第五十一話 レイド side花田迅
いきなり俺たちの目の前に現れた二刀流の魔族に松本さんが殺された。しかもそれが全く見えなかった。あの速度で攻撃されたらキャンセルできない。
「さぁて、次はそこの君だよ。」
そ言って俺の方に歩いてくる。
「くそっ、こうなったらどうにでもなりやがれ。」
覚悟はできた。こいつに1発でも多く攻撃を加える。
「私もやるよ。美月さんを殺されて黙っていられるわけがない。」
「俺も興味本意で。こいつとは戦ってみたいね。」
「3人でくるのかぁ。まぁ手間が省けていいね。」
「待て、私も相手になろう。」
「あんたは少々厄介だが所詮は祢宜。俺のような剣士ではないから剣技では俺の方が上だ。」
「あぁ、祢宜だとわかったのか。そんなことはどうでもいいがな。」
魔族が動き九郎と剣を交える。そこに遠くから長剣が飛んでくる。
「俺に殺らせろ。」
こいつは何者だ?顔を仮面で覆い、白いローブを着ている。見た目は明らかにおかしい。そもそもこいつはこっちの味方なのか?
「お前は何者だ。」
「ん、ずいぶんな質問だな。あ?あぁ、そうか。すっかり忘れてた。」
何の話をしてるんだこいつは。正体が全くわからない。
「クズノハ、もういいぞ。」
そう言うと白いローブと仮面は消え黒いコートと鎧が一体になった装備と見慣れた顔が現れた。
「アキ!」
「お兄ちゃん!」
「秋人様!」
「あぁ、結局お前は何者なんだ。誰だろうが殺すけどな。」
「何者って、こいつらの友人だよ。ほれ、殺すって言うんならどっからでもかかってこいよ。」
そう言いつつ先程投げた長剣、今はギロチンブレード零式になっていた、を地面から抜こうとしている。敵に、背を向けて。こいつは死にたいのか?
案の定死角から魔族が斬りかかる。
「なんだ、この程度か。どうせなら武器なしでやってやろうか?でもそうなると首はねらんねぇか。」
後ろを向いたまま剣で受け止めていた。どれだけの実力をつけたんだ。何があったらここまで短期間で強くなれる?
目にも止まらぬ速度でアキが剣を振る。それを魔族は2振りの剣で受けるが剣はへし折られ首もはねられる。
「ちょっ、お前いくらなんでも強くなりすぎじゃねぇか?」
「そんなことより美月さんが・・・。」
「分かってる。」
「九郎、肉体再生を。」
「はい。」
俺からしたら意味不明な指示だが一切の疑問を口にせず九郎はそれに従う。せめて遺体くらいはきれいにしてあげたいということだろうか。
「こんなに早くこれを使うことになるなんてな。持っててもろくなことにならねぇだろうけど。これから起こることは口外するな。本来やってはならないことをこれからやるんだ。」
「え、それって・・・。」
アキはアイテムボックスから水のような物の入った小瓶を取り出す。
そして蓋を開け松本さんの遺体に振りかける。
そうしてしばらくすると松本さんがむくむくと起き上がる。
「えっ、私死んだはずじゃ・・・。石田君?」
「あぁ、俺だよ。もっと早くこれなくてごめん。」
「いいんだよ。来てくれただけで。」
「お兄ちゃん、あの水みたいなのは何だったの?」
「生命の水っていって蘇生や再生の効果がある。離れた部分をくっつけることができるかはよく分からないけど。」
「それってどこで手に入れたんだ?」
「飛ばされた先の空間にあったんだ。ちなみにあと2瓶ある。この瓶以外に入れると消えるからそんなに持ってこれなかった。蘇生効果のある道具なんて争いの種にしかならないからいいけどな。」
「今まで何してたか教えてくれる?」
「あぁ、一旦本部に戻ってからにしようか。」
ついに、あいつが・・・