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1話「変態自己厨は少女に監禁される」

 「……ん……うん……?」


 意識が覚醒する。

 まず目に入ったのは見知らぬ天井だった。


 「お、目が覚めたようですね」


 突然近くから声がしたかと思うと、一人の少女が俺の顔を覗き込んできた。


 綺麗なエメラルドグリーンの髪の少女だ。

 髪を緑に染めて似合うと思っているのかと悪態をつきたいところだったが、残念ながらその髪は少女にとても似合っていた。

 まるで地毛かのような自然な美しさ。

 いや、現実でそんな髪色で生まれる人間はいないのだが。


 髪型はショートで全体的にほっそりとした体形。

 容姿はとても整っていて、美少女と呼ばれる部類だ。

 年齢は16歳前後と思われる。


 もしかしたら俺と同い年かもしれない。


 ……いや、待て。

 なに冷静に分析してんだよ、そんな場合じゃねえだろ。


 見知らぬ場所で目を覚まし、美少女と二人っきり。

 明らかに異常な状況じゃねえか。


 それに何か重要な事を忘れている。

 

 「――――――ッ!!」


 そうだ、俺は殺されたんだ。

 ティナに――金髪碧眼の少女に。

 腹部に大きな穴を空けられて。

 

 だけど、今俺は生きている。

 とりあえず腹部がどうなっているのか確認しようとして、


 「なっ……!?」

 

 自身の手が固定されている事に気づいた。

 鉄制の手錠で。


 「……あのさ、何で俺は手錠をはめられてるんだ……?」


 俺は驚き、思わずその場で聞いてしまう。


 「えー?だって変態がいきなり襲ってきたら困るじゃないですかぁ」


 対して少女はおどけた様子でそう言う。

 何やらむかつく態度だが、それより。


 「俺は変態じゃねえよ!!」


 「え?幼女にお兄ちゃんと呼ばせて喜ぶだけでなく、死ぬ寸前だというのに幼女のパンツを見てにっこりした人が変態ではないと?」


 「……何でそれを知ってるんだよ!!」


 いや、よく考えたら当然か。

 俺が意識を失わせたのがティナで、その後少女がいるここに運ばれた。

 腹部に穴が空いたのは、恐らく幻覚の類だろう。

 となると二人はグルという可能性が高い。

 ならば俺とのやり取りを報告していてもおかしくない。


 「俺が変態かは置いとくとして……ここはどこなんだ?」


 「さあ?どこでしょう?」


 少女はニヤニヤしながら問い返してくる。

 狼狽している俺の様子を楽しんでいるようだ。


 ……こいつ。

 思わずキレそうになるのを必死に抑える。

 俺は今、多分監禁されているということなのだろう。

 ならば下手に相手を怒らせてしまっては不利になるだけだ。


 とりあえず辺りを見渡す。


 部屋の中は何やら中世ヨーロッパのような雰囲気だった。

 天井にはシャンデリア、壁は石造りで、いかにも金持ちが好きそうな豪奢な調度品の数々が部屋中に並んでいる。

 そして俺を監禁したメンバーで分かっているのはティナと目の前の少女。

 二人とも髪の色から日本人でない事が分かる。

 

 「少なくても日本ではないな……」


 「正解でーす」


 ぱちぱちぱちと少女は拍手の真似事をする。


 「で……どこなんだよ、ここは?これ以上は推測できない」


 今ある判断材料ではここまでが限界だった。


 「ふっふっふー。聞いて驚いてください?」


 少女はクルクルとその場で回転した後に決めポーズで、


 「ここは異世界です」


 と言った。


 「いや、異国なのは分かったから……って、今なんて言った?」


 「異世界です」


 少女は先程の言葉を繰り返す。

 どうやら聞き間違いではないらしい。


 「……おい、誤魔化してるんじゃねえよ」


 「誤魔化すだなてとんでもない。私が言ったのは真実ですよ?」


 思わず語気が荒くなってしまうが、少女はそんなことは気にせずひょうひょうとした態度だ。


 「真実なわけ……」


 「ないと言い切れますかねー?」


 「当たり前だ。異世界なんて空想上の話であって……」


 「でもあなたはティナ様に一度殺されています。それなのに今こうして生きているなんて事は空想上の力でもない限り無理ですよ?」


 「それは……死んだと思ったのは幻覚だったんだろ」


 「何故そう言い切れるんです?」


 「幻覚じゃなきゃあんな小さい子が紐パンなんて穿くわけがないだろ!!」

 

