あれから、時間が経ってるの。だから、夢の中なら、ずっとあなたと過ごした日にいられるようになったの」
「じゃあ、『僕』は……誰なんだ?」
「わたしにとっては……あなたはあの日の、弟のままよ?」
諭すように姉はそう言って、にこりと微笑む。よく知った、過剰で過干渉な、完璧すぎる姉の笑顔。何一つ、変わることがない。
だが、姉は言った。造られた『僕』であると。
――記憶の中の、姉の姿。でもそれは、『誰』のものなんだ?
植え付けられた記憶から教え込まれる、姉と呼ばれる、不気味な他人の姿。
親しみとなじみを生じさせる記憶と、この、胸にわき上がる嫌悪感。
――僕は、いったい、どちらを信じればいいのだろう。
「でも、そうね。怖いわよね。だけれど、大丈夫。同じようにならないよう、ちゃんとプログラムしているから」
すっと撫でてくる、女の手。料理やスポーツをしながらも、傷一つない、あまりにも美しい人形のような手。
――誰だ、この女は。
は虫類にさわられたような、気味の悪さがわきあがる。
「この夢のなかで、ずっと……逃げずに、わたしと一緒に過ごしましょう?」
姉にはなかった、薄ら寒い笑み。記憶をどんなに探しても、こんなに歪な笑みは覚えがない。
――でもそれも、わからない。僕には、もう姉でないのかも、わからない。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
僕は、頬に触れる女の手を振り払い、玄関へと走り出す。
さっきと違い、今度はがちゃりと、ドアの外の世界はしっかりと僕の身体についてきた。
そのまま靴も履かずに、僕は道路へとかけ出していく。
あの日――それは、今日? ――と、同じように。
僕はただ姉から逃れたいままに、その他人のような身体を、外の世界へと飛び込ませて。
――目覚めた時に感じた白い閃光を、その身に浴びることになり。
「……えっ?」
記憶にある、全身から吹き出す痛みと熱により。
僕であるという自身がない意識を、失った。