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9話「変態自己厨は自身のチートぶりを自覚する」

ついに主人公がチートします!!

 

 この世界の曜日の仕組みは日本とは違う。

 火、水、土、風、光、闇、無の計7日間で一週間が構成される。

 ちなみに年月は日本と同様、一ヶ月は30日程度、一年は十二ヶ月だ。


 そして今日は無の日。

 日本での日曜日と同様、社会人も学生もお休みの日。


 当然、無の日はこの学園も休み。

 生徒は一日自由行動ができるわけなのだが。


 「……何で俺は休日に訓練をしてるんだろうなぁ」


 現在、俺のいる場所は草原。

 レベル1でも倒せる低レベルモンスターが跋扈するフィールドだ。


 昨日クローネ先輩に都市と学園を案内してもらい、都市では武器屋で片手剣を、防具屋で防具を中古で購入し、学園では図書館で情報を集めた。


 これによって遂にレベル上げを開始する条件が整ったわけだ。


 ちなみに、武器と防具はリラから受け取った軍資金で買った。

 何でもリラの組織は強力な武器と防具しか所有しておらず、初心者に使える代物ではないとのこと。


 休日は一日好きに行動できる。

 この日は基本的に集中して己の訓練に励むのが、この学園での常識らしい。

 もっとも、クローネ先輩の受け売りだが。


 そんなわけで、俺は休日にも関わらず仕方なしに訓練をしている。

 

 装備は背中に片手剣。

 黒いシャツの上から胸に革製の防具をつけて、その上からダークグレーの制服のジャケットを前を開けた形で着ている。

 革製のグローブを手に嵌めて、足には革製のブーツ。

 この学園の規則で、戦闘時も制服を着用するのが義務らしい。

 服には魔法防御の効能もついているため、それで不便になるということはない。


 ちなみに片手剣はクローネ先輩に憧れて自身も使うことにした。

 片手剣は盾と一緒に持つのが一般的だが、俺は片手剣のみを装備している。

 これも速さを求めるクローネ先輩の真似だった。


 クローネ先輩の反対を振り切るのは中々苦労したが、やはり俺は先輩のような剣技を目指したい。


 「……さて、それじゃあ始めますか」


 今回の敵はブリザークボア。

 燃え盛るような赤い毛をしたイノシシ型モンスターだ。


 ちなみに討伐者ギルドという、冒険者ギルドのような場所でブリザークボアの討伐依頼も受けている。

 記録石と呼ばれる道具を渡され、これに俺が依頼対象を倒した数が記録されるらしい。

 今回の依頼はブリザークボアの討伐数が多ければ多いほど報酬が増えるため、特訓には最適だ。


 ちなみに俺が現在習得しているアビリティは『異常学習』『片手剣』『潜伏』の3つ。

 『片手剣』は剣を何回か素振りしていたら、『潜伏』はリラが使っているのを見ただけで習得できた。

 これはアビリティが楽に習得できるというわけではなく、『異常学習』の効果の一つ、アビリティ取得条件の緩和によるものだ。

 本来は訓練を重ねなければいけないらしい。

 地味だけど結構チートだよなぁ、俺のアビリティ。

 改めてそう実感した。


 今回の訓練の目的は、レベル上げと新たなアビリティ『回避』と『武器防御』の取得だ。

 俺は片手剣のみで戦闘に臨む。

 そのため、敵の攻撃は基本的に避けるしかない。

 『回避』アビリティの習得は早急に行う必要がある。


 そして避け切れない攻撃は防御するしかない。

 盾を使わないなら剣で攻撃を防ぐ必要がある。

 『武器防御』も必須なスキルなのだ。


 今回はその両方を一気に習得しようというわけだ。


 視界の先に一匹のブリザークボアが見える。

 俺は剣を背中から抜くと、敵の元へと駆けた。


 「グルァ!?」


 敵は俺の足音に反応し、こちらを向く。

 次の瞬間、俺に向かって突進してきた。


 「――くっ!?」


 俺はそれをサイドステップで何とか躱す。

 

 「せやぁ!!」

 

 そして直後に敵に向かって斬撃を放つ。

 剣は敵の皮膚を浅く斬ったが、致命傷を与えるには至らない。

 

 敵は方向転換すると、再び俺に向かって突進する。

 対する俺は全力で剣を振った反動で避ける余力がない。

 

 仕方なく剣を横に構え、剣の腹を左手で支えることで防御態勢を取る。


 「ふんっ……ぐぁ!?」


 敵の突進が剣の腹に当たり、最初は耐えるもののすぐに俺は吹き飛ばされてしまう。

 数メートル先まで飛んだところで、俺の身体は地面に激突する。


 「があっ!?」


 背中に激しい痛みが走る。

 しかし、そんな俺が復活するのをモンスターが待ってくれるはずもなく、敵は三度目の突進で俺に向かってくる。


 俺はなんとか中腰姿勢になり、勢いよく飛び込み前転をして、すぐさま立ち上がることでこれを回避する。


 ……よくできるよな、俺。


 自分があっさり戦闘に適用できていることに我ながら呆れる。

 確かに、やること自体はそこまで大変ではない。


 レベル1とはいえ、転移前の俺よりは遥かに身体能力も向上している。

 ステップ回避や斬撃などは技術的には、そこまで難しくない。


 とはいえ、精神面の問題で普通は上手くいかない。

 例え弱いとはいえ相手はモンスター。

 攻撃は痛いし、下手をすれば命を落とすこともある。

 

