第四十六話 神様たちのお茶会
新章突入です。短い章をたくさん書いていくスタイルとなっております。
何もない真っ白な空間の中に神と2人の女性が立っていた。
「さて、突っ立ってるのもなんだしお茶でもしようか。」
そういって神は指をパチン!と鳴らす。そうすると小さな小屋が現れた。中に入ると暖かみのある灯りがついていてシンプルなデザインのテーブルと椅子、それに紅茶と茶請けが用意してあった。
「それで今日はなぜまたお茶会などお考えになったんですか。」
女性のうちの1人、リリィが尋ねる。
「うーん、暇だったんだよ。あとは側近である君たちと意見交換をしてみたいなと思ってさ。」
「なるほどですねー。それで最近のダンジョン出現をどう思ってるんです?」
「なかなかいいこと聞いてくるね。もともと2つの世界は反発し合ってるからくっつくはずなんてない、でも魔法で強引に接着されてるっていうのが今の状態なんだが結構馴染んできたみたいなんだよね。元々のベースはこっち側の地球だったと思うんだけどあちらの環境までこっちに食い込んできてる。せいぜい生物だけかと思っていたんだが世界をくっつける魔法であって転移魔法じゃないからね、一体化するのは当然ってわけさ。」
「なるほど、ですがダンジョン内のモンスターどもはいくらなんでも外と比べて強すぎでは?」
「まぁねー、強すぎて封印されたやつらとかダンジョン内でのみ強くなるようなやつばっかりなんだよ。」
「内弁慶みたいな?」
「なんか違う気はするけどまぁいっか。」
そう言ってクッキーをぽりぽりと食べ紅茶を口に含む。
「石田秋人は見つかりましたか?」
「いや、彼はあの時からあの世界のどこにも存在していないんだよ。」
「それはつまり死んだということでは。」
「いやいや、あの魔方陣は殺傷目的のものじゃなさそうだったよ。おそらくは転送用のもの・・・。」
「でもー、主に見つけられないってことはやっぱり死んじゃったんじゃないですかね?」
「僕だって万能じゃないんだよ。僕が見ることのできない場所だってある。例えば僕の管轄外の世界とかね?」
「異世界転送の魔方陣?ですがあのダンジョンは元々あちらの世界のものですよね。どこに転送すると言うんですか。」
「ほら、例えば異世界人が仕掛けた勇者召喚の魔方陣だったとか。」
「もぅ、ふざけないでくださいよぉ。そもそも勇者召喚なら勇者が呼ばれるでしょう。」
「いやいや、間違えて邪悪な存在が呼ばれたということも史実にはあるんだよ。と、まぁ冗談はおいといてだね。僕は個人の所有する空間に飛ばされたんじゃないかとにらんでる。」
「はぁ・・・誰がそんな面倒な魔方陣を。」
「あの祠に狐を封印した張本人とかね。推測の域を出ないけどあそこまでのボスは全て選定のために用意されたもので条件を満たす者が見つかったときに魔方陣が起動して自分の空間に飛ばすとか。」
「ですがそれだとやはり目的は何かが分かりませんよね。」
「いや、1個だけあるんだよね。自分が死んだあとにでも自分の空間に人を飛ばす目的。」
「ん?狐を封じた人はもう死んでるんです?」
「あぁ、あの魔方陣は結構古い型のものなんだよ。さすがにそんなに長い間生きていられる人間なんていないと思うけど。」
「あ、魔方陣がどんなものかはっきりわかってらしたんですね~。でも何故人間だと?あぁ、あの狐が言っていましたね。結局目的は何だったと思うんです?」
「僕も似たような魔方陣を仕掛けたことがある。で、そのときの目的は『試練』。条件を満たす者がいたら特殊空間に吹っ飛ばしてそこで人形と戦わせるっていうね。それを乗り越えた者にはさらなる力を、途中で死んだらそれはそれ。ちなみに人形って普通に熊とかうさぎとかかわいらしいデザインのやつでさ、油断しないかどうかっていう意味も含んでそういうデザインにしたんだけど。ちなみにクリア者は0。」
「あれ、そもそも精神値∞なのになんで転送されたんですかね?」
「転送の魔法は人間を転送することが目的、転送の魔方陣は空間と空間、世界と世界を繋ぐ道を作ることが目的。道っていうより穴ってイメージの方があってるかな?強制的に通らされるってのは落とし穴に落ちるのに似てるかも。」
「まぁ主のように悪趣味な試練を仕掛けているとも限りませんし戻ってくるのを待ちましょう。」
「うん、そうだね。ところで最近魔族たちの動きがおかしいよね。」
「えーっとですね、世界各地で大規模な侵攻が起こりそうです。」
「ほう、これは楽しいことになりそうだな。」
「不謹慎ですよ。」
「リリィは厳しいなぁ。大規模って言っても大したことはないでしょ。」
「世界中の12ヶ所でそれぞれ1万以上の魔物を従えて侵攻するみたいですよ。」
「それはまた・・・予想外だね。ちょこっと見ただけだったからそんな規模だとは。まぁ12万なんてやつらにとっては多いと言えるほどの数ではないよね。」
「それはそうですがさすがに1万の軍勢を相手にするのはきつくありませんか。」
「1000人でやれば1人10体でいいじゃないか。」
「そう言われるとそうですねー。」
「そういえば主、天使たちが提出した資料に返答がないと文句を言っておりましたよ?」
穏やかな口調だがリリィからは殺気が感じられる。もちろんリリィに神を殺すことなどはできないのだが神は本気で怯えているようだった。
「急いで仕事を終わらせてくるよ!」
そういって神は去っていった。