第二十四話 笑えない冗談
やることをすませた俺は遥のいる教室へ戻る。
「そういえばお兄ちゃんその服ボロボロだね。」
気付いてなかったが全体的にボロボロになっていた。欠けていた右手と左足の部分はもちろんなくなっている。
「防具としての機能を失ってるみたいだな。」
「じゃあ新しい装備にするの?」
守備力が倍になる効果は魅力的だったんだがな。1つだけいいと思っていた装備があった。それに変えようか。それを装備することをイメージすると一瞬で着替え終わる。
「お!かっこいいねお兄ちゃん!!」
「私もその鎧は似合っていると思いますよ。」
九郎と遥に誉められる。螺旋状の模様が多く使われている黒の鎧。名前は「笑えない冗談」だった。とても装備の名前だとは思えない。
「結構いいだろ?効果もいいんだぜ。」
「お兄ちゃんがいいって言うんなら本当に言いんだろうなー。たま~にデメリットがあるやつをいいって言ったりするけど。」
ギロチンブレードを思い出す。
「別にこれはそんなことないぞ。普通に守備力上昇とさらに攻撃力上昇、ついでに状態異常の効果延長。あと呪いなんてのもあったな。」
「え、呪われてんの。」
「うん、呪われてるよ?」
「戦闘中にたまに動けなくなったり狂ったりするらしいのに問題ないの?」
「あー、俺にはそういうの意味ないから。」
ちなみにこれは狂うタイプの呪いらしい。
「意味ないって・・・デメリット無視かよ。」
「そういえば秋人様はギロチンブレードの移動速度低下も無視してましたね。」
これを無視できるやつはそうそういないと思う。
「もう世界が違いすぎる。」
「さて、ちょっとでも近付けるようにレベル上げでも行くか?」
まぁメテオストームやるだけなんだが。
「いや、できれば夜がいいかな。」
「経験値うまいモンスターでも出るのか?」
だったら一気にレベルが上がって嬉しい。
「そうじゃなくてさ。私のサブ職業が吸血鬼なんだよね。昼間はステータスが下がってるんだよ。日光浴びるだけでもうだるいんだよー。」
それは厄介だ。
「どうにかならんのか。」
「人の血を吸ったら1時間くらいは普通のステータスで動けるんだって。試したことはないんだけど。」
「じゃあ俺の吸えばいいじゃん。」
「え、それやると狂乱状態になるらしいけど。」
問題ないじゃん。
「だから大丈夫だって。俺に状態異常は効かないんだよ。」
「それでもその後1時間はその効果がなくなるらしいんだよね。」
「つまり1時間普通に動いたらまた1時間経つまでは弱体化したステータスでいるしかないってことか。」
「そうなんだよ。そもそも血を提供してくれるような変人がいないんだけどね。」
厄介だな。あと変人ってなんだよ。善人の間違いだろうな。
「そもそも俺の言ってるレベル上げって動く必要ないんだけどな。」
「画期的なレベルの上げ方でもあるの?いや、移動速度低下があるからそれに合わせただけかな。」
残念ながら両方はずれだ。
「普通にスキルで遠距離を一気に殲滅するだけなんだ。」
「そんなスキルがあることがおかしいと自覚しなさい。」
「はい、すいませんでした。」
なぜ俺は謝ってるんだろうか。
「とにかくそれ使えば1時間くらい普通に何もせずにレベル上げれるから。」
「じゃあさっさとレベル上げちゃおうよ。」
こうして人がいなくてモンスターが密集しているところを探すことにした。