 異世界人ではない普通の人間であれば、恐怖でまともに動けないはずなのだ。

 

 それなのに今の俺が動けているのは、アビリティではない方の異常な学習能力による環境適応の速さもあるだろうが、何より。


 ティナとリラを救えない恐怖。

 数年前の幼馴染のときの苦しみの再来を恐れているのが大きいだろう。


 肉体的な痛みなんてものは、精神的なものに比べれば遥かにマシだと俺は知っている。


 トラウマが珍しく有利に働いているということなのだろう。


 ……おっと、思考が逸れすぎたな。

 いくら興奮状態によって思考速度が速くなっているとはいえ、今は戦闘中。

 余計なことを考えていては、あっという間にやられてしまう。


 敵が四度目の突進を開始するのを確認すると俺は再びサイドステップで回避。

 今度は追撃せずに、剣での防御態勢をとる。


 先程易々と突破された反射的なものではなく、しっかりと地面を踏みしめ構えた防御姿勢。


 それが功を奏したのか、五度目の突進は剣で受け止め、押し返すことに成功した。

 敵はのけ反って体勢を大きく崩す。

 チャンスだ。


 ――渾身斬撃(パワースラッシュ)ッ!!


 俺が頭の中でそう念じると、身体が勝手に剣を構え出す。

 大抵のスキルは、スキル名を頭の中で念じるだけで発動できるのだ。


 俺は自動的に剣を上段にのけ反るまでに構え、そしてそれを思い切り振り下ろす。

 赤い光を纏った剣が、敵を深く切り裂いた。


 敵は痛みに苦しむように倒れ、しばらくすると動かなくなる。

 やがて身体から色素が失せ、灰が散るように爆散した。


 「……ふはぁ」


 俺はその場に尻もちを着く。

 戦闘と魔力消費による疲労が身体を襲う。


 こんなのを延々と繰り返さなければならないのか。

 ゲームだとレベル上げは根気さえあればできるが、現実だと体力と気力が必要だ。


 気が遠くなりそうだ。

 異常学習のお蔭で、それもだいぶ緩和されているわけだが。

 それでも辛い。


 「……さて、次行くか!」


 しかしながら、頑張るほかない。

 俺は気合いを入れると、次なる標的を探しに歩き出した。



 ◇◇◇



 「……鬱だ……」


 俺はベッドに寝転びながら呟く。

 一日中ブリザークボアと戦って疲れたにも関わらず、明日からまた学校だ。

 しかも、昨日と一昨日は午前中で終わったが、明日からは通常授業が開始されて午後までみっちりある。


 癒しが必要だ。

 リラに頼みたいところだが、昨日から機嫌が悪いんだよな。

 確かクローネ先輩のことを話してからだろうか。


 昨日の報告でそのことを話すと、今日の癒しタイムはなしだと言い出し、今日も同じような感じだった。


 ギブアンドテイクな関係とは何だったのか。

 とはいえ、嫌がってる少女に無理矢理エッチな奉仕を求めるのも興奮しないし。

 

 この件は早急に何とかする必要がありそうだ。


 「――開け、能力の窓」


 俺は寝る前に、もう一度今日の成果を見ることにした。



 =====


 レイヤ=ロンリネス


 Lv3


 力 :30

 耐久:25

 敏捷:30

 魔力:15

 魔耐:15



 《アビリティ》


 ・異常学習(オーバーラーニング)

 ・片手剣

 ・潜伏

 ・回避

 ・武器防御


 《スキル》


 ・渾身斬撃(パワースラッシュ)

 ・剣防御(ソードガード)


 =====


 一日頑張ってモンスターを狩り続けてレベルが2しか上がっていない。

 ゲーム感覚で考えると遅すぎるが、この世界においては凄まじい成長スピードだとリラは不機嫌ながらも言っていた。


 アビリティは熟練度が上がるほど効果が増すので、今後も俺の成長スピードは上がっていくらしい。


 ……やっぱり地味にせこい能力だよな。


 まあ、この調子で頑張れば、すぐにグラスを超えるだろう。


 俺は一度起き上がり、扉の横にある魔法陣に手をかざして電気を消す。

 再びベッドに倒れ込むと、すぐに眠りに落ちた。



 

チートにしては地味でしたでしょうか……。

とはいえ、この作品は主人公がチートでありながら成り上がっていくものなので、序盤は少々地味なものが続きそうです。

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