第四十八話 レイド side瀬田次郎
ついに大規模戦闘、レイドが始まった。敵は獣のようなモンスターが多い。東京でのレイド討伐隊は北風の騎士団を中心として700人程度で構成されている。それを指揮するのは北風の騎士団団長瀬田次郎。
ちなみに今回の瀬田のパーティーは瀬田、冷泉、春川、竜崎で構成されている。天野は本部でステータスアップなどの特殊効果をもつ料理や消耗品としての爆弾を量産している。
「正面に敵が約600、第1部隊で殲滅。」
討伐隊は3つ、第1部隊260人、第2部隊244人、第3部隊204人、で構成されている。これらの部隊が交代しつつ戦う予定になっている。瀬田たちのパーティーも第1部隊だ。
「ワープ」
春川の魔法で一気に敵の密集している地帯に突っ込む。
「うっしゃかかってこいやああああああああああああ!!!!!」
瀬田は無意味に叫んでいるのではない。これはハウリングというスキルで周囲の敵の注意を引き付ける効果がある。瀬田は鉄色の武骨な鎧から紅い鎧に装備を変更する。
瀬田は鎧を着て斧を持っているとは思えないスピードで駆けて行く。1人でモンスターを片付けようとするのではなく適度にhpを削ってから殲滅は冷泉に任せる。仲間を殺されたモンスターは殺した冷泉ではなく瀬田に殺到する。瀬田の持つ斧は敵愾心を煽る効果を持っている。その性能をもって瀬田は狂戦士という前衛でありながら壁役としての使命を駆け回りつつこなしているのだ。
そして瀬田の鎧は修羅の鎧というものである。高い防御性能を誇りつつも攻撃力と移動速度の大幅な上昇をもたらす。その代償としてスキルの使用禁止というものがある。唯一武器スキルだけは使うことができるが滅多に使うことはないので瀬田は通常攻撃しか使わないと言って間違っていないだろう。
「オラオラァ!」
瀬田は全力でモンスターを殲滅していた。一切のダメージを受けずに、冷泉も同じである。
「ふふっ、残像だよ。」
片方では春川がエリートオークをおちょくりつつ戦っていた。
「毒蛇の牙」
毒の状態異常をかけ、
「追い討ち」
状態異常がかかっている敵に大ダメージを与えるスキルを放つ。瀬田や冷泉と違い春川は基本的に1体ずつ倒していくスタイルなのだ。しかしこの間0.3秒。異常な速度なのだ。
「ハイステップ」
「マーキング」
少し離れた位置にいた大猪に接近しマーキングというスキルを使用する。そして対になるスキル、シュートを発動する。
シュートを使うとマーキングされた相手の場所に投擲したものが瞬間移動する。投擲スキルのホーミングと違って攻撃までに時間がかからない点だ。
投擲したのは春川製の爆弾が10個だ。爆発の連鎖、俗に言う合体技だ。単一の攻撃、しかも道具によるものを合体技と称していいのかという疑問は残るだろうが。
「あー、しまった。猪に夢中になっている間に囲まれた。」
春川の周りには10を超えるエリートオークがいた。
「オーク相手にしてるとこのセリフ言ってみたくなるよね。」
「くっ・・・殺せ。」
「ショートワープ」
放浪者のスキルであるワープは戦闘中には使えないがショートワープは視界に入っている範囲で瞬間移動ができるのだ。実際の範囲は「上げている指の本数を数えられる範囲」である。
「メテオエッジ」
エリートオークたちの頭上に飛んだ春川は短剣のスキルを発動する。短剣から橙色の刃が連続で射出される。その刃がエリートオークたちを切り裂く。
「もういっちょメテオエッジ」
この1撃でエリートオークたちとの戦闘が終了する。
「春川君や、あっちでボスクラスのモンスターとの戦闘が始まってるよ。団長と竜崎君はもう行ってるよ。それとさっきのセリフは私みたいな美少女が言うものだよ。」
「あちゃー、聞こえてたかぁ。美少女っていう年齢でもないでしょうに。だって実際はにzy・・・ちょっ、やめ!」
いきなり口を抑えられた春川は続きを言えなくなってしまう。
「さぁ私たちも行こう。」
「ワープ」
飛んだ先には巨大な狼がいた。
「オラァっ!」
瀬田が斧による攻撃で敵愾心を煽る。
「毒蛇の牙、追い討ち」
がぁっ!と狼が吼える。その場にいた全員の動きが1瞬止まる。そこを前足で凪ぎ払われる。
冷泉の炎と風の魔法の連鎖が狼を襲う。しかしそれでもなお立っている。やはりhpは高いようだ。ヒーラー以外の全員が攻撃しているがなかなかhpは半分を切ろうともしない。
「百連鎚」
瀬田の狂乱の魔斧の武器スキルだ。少々特殊なスキルでまず1発目の攻撃をいれるとそこから1秒未満の間もう1撃一撃いれるチャンスが発生する。その間に攻撃を当てるとまたさらに同じことがおきる。うまく決まりさえすれば何回でも攻撃を当てることができるのだ。さらに連続で当て続ければどんどんダメージが増える。その分タイミングもどんどんシビアになってくる。それを使いこなせるのが瀬田次郎という男なのだ。
「1」
「2」
「3」
「4」
いつの間にかその場にいた全員が百連鎚がヒットした回数をカウントしていた。
「17」
「18」
「19」
「20」
「おいおい、まじかよ。あのときの狐でもせいぜい14とかだったぞ。」
「それhpが低かったからでしょ。多分こっちの方がhp多いし。」
「38」
「39」
「40」
「41」
「おおおおおおおっっ!!!!!!」
41回の猛攻のすえに狼を倒すことができた。周りにいた人たちは内心「こいつだけで倒せたんじゃね?」と、思っていたとさ。
※修羅の鎧を着たままハウリングを使っていたのでハウリング使用後に装備を変更した描写を加えました。