第十六話 追放前
結局なんとか松本さんを説得することができた。その後予定通り狩りに行った。何か集中できてなかったような気はしたが普通はそんなものなのかな。
選挙までの2日間、俺は特に何もするつもりはなかった。とりあえず迅にだけは伝えておいたが。
「ふーん、あの副会長がそんなことをするとはね。勝ち目はないんだろ?」
「勝つ気もないけどな。まぁ4日後には出ていくことになるだろうね。」
「うん、じゃあな。」
「予想通りの反応だな。」
「ん、あれれっ、アキト君出てっちゃうの?」
「知ってたんじゃないのか。」
「いや、佐々木正義なんてまったく気にしてなかったものでね。そんな考えをする人間だとはね。ちなみに君の彼に対する印象はほとんど正しいね。君は見る目があるよ。」
「いきなりそんな考えを読まれてもな。」
「神様は何で秋人がいなくなるのを気にするんだ?」
「決まってるじゃないか。アキト君がいないとあまり面白くないじゃないか。」
なんだよその理由は。
「確かにね。それ以外に面白いのは松本さんかな。あとは佐々木もちょっと面白そうだ。」
「うむ、松本さんには純粋に興味持てるよな。秋人がいなくなった学校でどう過ごすんだろうね。どうやって説得したんだ?松本さんは行きたいって言ったんだろ?」
「思ってることをちゃんと伝えたら納得してくれたよ。」
「想ってること?」
「別の漢字を想像してるように聞こえたんだが。」
「僕からすればあれはちょっとずるい手だったとは思うんだけどね。」
全くわからん。
「何がずるいんだ?」
「人の考えを読むのが得意なくせにそういうのはわからないんだね。」
何を言ってるんだこの神様は。
「まぁ、あれで正解だね。学校を出て行ったあとはどうするんだい?」
「俺も気になってた。ギルドにでも入るのか?」
ギルドとは多人数の人間が集まってできた集団だ。パーティーよりさらに安全に行動できるということでギルドに加入する人も多いと聞く。ギルドというものは元々神様が想定していたものではなかったようだ。
「いずれ入るかもしれんがまだないな。俺の意識がなくても暗黒結界が消えないのは知ってるし寝る所には困らないんだよなぁ。最近ちょっと質感とか変えれるようになってきたしな。」
「自由度たけぇ。」
「あれはもともと僕のスキルだしそのくらいの自由度はあるよ。」
まじか。それで色々と便利なわけだ。
「あれってかなり便利なんだよなぁ。トランポリンっぽいことできたりクッションになったり。」
「あ、もうそこまでできるんだ。せいぜいちょっと柔らかくできる程度かと。もしかしてもう直方体以外にできるのかい?」
「あー、できるよ。それってそんなすごいの?」
「1ヶ月かかると思ってたよ・・・。」
「っていうか学校出てく前のくせしてずいぶんといつも通りの会話だよな。」
「焦ることもないさ。想定の範囲内ってやつだ。投票まで何もする気はないよ。」
「そうかい。僕からプレゼントを用意させてもらうよ。ささやかだけどね。」
それはありなのか。神様としてはだめなんじゃないか?
「いや、特に問題になるほどのものでもないんだよ。ポーションよりさらにささやかだよ。」
「それならいいか。心読むな。」
「俺も何か用意しとこうかね。」
「あ、ハンドバリスタが欲しいんだよね。当ててくれるかな?」
「ちょ、お前まじか。まぁポイント全部使ってやるよ。」
「あぁ、ありがとな。」