第七十話 2人のクリスマス
クリスマス会も終わったしやることやるかな。よし、覚悟できたぞ。
「石田君、ちょっといいかな。」
俺が心の準備をしている間に松本さん以外誰もいなくなっていた。
「うん、いいよ。」
「えっとね、私ずっと前から石田君のことが好きだったの。もしよければ付き合ってください。」
まさに俺が今言おうとしていたことを松本さんが言っていた。まさかこれが両想いってやつか。違う、そんなこと考えてる場合じゃなかった。
「ごめん、今のなかったことにしていい?」
「え、そうだよね、私なんかじゃ嫌だよね。分かってたよ・・・。」
「違う。そうじゃないよ。ただ俺だって前から松本さんのことが好きだったんだ!俺から告白したいって思ってて今日やっと告白しようと思ったら松本さんに告白されてびっくりしてさ。どうしても俺から言いたいって思ってたから勘違いしちゃうようなこと言っちゃったね、ごめん。」
「ううん、いいよ。そんな風に思ってくれてたなんて嬉しいから。」
とりあえずこの微妙な言い回しとか直さなきゃいけないな。誤解のもとだし。
「松本さんと付き合えるなんて本当に嬉しいよ。これからよろしくね。」
「こちらこそよろしくね。それとこれクリスマスプレゼント。」
数字の9が3つぶら下がっている変わったデザインのネックレスだ。666のネックレス、9じゃなくて6だったようだ。効果は・・・とてもじゃないがクリスマスプレゼントにできるようなものじゃないな。俺は無効化できるけど。状態異常をランダムで10個付与ってどんなひどさだ。プラスの効果はスキル【転災】を習得することと666のネックレス以外の装備の効果1つを任意で無効化するというものだ。
転災は自分が次に受けるダメージを敵に押し付けるというもの。装備の効果を無効化というのが強力すぎる。これで移動速度制限という枷から解放されるわけだ。これは恐ろしいことだ。俺が今までの2.5倍の速度で動くのだ。模擬戦でみんなを驚かせてやろうかな。
「ありがとう。プレゼントが意図せず被るのはこれで2度目だね。」
そういって俺は虹色の蝶の羽のような装飾のついたネックレスを渡す。妖精のネックレス、1回の戦闘で3回まで致死ダメージを肩代わりしてくれる。
「もう二度と、死なせないから。」
「うんっ、信じてるよ。」
「ちょっと屋上行かない?」
「行こっか。」
付き合うことになって俺には色々と話したいことがある。
「聞きたいことがあるんだけど。俺のこと『ずっと前から好きだった』って言ってくれたじゃん?いつからどうして好きだったんだろうなって。」
「あれ、『なかったことに』したんじゃなかったの?」
松本さんは楽しそうに微笑みながらそう言った。
「まぁ言ったけどね。聞きたいじゃん。」
「一目惚れっぽいとこもあるかな。みんな思ってたより現実的でさ、私のスキルが微妙だったからパーティーに入れなかったときに誘ってくれたのとっても嬉しかったんだよ。」
懐かしいな。あの頃はまだ何でもできる生徒会長ってイメージだったけど。
「あれはヒーラー欲しさだったんだけどね。最近はスキル発動が早くなってる気もするよ。」
「スキル発動のタイミングがちょっと早くなってるんだよね。私がはっきり石田君のこと好きだって自覚したのは学校が襲撃された時だね。『人殺しなんてしてほしくない』って言ってくれたの、ちょっとだけだけど聞こえてたんだ。それを聞いてあぁ好きだって思った。」
「その頃の俺はまだ何とも思ってなかったかも。」
「もー、ひどいなぁかなり好きになってたんだよー?石田君が追い出されちゃった時なんて本当に悲しかったんだから。そのあと拐われて石田君が助けに来てくれるって時は本当に嬉しかった。」
「その頃には好きだったよ。離れると失ったものの大きさって分かるもんだよね。少しくらい心配してくれてないの?」
「全然してないよ。だって石田君が負けるわけがないじゃん。」
「それはそうだね。」
「そのあと北風の騎士団に入って澪ちゃんと会ったときは本当に焦ってたね。元カノさん登場なんて。そこからダンジョンに行ってまた離ればなれになっちゃって。石田君に会えないまんま死んじゃってさ、あぁ会いたかったなぁって思ってた。まさか生き返るなんてね。」
「正直な話松本さんだからためらいなく使えたんだよね。他のやつだったら多分躊躇したはず。」
「そんな風に言ってくれるなんて照れちゃいます。」
「あらためてこれからよろしくね。」
「うんっ!」