第四十九話 レイド side天野悟
これはレイドの裏側で努力をしていた縁の下の力持ちたちの戦いの記録である。
「とっとと握り飯作れやぁ!!」
北風の騎士団の厨房には怒鳴り声が響いていた。レイドが始まる朝、料理人たちは討伐隊が持っていく握り飯を作っていた。別に料理人のスキルはなくとも料理を作ることはできるがスキルの補正によって味の向上と追加効果が望めるのだ。
レベルが低くて追加効果が望めないメンバーは北風の騎士団に避難していた人たちの朝食を作っていた。避難してきていた人は約600人、北風の騎士団の討伐隊不参加者と合わせると1000人にもなる。討伐隊用の握り飯を作っているのは70人、それ以外の朝食を作っているのは180人である。1人に3個握り飯を持たせるとして1人で30個作ればいい・・・と、言うわけでもない。なぜかというと厨房はそれほどの広さではないのだ。実際に厨房に入るのは30人程度なのだ。そのうち10人が握り飯を作っている。
30個作るごとに別の料理人と交代して個人の負担を減らすことになっている。
「よっしゃ、次のやつら入れ!!」
次のグループで最後だった。ここには三羽烏の1人天野悟がいた。
「ふぅ、納得のできだな。」
普通の素材で作られた料理には最大hpの上昇という効果がある。握り飯だとそれは+5くらいだ。しかし天野の作ったもののそれは+10程度であった。+5の差というのはとても大きいものだ。それが天野の腕の良さを示している。
「じゃあとっととこれを配布するぞ。」
天野が中心となってこの厨房は動いている。料理を作っていたメンバーは一斉に握り飯を自身のアイテムボックスに入れて討伐隊に配布しに行った。
配布し終わった天野は朝食をとり、自室に戻った。天野は部屋でスキルを使って爆弾の製作を開始した。天野はmpを消費することで爆弾を作るスキルを持っている。込める魔力の大きさ、込める速度によって爆弾の出来はかわってくる。より大きく、よりゆっくりと魔力を込めることで爆弾の威力はあがる。
また、爆弾のタイプは基本的に導火線を使って爆破するものが基本だがより大きい魔力を込めることで時限式の爆弾や振動で爆発するものなど様々な種類の爆弾を作ることができる。また様々な属性の爆弾も作ることができる。天野自身は雷の魔法を使えないが雷の爆弾は作ることができる。
かなり自由度が高い製作なのだ。2時間ほど使って爆弾を360個作った。
そこから厨房へ行き職業別に有効なステータスアップの料理を作る。例えば魔法使い系なら魔力アップ、前衛なら守備力アップなどだ。これらの料理を作るにはモンスターがドロップする特殊な素材が必要になる。物によっては特殊な調理の必要となるものもあるので普通の調理より時間がかかる。
だが、北風の騎士団の料理人たちは討伐隊が戻ってくるときには調理を済ませ温かく彼らを出迎えたのであった。