第五十九話 試練 side石田秋人
気合い満タンだしちゃっちゃと試練終わらせよう。そう思った俺は試練の会場に着いて驚いた。そこにいたのはなんと神だったのだ。
「試練は天使が受け持つんじゃなかったか。」
「あぁ、君は特例さ。天使じゃ相手になれないんだよねー。」
「天使って弱いのか?」
「別に彼らは戦闘のために生まれた存在ではないんだけどそれでも強いと思うよ。君や僕と比べるのがおかしいのさ。」
「なるほど、しかし今の秋人様ではあなたには勝てないかと。」
「あぁ、だから今回はアキト君が超えるべき壁に成り代わって立ちはだかることにするよ。」
「俺が超えるべき・・・壁?」
「そう、『先代大魔王』にね。」
先代とか言われても・・・継いだわけじゃないんだが。
「いやいや、君にそのつもりがなくても君は断続する大魔王の力を受け継いでいるんだよ。それに1つの時代に1人しか大魔王はいないんだ。先代なんて表現してもいいじゃないか。」
「さぁて、では変身しようか。」
そう言うと神の姿は霧に包まれる。やがて霧が消えるとそこにはなぜか九郎が立っていた。
え・・・九郎?
「なぁ、あれって?」
「私ですね。」
「九郎が『先代大魔王』?」
「そんな肩書きを持っていたころもありました。」
なるほど、これで色々と納得がいくな。以前神と殴りあいをしたと言っていたことも大魔王のスキルに黒之波動があることも。
そこにいた九郎は確かに今より少し悪そうだった。目付きは悪く着物の半分には袖を通していない。
武器は相変わらず刀だ。
「無駄話はこれで終わりだ。そろそろ行こうか。」
声もそのままだ。口調まで真似る気はないのだろうか。それとも九郎も以前はあんな口調だったとか?
「「冥府の門・開、闇の衣、冥府の瘴気」」
2人が同時に同じスキルを使う。俺の手には宝剣・白雪が握ってある。ギロチンブレード零式で戦うのは難しそうだ。
おっと、一気に距離が縮められた。そして3度ほど互いの武器が交わる。両者ともにダメージは少ない。そりゃそうだ。闇の衣によってダメージは5分の2になっているのだから。
再び接近し剣を交える。見ると九郎の姿をした神は嬉々として刀を振るっている。
俺の方が先に第二形態になる。そしてそのタイミングで先代大魔王は持っていなかったであろうスキルを発動する。
「クズノハ、同化」
九郎と同化しない理由は簡単。後ろからヒールしてもらう方がいいに決まってるからだ。自分でヒールと攻撃とか大変だしな。別に九郎と同化して勝っても勝利じゃないなんて言うつもりはない。そんなこと言うならクズノハとも同化しないし何より勝てばいいのだ。そんな生温いこと言っていられるわけがないだろ。
ステータスを底上げした俺は剣を打ち込む。そして神も第二形態になる。俺と同様に黒い角が生え白目だった部分は黒く、黒目だった部分は赤く変化している。
「七つの大罪『強欲』」
10人に増えた俺は地道に神を追い詰める。しかし神も普通に俺の動きに付いて来ている。10対1でだ。今まで戦ってきたやつらとは明らかに格が違いすぎる。
神は後ろに跳躍して距離を取り刀を頭上にかかげる。そこに修羅の砂塵が集まり凝縮される。
「あれはまずい!覇王斬です!!回避をしてください!」
九郎が言うなら俺がすべきことはただ1つ、回避だ。全ての俺が覇王斬という攻撃を回避した。そう思っていたのだが1人の俺が巻き込まれていた。
何が・・・起こったんだ?