第六十二話 試練 side花田迅
とりあえずアキの真似して門の前にたどり着いた俺は少し緊張しつつ門に触る。全く...あいつはなんで緊張とかしないんだろうな。
「いらっしゃいませ、迅さん。お待ちしておりましたよ。」
「あ、どうも。花田迅です。」
「私はあなたの試練を受け持つセレンという者です。どうぞよろしく。」
セレンさんという天使は長く伸ばした金色の髪と翡翠を思わせる瞳が綺麗だなぁという印象を与えている。
「やだ、そんなに見つれられると照れちゃいます。」
「あっ、そんなつもりじゃなかったんです。不快にさせたならすいません。やっぱり天使さんを直に見る機会なんてめったにあるものじゃないですよね。」
「それもそうですね。では始めましょう。準備はよろしいですか?」
「ええ、いつでも。」
「では始め!」
セレンさんの手には鉈。・・・鉈っ?!鉈だと!似合ってないにも程がある。
「ジャストカウンター!」
かなり重かった。この細身にどれだけの力があるんだ。
「ふむ、聞いていた通りカウンターが厄介ですね。」
セレンさんはというとカウンターを回避していた。え、これ回避とかできんのかよ?
「カウンターは強力ですがタイミングをずらされたり攻撃を認識できなかったりすると意味がないんですよ?」
俺のジャストカウンターは盾か剣で受けたダメージを衝撃波にして返す。つまり衝撃波が来る瞬間にそこにいなければ当たらないということだろうか。
そこからセレンさんは無言で攻撃する。それを俺も無言でカウンターする。セレンさんはそれを避ける。そしてまたセレンさんは攻撃する。カウン・・・フェイント!攻撃すると見せかけ一旦引き、驚いているところに攻撃を叩き込む。
「フェイントですか・・・それにしても攻撃が重いですね。」
「暗に馬鹿力って言ってるんですかぁ?」
「いえいえそんなことは。」
そこからセレンさんはフェイントと通常の攻撃を混ぜて攻撃してくるようになった。
なぜか俺は通常の攻撃をも食らってしまう。
「ふむ、どうやらフェイントを警戒しすぎているようですね。感知にスキルを使っていないのにその反応の良さだということに驚きましたが。ここまで脆いとは買い被りすぎましたかね?」
なん、だと?確かにフェイントにビビってたかもしれない。だがまさかこのまま終わるとでも思っているのだろうか?
「うおおおおおお!!!!!銀河の咆哮!!」
「いい攻撃ですね。」
割と簡単に弾かれる。それでもいい冷静に、少しずつ、距離を縮めていこう。絶対に、倒す。
無言の攻防が続く。20分以上は続いただろうか。いよいよ終わりが近付く。
俺は剣を放り投げる。それに驚いたセレンさんの意識が俺から少しだけそれる。
守護神の鉄槌
しかしそれになんとか反応したセレンさんは少し右に避ける。そう、そのタイミングなら右に避けるしかないのだ。
先程投げた剣がセレンさんの頭上に落ちてくる。俺はその剣を握り・・・
「トドメです。」
これが最後の攻撃だった。
「いや~、それにしてもあんな古典的な手にやられちゃうとは思ってなかったですよ~。」
隙がないなら作ればいい。あえて無意味な行動をすることで隙を作ることに成功した。
「あそこで釣られてくれなければまた他の手を考えなきゃいけなかったですね。」
「よくあそこまで柔軟に戦えるようになったと思いますよ~。素晴らしいです。」
「もっと強くならなきゃいけないですから。」
「目標は秋人君ですか?」
「よくわかりましたね。その通りですよ。」
「私は応援してますよ。頑張ってくださいね。それでは固有能力を目覚めさせましょう。」
【絶対死守】指定した人物を攻撃から庇うスキル。距離が離れていればそこに転移し発動する。
うん、これ使えるな。これ使って自在にフィールドを駆け巡るとかできそうだよなぁ。
「素敵なスキルですね。迅さんにぴったりです。」
そうか、そう言われると嬉しいな。そういや仲間を庇うスキルってなかったな。
あ、そういや俺のパーティーメンバー誠一しかいねぇや。