2話「変態自己厨は少女を怒鳴りつける」
「それで……全部説明して貰えるんだろうな?」
「全部は無理ですねー」
場所は戻って再び先程監禁されていた部屋。
俺の問いに対して少女は相変わらず掴みどころのない態度で答える。
「じゃあまず……俺は何で殺された?」
「召喚の儀式の手順の都合ですね。相手に承諾の言葉を言わせたうえで、専用の魔法によって殺さなければいけないんですよー」
承諾の言葉か。
確かに俺はティナにいいよと言った。
儀式の内容を知っている必要はないのだろう。
「あれ?殺されたことについては怒らないんですか?」
「……別に。惰性で生きていただけだしな」
死んだということについて、特に何か思うことはない。
悲しくなったりすることはなかった。
それだけどうでもいい人生を送っていたということなのだろう。
「じゃあ次……あんたらは何者だ?」
俺を召喚した集団。
ティナと目の前の少女、それにもっと大勢メンバーがいるはずだ。
「私の名前はリラ=クラウン。ティナ様の部下の一人ですよ」
「いや、お前個人の情報じゃなくて……ってティナの部下!?」
ティナの見た目は10歳前後、ロリッ子だ。
それに対してリラの見た目は16歳前後。
普通に考えてリラの方が年上のはずなのだが。
「もしかして……ティナはロリババア……」
俺はがっくりと項垂れる。
確かにロリババアにも魅力はあるが、やはり年齢もロリな方が良い。
「いや、ティナ様は見た目通りの年齢ですよ。今年で10歳になります。ただ、身分の関係です」
「あー……なるほど」
そういえばここは異世界だった。
身分制度が健在なのだ。
「……ってそうじゃなくて。俺が知りたいのはお前ら――お前が所属している組織の情報だよ」
普通は王国に召喚されて魔王退治とかなのだが。
嫌な予感がするので念のため聞いてみたのだ。
「それは秘密です♪」
「…………」
言えないと来たか。
となると一気にその組織が怪しいものである確率が上がる。
そうでなかったとしても、極秘裏の任務とかの可能性も高い。
……一気に胡散臭くなってきたな。
「それで……俺は何をすればいい?」
とりあえずは質問を続ける。
「えっとですねー……まず、私に続いて言ってみてください。――開け、能力の窓」
「――開け、能力の窓」
続けると、空中に光る四角形が現れる。
それはRPGゲームなどでよく見るステータス画面だった。
「それがステータス画面です。貴方の戦闘能力が数値化されて載っています」
おお、いいな。
何だか如何にも異世界といった感じだ。
俺はわくわくしながら画面を見る。
=====
レイヤ=ロンリネス
Lv1
力 :10
耐久:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
《アビリティ》
・異常学習
《スキル》
=====
名前は日本でのものだと目立つから、この世界に合ったものに改名されたということなのだろう。
レイヤは俺がネット上でよく使っていた名前。
ロンリネスは……英語で孤独という意味だ。
馬鹿にしれんのか。
まあ、それはともかくとして。
「……なんか地味だな」
俺は不満気に呟く。
眼前にある数値はどれもパッとしないもので、普通にゲームを始めたばかりのレベル1といったものだった。
普通もっと反則級の力とかあるだろ。
「いやいや、ちゃんと反則級のアビリティを持ってるじゃないですかー」
「……異常学習ってやつか?」
「そうです」
「そういえば、アビリティとスキルの両方があるのか……?」
RPGゲームではよくキャラクターが習得する技術をスキル、もしくはアビリティという形で表す。
だが、両方あるというケースは珍しい。
ステータス画面を見た感じ、基本的にはRPGゲームと似たようなものだったのだが……。
「この世界ではアビリティが技能、スキルが必殺技といった感じで分けられています。例えば片手剣のアビリティを取得して、熟練度を上げると片手剣の必殺技――スキルを取得できます。まあ、詳しくは後々話しますよ」
なるほどな。
…ん?
俺はそこで違和感を覚える。
「そういえば……何でお前は異世界とかスキルとか……俺のいた世界の事が通じるんだ?」
「あー、それはですね。私は貴方の元いた世界に行った事があるんですよ。その時に知った情報です」
「なるほど」
そういえば、ティナだって俺のいた世界に来てたんだもんな。
「それで、異常学習ってどんなアビリティなんだ?」
「文字をクリックすると詳しい説明が出ますよ」
俺は言われるがままに異常学習の文字をクリックする。
すると画面が切り替わり、アビリティの説明画面が現れた。
=====
異常学習
熟練度:0
効果:
◆レベルアップ必要経験値の減少
◆アビリティ取得条件の緩和
◆全アビリティの取得可能
◆アビリティの熟練度上昇速度向上
◆スキル取得条件の緩和
◆スキルの取得可能
◆スキルの熟練度上昇速度向上
=====
「つまり……人より成長速度が早く、どんな技でも習得できるってことか」
「ええ、そうですよ」
「しかし、この能力……」
「見覚えがありますか?」
「見覚えがあるっつーか……俺が元から持っていた才能だ、これ」
異常な学習能力。
それは俺が生まれた時から持ち合わせていた才能だった。
何をやるにしても高い学習能力ですぐに身に着けてしまう。
勉強にしてもスポーツにしても特殊技能にしても、他人の何倍ものスピードで技術を習得できるのだ。
そんな事から一時期は完璧超人なんて呼ばれていた。
もっとも裏では何でも屋なんて呼ばれて利用されていたのだが。
「そう、それです!」
「……はあ?」
「貴方をこの世界に召喚した儀式は召喚対象の一番の特徴を強化してアビリティにする事ができるんです」
「……つまり、俺の才能を強化したのがこの異常学習ってわけか」
「さすが理解が早いですねー、完璧超人さんは」
にやにやしながらそう言うリラ。
こいつはいちいち人を小馬鹿にしないと気が済まないのだろうか。
しかし、ここで一つの疑問が生じる。
「なあ、アビリティ化できるのは召喚対象者の一番の特徴なんだろ?つまり俺が才能だっただけで、性格だったりもするって事だ」
「そうなりますね」
「じゃあ、俺よりもっと強いアビリティを作れる人間はいたんじゃねえのか?それこそこんな地味な成長タイプじゃなく、最初から絶大な力を誇る能力とか」
あくまで想像の範囲だが性格を強化して能力に変換するならば、人との関係を拒絶した人間が堅牢な盾を得たり、逆に他人の心を抉るのが得意な人間が万物を貫く槍を手に入れたり。
そういったレベル1の状態から最強のアビリティが発現してもおかしくない。
俺みたいな成長スキル持ちが成長するのを待つより、そういったタイプのアビリティの方が即戦力になるのではないか。
それに成長スキルはあくまで強くなるスピードが上がるだけで、必ず強くなれる保障はないわけだし。
「ええ。確かに最初から強力なアビリティを作成可能な候補者は何人かいました」
「なら……」
「でも、あの程度じゃ足りないんです」
リラは途端に厳しい口調になる。
「私達にはもっと強い力が必要なんです。この世界の誰よりも強い力が……」
先程までとは打って変わって真剣な面持ちでそう言うと、リラはこちらを見て、
「そして貴方ならばその領域に至れます」
はっきりとそう言った。
おどける事なく、真っ直ぐと。
それに対し、俺はここは任せておけと言って恰好つけるべき場面なのかもしれないが。
そんな余裕は俺にはなく。
「……ふ……ふざけるなぁ!!」
俺は突然激昂した。
文章が荒かったりするので、ちょくちょく修正していく予定です。