第二十七話 入団試験
「じゃあにゃんすけ君、好きなタイミングでかかっておいでよ。それなりに楽しめると思うよ。」
にぃなさんの手には銃のようなものが握られている。あんな武器があったのか・・・。分類は弓とかか?
「冥府の門・開」
「サンダー」
銃から射出された雷に阻まれる。サンダーが当たらなかったのは多分これが初めてだ。
「その銃は魔法の補助をする武器ですか。」
「そうそう、杖の一種だよ。」
杖ねぇ、銃にしか見えん。
必殺の太刀を持って駆けていく。すぐに距離は縮まる。
「魔法職の弱点はその紙防御だ。本体を叩けばどうってことはない。」
「私がそんな生温い戦いをするとでも?」
太刀を振り上げあと少しで当たるというところで俺は大量の魔法に吹き飛ばされた。
「あれー、効いてないんだね。まぁ影響を一切なくすのは無理だからそうやって飛ばされたわけなんだけど。」
「どうやってあんなに大量の魔法を同時に出したんですか。」
「いい質問だね、にゃんすけ君。私のスキルの多重起動はあらかじめ詠唱しておいた魔法を一気に使えるという便利なものなんだよ。」
強い呪文は詠唱しないと使えないし思考詠唱というスキルで口に出さずに詠唱できるというのは知っている。だが
「どうやってあんな時間であれだけの呪文を詠唱したんです?」
「思考詠唱と高速詠唱の合わせ技だよ。それがあるからこんな短時間で詠唱できたんだよ。全く便利だね~。」
うわ、めんどいな。魔法は効かないけどあのレベルのを撃たれ続けたら絶対に接近できん。
とりあえずは消耗させてmpが尽きたところで一気に攻めるか。
「おおおおおおっっ!!!!」
気合いを入れ直して全力で突っ込む。
「何回来ても無駄だってー。頭使わなくちゃ。」
延々と突っ込み続け延々と弾かれ続ける。
そして11回目
「mp切れ狙ってるんでしょ?そうはいかないんだって。」
火炎の魔法に包まれる。もちろん俺には効かないがこれだと絶対に酸欠になってやられる。そもそもこの空間の中でにぃなさんはどうやって酸素を確保するつもりなんだろう。
「苦しいよね?私は魔法で空気を確保してるから平気なんだよ。ついでに私にmp切れなんて起こり得ないんだよね。」
mp切れが起こらない?ハッタリだろうか。
「七つの大罪『怠惰』動いていない間mpを回復し続けるスキルなんだよね。mpの自動回復を補助するスキルと相まってこのペースで使用しても全く減らないんだよね。」
うわ・・・意識が遠退いて来たよ。
「メテオストーム」
にぃなさんが銃を隕石に向け一瞬で隕石は消し飛ばされる。
「これはやばいな。だがまだやれる。」
「雷脚」
「死刑宣告」
ギロチンブレード零式の固有スキルだ。次の攻撃が必中、そしてクリティカルになる。クリティカルは敵の守備力を無視し大ダメージを与える。
「ホームランスイング!!」
気合一閃。
「うーん・・・今のは効いたね。女子相手でも容赦ないなんて・・・。」
「にぃなさんは本当に強いですね・・・もう・・・もちそうにない。」
俺の視界は真っ暗になった。
「おー、目が覚めたねにゃんすけ君。」
「んぅ?やっぱり気絶してましたか。」
「うん、そだねー。hpはちゃんと削っといたよ。ポテチ食べる?」
なぜにポテチ。
「もらっておきます。hp削るなんて鬼畜ですね。」
「いや~照れるね。」
「褒めてない。」
「結果から言うとね、君は合格だよ。あそこまでさせた人は初めてだ。普段は七つの大罪なんて使わないんだよ。」
「おお、それはよかった。」
「ちなみに君の妹さんはなかなか鮮やかに合格していたよ。」
「え、もう試験終わったんですか。」
俺はどれだけ寝ていたんだろう。それが全くわからない。
「やはり夜の吸血鬼とは恐ろしいね。移動速度もすごくて隙も少なかったよ。いいセンスしてるよ。」
「もう夜ですか。」
「うん、遥ちゃんは寝ちゃったみたいだねー。私ももう寝たいよ。ポテチなくなったし。」
「じゃあ寝ればいいじゃないですか。」
「君の隣でかな?」
ゲームでもたまにセクハラしてきてたよなーと思い出した。
「いや、床とか。」
「サディスティック!サディスティックだよにゃんすけ君!!」
「にゃんすけ言うな。もう俺も寝るんで。おやすみなさい。」
「おやすみ秋人君。」