第六十一話 試練後の話 side石田秋人
やっと試練も終わった。だが、少しやりたいことが残っている。
「なぁ、神、もう1回戦わないか?スキルの効果を実戦で試したいんだ。」
さきほど何もないところでスキルを試してみたがやはり物足りない。真・形態変化に至っては試すことすらできていない。いや、さすがに死んだりはできないよ。
「よかろう、っていうか九郎君でもよくないかい?」
「いや、吸収も試したい。九郎とは同化もしたことないからな。」
「大魔王+大魔王vs大魔王か。あっさりやられそうな気がするよ。」
「さっさと終わらせるぞ。」
「九郎、吸収、冥府の鎖・縛、常闇の衣、羅刹の闘気」
紫色の鎖と赤黒いオーラを纏った俺の背中にはエネルギー体のような翼がある。
「勝てる気がしないや。」
「冥府の門・開、闇の衣、冥府の瘴気」
今回俺はギロチンブレード零式を持っている。打ち合うこと数回、神は第二形態へ移行した。
「黒之波動、黒之掌、黒之矢」
まず黒之波動で俺の体勢を崩し黒之掌で殴り飛ばす。そして黒之矢で内臓貫通だ。そこで俺は第三形態に。肉体再生を使用し傷を塞ぐ。ちなみに異形の装束『魔王式』には自動修繕機能がついているのでこんな風に一部が消えても勝手に元に戻るのだ。
「えげつねぇな。」
「グレートインパクト」
12の衝撃波の中心を神の周りに設定し炸裂させる。その衝撃波を受けた神のhpは0になり最終形態になった。メテオストームは召喚魔法だったがグレートインパクトは攻撃魔法だ。つまり常闇の衣のダメージ増加の効果が乗るのだ。
「悪魔降下『マモン』」
「死刑宣告」
「うわ、やっべぇ。えええええええええ!?ちょっ、容赦の欠片もないのか君は!!」
「雷神の裁き」
15の雷の弾丸が無慈悲にも神の体を焦がす。
「全く・・・格が違いすぎるね。まぁまだ僕には勝てないだろうけど。」
「神ってそんな強いのか。」
「ええ、今の秋人様ではまだ敵わないでしょうね。」
「それにしてもアキト君、君の固有能力壊れすぎだよ。まさかスキルを上位変化させるスキルだなんてね・・・。もともとほとんどのスキルがユニークだったのにもうユニークじゃないのが絶技と雷神の裁きしかないのはどうかと思う。」
「そういや元々上位変化しないスキルも変化させてるのか。」
「そゆこと。これで従者を完璧に超えたね。レベル差が40以上あるっていうのにさ。」
「まぁ大魔王だしな。」
「うん、大魔王だもんね。」
「それはそうと他のやつらはどんな感じだ?」
「戦闘が長引いてたり何回も負けてたりと色々いるね。」
「迅は?」
「長引いてるよ。ジャストカウンター使いこなしすぎだよ彼は。目と耳を潰されてまだやるかい。」
目と耳を潰されて?
「あー、物理じゃないから安心しなよ。」
「当たり前だ。松本さんは?」
「まじエンジェル。うちのリリィがあんな簡単にやられるなんて。面白そうだからって弓使い同士を当てるんじゃなかった。あれ命中精度どうなってんのさ。」
「そういえば俺がいない間にめちゃくちゃ強くなってたな。いや~、あの時仲間に誘っててよかったよ。」
「で、実際どうなの?好きなんでしょ?告白とか、しないのかい。」
「え、心読んだのか?」
まさか、普通にバレてるなんてないよな。
「いや、普通にバレバレだけど。」
じゃあ松本さんにもバレてたりするのか?
「いや、それはないけど。」
「そりゃよかった。だがそんなにわかりやすかったか・・・。」
「うん、分かりやすすぎだよ。で、告白しないの?」
「しないよ。こんな世の中だろ。フラれて精神的にダメージ受けて脱け殻になってる間に死ぬとかはやだわ。落ち着いたらってことで。」
「つまり受け入れられるんだったら告白するってことか。」
「あのさ・・・俺はあんま感情とか表に出したくないんだからこういうこと言わせないでくれよ。」
「でも、松本さんが死んだときは凄かったよね。心が読めなかったよ。」
「あー、収拾つかないレベルで感情がぐちゃぐちゃになってたら読めないんだな。」
「ほうほう、感情がぐちゃぐちゃに、ねぇ・・・。本当に松本さんのこと大切なんだね。」
なんでこんなからかわれてるんだろうな・・・俺。