第五十五話 レイド ボス戦
模擬戦をした翌日、3回の侵攻を防ぎ敵の兵力は少なくなっていた。都会に似合わぬ西洋風の城にいる敵のボスたちを倒すため選りすぐりのメンバーが選ばれた。
まず団長のパーティー、それに松本さんのパーティー、澪のパーティーに俺だ。敵は魔術師のようであると聞いている。
「秋人君は本当に1人で大丈夫なのかい?」
「まぁスキルでいくらでも補えるんで。九郎がいるとベストなんですがねー。ヒーラーとして貸し出してるんで。」
「強欲があるんなら大丈夫だろ。俺も持ってるけどあれは便利だぞ。」
「おっ、天野さんじゃないですか。やっぱあれ便利ですよね。おいしいご飯期待してますんで。」
「ボス戦前から飯の話か。期待しとけよ!」
「じゃあ行くぞ。」
「そうですね、行きましょう。」
春川さんのワープで3パーティーと1人は敵の城の前に到着する。いきなりボス前とかチートかよ。
「これもうボスいるとこ行けちゃったりしないの?歩くのだるいよぉ。」
「冷泉副団長はなんでそんなにぐーたらしてんのにスリムなんだか・・・。行ったことない場所には飛べませんって。」
いきなり階段が4つある。そういえば腹心みたいなのが3人いるとか聞いてたからそういうことなんだろう。
「じゃあ俺は1番右で。」
「俺たちは1番左を。」
澪のパーティーのリーダーが言う。
「私たちは右から2番目で。」
と、松本さん。
「じゃあ俺たちが残ったところだな。」
階段を登ったさきには重厚感のある黒の扉。彫刻されている模様にこだわりを感じる。ここの城主とは趣味があいそうだ。あー、この扉持って帰ろうかな。
そんなことを考えていたら扉が開いていた。
「ようこそ、竜狩りさん。」
「わざわざ開けてもらってすまんな。ちょっとこの扉に見惚れていて。これあとで持ち帰ってもいいか?」
「俺に勝てたらよかろう。俺はそう簡単には死なんがな。」
「それは楽しみだな。さぁ行くぜ。」
「冥府の門・開、闇の衣、冥府の瘴気」
冥府の瘴気は血のような色をしたオーラだ。自分のオーラに触れた敵から一定のhpを削っていく。さらに冥府の瘴気は闇の衣と混ざり禍々しさを増す。そのオーラは修羅の砂塵という名前を持ち俺の攻撃力を2倍にする。
「おらぁ!」
鈍い銀色の鎧を装備し金色の三叉槍を持ったその魔族は突進しながら槍を繰り出す。そこから舞うように連続して刺突を放ってくる。その全てを俺は大剣で受け止める。
「ほう、やるな。」
「あんたも、なっ!」
雷脚を発動し後ろに回り込む。そして斬撃を打ち込む。それにも対応し再び剣と槍は交差する。
「おおお!!!疾風怒濤!!!!」
風を纏った槍を6回繰り出す。そのうち2回を食らってしまったがさほどダメージを食らってはいない。
「電光石火!!」
超スピードで移動してきて異形の装束を突く。
「七つの大罪『強欲』」
10人に増えた俺は一糸乱れぬコンビネーションで魔族を追い詰めていく。
「そういえば名前を聞いていなかったな。俺は石田秋人だ。お前の名は何という。」
「ヴィルヘルムだ。」
「そうか。ヴィルヘルム、いい勝負しようぜ。」
「ホームランスイング」
ホームランスイングを受けてもすぐに立て直し突撃してくる。スキルにたよるのでなく地力で戦うまさに戦士といった感じの男だ。
「「うおおおおおおっっ!!!」」
10対1で打ち合うこと数十分、俺は第二形態に移行していた。
「それにしてもお前体力すごいな。攻撃だけでも十分に脅威だっていうのに強すぎだろ。」
「これでも俺は堅牢不落という二つ名を持っているからな。お前も強いが体力を消耗しすぎではないか?それでは俺とまともに戦うことはできんぞ。」
「安心しろ、ちょっと消耗が激しいだけだ。今回復する。」
「七つの大罪『暴食』」
hp、mp、体力の全てを全快する。その時できた隙に1回突かれたがまぁいいだろう。
「そろそろ上にいかねぇとおいてけぼりだよなぁ。んじゃ、終わりにするぞ。」
「「「死刑宣告」」」
「「「雷神の怒轟」」」
必中の特性を付加する死刑宣告によって10の雷の弾丸を避けきれずヴィルヘルムは消し炭になる。
うーん、この扉きれいに外れるかなぁ。