第二十六話 ニート
モンスターとの戦闘なく本部までたどり着いた。めっちゃでかいビルだった...。これすごいな。
「ここが我々の本部だ。すぐに入団試験を始めることもできるがどうする。」
俺は今すぐがいいな。
「私は後でいいです。」
「俺はすぐがいいですね。」
ほぼ同時に答えた。
「お、あの試験は俺でもやりたくないんだけどな~。すぐやっちゃうのかぁ。石田君はすごいな。」
第三席ですらこの様子。そんなにきつい試験なんだろうか。
「では試験内容を言おう。うちの副団長と模擬戦をしてもらう。」
「その副団長さんって強いんですか?」
「んー、勝利って形で合格したやつは一人もいないってだけ答えておこう。」
これは絶対強い人だ。さすがに瞬殺なんてないと思う。
「では副団長を呼んでくる。付いてくるか?」
「ええ、そうします。」
副団長の部屋に着いた。
「おい、冷泉。入団希望者だ。入団試験を頼む。」
「ふぇ?ねむぅーい!ぐっすり寝てたのに試験なんてめんどーい!」
「これが副団長の冷泉冴凪だ。基本的にニート体質だからね。」
それにしてもこのテンションと声は覚えがある。
「は、はぁ。そうなんですか。」
「あれっ?にゃんすけ君?!いやー、こんなとこにいるわけないよねー。寝ぼけてたわぁ。」
これでようやく思いだした。んー、これはちょっと入団試験不安だな。
「まさかにぃなさんですかっ!まさかにぃなさんが北風の騎士団の副団長だなんて。」
にぃなさんというのは俺のやってたネトゲのフレンドだ。相当な廃プレイヤーだったと思う。
「にぃなだよー。ちなみに『な』は本名から、そして『にぃ』はニートから取ったんだよ!」
「なんか普通にかわいいと思ってたのに・・・残念な由来だ。」
ちなみ冴凪さんの容姿はめっちゃ美少女、いや美幼女だ。だぶだぶの黒ジャージを着ている。このギルドの上位で黒くないのは団長くらいだと思う。っていうか冴凪さん絶対ロリコンホイホイだろ。
「かわいいって・・・私が?!にゃんすけ君はロリコンだったのか!ちなみに呼び方は今まで通りにぃなさんでいいよ。いや、にぃなでいいよ!」
なぜに呼び捨て。にゃんすけってのは俺のゲームでの名前だ。
「いや、にぃなって名前がですよ。普通に容姿もかわいいとは思うんですが。残念な性格も知ってますからね。あとにゃんすけを連呼しないでください。普通に名前でお願いします。」
なんか遥が俺をじとーっとした目で見ている。
「お兄ちゃん、きもい。」
ぐさぐさっ!!俺やばいかも。
「ありゃー、妹さんに嫌われちゃったね。じゃあ雑談は後回しにしてー。そろそろ入団試験、始めよう。」
「冷泉が目的を忘れていないようで安心したよ。すっかり目も覚めたようだしな。それにしても石田君と知り合いだったとは驚いた。」
どうやら性格は把握されているようだ。基本的に何かしててもすぐに忘れる人だ。
「ちゃっちゃと試験終わらせてごろごろしたいんだよねー。んじゃちょっと着替えますかぁ。」
一瞬でにぃなさんの格好が変わった。赤色のフード付きのパーカーに布製のズボン。フードには猫耳が付いている。赤ずきんちゃんかよ。あとその手に持っている袋は何だ。見るからにポテチだろ。
「よっし、着替えたよぉ。さてさてそれでは試験開始ーっ!」
え、そのまま開始するの・・・?などとツッコミを入れる前に模擬戦用のフィールドに転送された。