第二十九話 訓練
俺たちがパーティーを組んでから最初の連携をしてみた。その結果にぃなさんがバンバン撃ちまくる固定砲台、俺と遥が遊撃、九郎が回復兼壁役となった。実際は到達する前に死んでいるから壁としての役割はほとんどないのだが。
「連携うまくいったね!」
「いやいや、お粗末にもほどがあるでしょ。もっとうまくできるようにならなきゃ。」
「お兄ちゃんにとってはあれが粗末なんだね・・・。2人のときより格段に良かったと思うんだけど。」
「それは火力が上がって殲滅速度が速くなってるからだね。3年くらい一緒に行動してた私達からしたらあんなのはまだまだと言わざるをえないんだよ。」
全くもってその通りだ。連携とはお互いの長所を伸ばし短所を消すようなものでなければならない。つまり連携はかけ算なんだ。さっきまでやってたのは足し算だ。引き算じゃないだけまともだったろうという程度。
「うんうん、オーバーキル気味だし効率の悪さがね~。俺だけでも結構十分な火力なのににぃなさんが加わるとねぇ。」
「お兄ちゃんがギロチンブレード零式じゃなくて必殺の太刀を使えばいいんじゃないのかな?」
考えたこともなかった。俺の火力が異常なのはばかみたいな攻撃力だけでなく攻撃が全て範囲攻撃になるという点も大きかったのだ。
「それありだなぁ。何も考えずに振ってれば敵を殺せるせいで戦闘の基礎とかいまいちなんだよね。これから生きていくには基礎が重要なんだよな。」
「その点は遥ちゃんの方が上だね。習ってみたら?」
「なんかよくわかんないけどお兄ちゃんには教えられない気がする。私のって剣道の動作がもとになってるんだけどお兄ちゃんはそういうのに当てはまらないっていうか。」
要は師となる人物を獲られないということだろう。
「では私と戦闘訓練をしてみてはどうでしょう。実戦の中で自分のスタイルを見つければいいと思いますよ。」
「なるほどな。それはありだ。早速今日からお願いできるか。」
「もちろんです。」
さらに強くなれるかと思うとわくわくしてくる。
「もちろんスキルの使用は禁止ですよ。今から始めましょうか。」
今からとは驚いたが言葉通り始めることとする。
「どこからでもかかってきてください。」
そんな言葉で始まり訓練をすること6時間。九郎はわざと隙を作ることで俺に敵の隙を突く術を教えてくれた。
6時間の戦闘で笑えない冗談のやかましい声の中でも気配が読めるようになってきた。俺の戦闘の基本はだいぶ出来上がってきたと思う。
剣を使うとはいえリーチが伸びて切るということが可能になったというだけで所詮は喧嘩の延長線上にあると思ったのだ。だから喧嘩のやり方をベースに剣での戦い方を作り上げていった。遥に言わせると剣道の基本とはかけはなれているようなのだがこれが俺にはしっくりきたんだ。
「にゃんすけ君だいぶまともに戦えるようになったね~。」
「最初は一方的に嬲られてましたからね。足さばきとかも全然でしたし。」
「九郎さんは強すぎると思うんだよね。」
「レベル120でなおかつ戦闘慣れしてますからね。俺とは大違いですよ。」
「まぁまぁお兄ちゃんも結構強くなったんだしいいじゃん。今まで基本性能だけでトップクラスの実力を誇ってきてたのがおかしいんだよ。」
「にぃなさんに完膚なきまでに叩きのめされたからなぁ。」
「酸素抜かれたら仕方ないでしょ。私は風魔法で空気を確保してたもん。本来は水中とかで使うことを想定してるっぽいんだけどね。」
「まぁ自分で酸素抜いてるときに使っても何の問題もないですよね。多重起動が厄介すぎるんですって。」
「詠唱終わる前に倒せばいいんだよ。」
「高速詠唱がほんと高速すぎて無理なんですってば。」
「いつか倒せるようになるって。まぁ頑張りなさい。」
「うっわ、うっぜぇ。もとからの知り合いだからこそのこのいらいら。」
「そうだ、明日からも毎日2時間は訓練ですからね。」
まじかよ・・・。