 「あれは事前に調べたあなたの趣味に合わせただけですよ」


 つまり清純な子が無理して過激な下着を身に着けていたという事か。

 何それ最高だな。


 「……だとしても、黒い光線に腹を貫かれるなんて……幻覚以外に考えられないだろ」


 「そんな幻覚を見せられる技術なんてありますかね?貴方のいた世界には」


 「世間の知らないところで作られた極秘の技術……とかじゃねえの?」


 「あなたを気絶されるだけの為にそんな大それたものを使いますかね?」


 「で……でも……」


 かといって、ここが異世界だなんてふざけた話を信じられるわけがない。

 

 「まぁ、簡単には信じられませんよね」


 そう言って少女はあっさり引き下がると、胸のポケットに手を突っ込む。

 取り出すのに苦戦しているのか、ポケットのある胸元を何度もまさぐっていて、胸がむにゅむにゅと変形している。

 彼女の胸はそれほど大きくないが、それでも刺激の強い光景だった。


 やがて少女はポケットから鍵を取り出す事に成功する。

 それを俺の手錠の鍵穴に挿し、開錠する。


 「さ、とりあえず起き上がって立ってください。……って違うところが起き上がってますね」


 俺の股間辺りを一瞥して少女はそう言うと、数歩後ろに下がる。

 顔をしかめて思い切りドン引きしているようだ。

 どうやら俺は期せずして少女のひょうひょうとした態度を崩すことに成功したらしい。

 

 「童貞でごめんなさい……」


 それに対して俺は謝る事しか出来なかった。

 人生で一番恥ずかしい謝罪だったかもしれない。


 「やれやれ……貴方は変態というより童貞を拗らせているだけのようにも見えますね」


 少女は呆れたようにそう言う。

 やめて、そんな目でみないで……。

   

 俺は落ち込みながらも言われた通りに立ち上がる。


 「それじゃあ私の手を握ってください」


 そう言って少女は右手を俺に差し出してきた。


 「……え、えっと」


 俺は躊躇ってしまう。


 「おやおや。童貞さんは女の子の手も握れないんですか?」


 すでに態度は道化じみたものへと戻っしまっている。

 ……切り替え早いな。 


 「いや、そうじゃねえよ。ただ、変態だからとか言って俺を手錠で拘束してたわりにはガード緩いなと思って」


 「嫌だなー。童貞のあなたに女の子を襲う事なんて出来るわけないでしょ?手錠はただのおふざけです」


 少女はケラケラ笑いながら言う。


 「……いつか痛い目見るぞ」


 「足をガクガクさせながら言われても困りますよ?」


 「うっ……」


 確かに、少女の手を握ろうとするだけで心臓がバクバクしている俺には不可能な所業だった。

 

 俺は大きく息を吸ってから少女の手をそっと握る。

 

 「――転移≪カルム草原≫」


 少女が謎の言葉を呟いた次の瞬間、握った手を中心に眩い光が視界いっぱいに溢れ出した。

 俺は思わず目を閉じる。

 そして一瞬の浮遊感が身体を襲う。


 「……嘘だろ……」


 光が収まり目を開くと、目の前にあったのは中世ヨーロッパ風の部屋ではなく。

 辺り一面に草が生い茂っている草原だった。


 「転移能力。それが私の能力の一つです。凄いでしょ?」


 少女は得意げに言う。

 

 「ああ……凄い」


 俺は呆然としながらそう返す事しか出来ない。


 こんな事は魔法でもない限り実現不可能だ。

 逃避的に使っていた幻覚という言い訳も、さすがにもう無理があり過ぎる。


 そして異世界を裏付ける証拠はそれだけではなかった。


 「グギャアアア!!」

 

 遥か前方で、緑色の鬼が吠える。

 対するは革や金属で出来た鎧と武器を持つ4人の戦士。


 鬼に向かって4人の戦士が突撃していく。

 一人が大剣を振るい、一人が鬼の攻撃を盾で防ぎ、一人が魔法で後方から攻撃し、一人が傷ついた仲間を治癒する。

 アニメやゲームで幾度となく見たモンスターと戦士の攻防。

 そんな光景が目の前で繰り広げられていた。


 「本当に異世界……なんだな……」

 

 「だからそう言ってるじゃないですか」


 もう認めざるを得ない。

 ここは異世界だ。

 

 そして俺は異世界に召喚されたということなのだろう。

 つまり、これから俺には冒険と試練が待っているという事なのだ。


 ……何だかとんでもないことになってきたな。


 「とりあえず色々と説明して貰おうか」


 「そうですね。とりあえずは部屋に戻りましょう」


 そういって少女が再び差し出した手を俺は今度こそスムーズに握った。

 緊張とかそういったものが吹っ飛ぶほどには、今見た光景は衝撃的だったのだ。 



1日空いてしまいました……。

とはいえ、まだ深夜12時を過ぎたばかりなので今日中にもう1話投稿すればセーフ?

急いで書いたので、少し文章が荒いかもしれません。

申し訳ございません。

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