第十五話 激怒
私の名前は松本美月。今日も石田君と狩りに行く。楽しみにしつつ準備をしていると石田君がやってきた。
「松本さん、今日はちょっと狩りに行くのが遅くなりそうなんだ。いいかな?」
「いいけどどうしたの?」
本当はちょっぴり残念ですけど仕方ないよね。
「僕からお話したいことがありまして。」
2年生の佐々木君だ。真面目でみんなから支持されている。多分次の生徒会長になるだろう。でもこの人は絶対に裏があると思う。石田君にしたい話っていうのもいい話だとは思えない。
「私もついて行っていいかな。」
石田君と話をするんならパーティーメンバーである私だって聞く権利はあるはずだ。
「いや、ついてこないで。何を話したかは絶対に伝えるから。」
まさか石田君から断られるとは思ってなかった。
「えっ、でも。」
「いいから。松本さんはゆっくりしてなよ。さぁ、佐々木君行こうか。」
「ええ。そうしましょう。」
何で私はついていっちゃだめなんだろう。でも石田君は何を話したか教えてくれるって言ったんだ。絶対に教えてくれる。
だからこそ石田君が戻ってきてからの対応がちょっと悲しかった。
「松本さん、狩りに行こうか。」
ううっ、めっちゃ微笑んでる!やばい!癒される!!
「うんっ!」
しまった思わず普通に元気いっぱい答えちゃったよ・・・。そうじゃないでしょ私。
「って、何話してきたのかちゃんと教えてよね!」
「あー、忘れてなかったか。」
・・・忘れかけてたけどね。
「忘れるわけないじゃん。」
「分かった。ちゃんと説明するよ。」
石田君が困ってるんだったら私だって力になりたい。そのためには何が起こってるのかを知らなきゃ。
「うーん・・・どういう風に言っても一緒だから簡潔に言おうか。佐々木君は俺をここから追放したいみたいだ。」
・・・石田君を追放?何を言ってるの?
「何考えてるの佐々木君は!そんなこと私が絶対させないから!!」
絶対にさせてたまるものか。絶対に許さない。
「ちょっと、松本さん落ち着いて。俺としては出ていってもいいと思ってる。いやー、あいつ黒いねぇ。」
落ち着いて・・・冷静になろう。確かに考え自体は許せないけどあまり問題にはならないね。冷静に考えると私が着いて行けばいいんだし。
「ごめん。ちょっと取り乱しちゃった。それにしても佐々木君なんでそんなことを・・・。生徒会長の私を通さずにそんなことをやってるっていうのも許せない。」
「力で支配する素質があるやつさえいなくなれば自分のカリスマ性で学校を支配できる。目立ちたいんだろ、あいつは。」
目立ちたい・・・そんな感じはする。自分の才能で人をまとめることを喜んでいるんだと思う。
「注目されたいってやつはだいたい小物だけどあいつはしっかりと信頼を獲てる。すごいと思うよ。で、松本さんに頼みたいことがあるんだ。」
「頼み?!佐々木君を説得するとか?」
「いや、俺は出て行くから説得とかはいいんだけどさ。松本さんは今回の件に関して何も言わないでほしいんだ。」
何も言わないでほしい?どういうこと?私は頼りにされてないのかと思うと涙が出てきた。
「え、松本さん?!どうしたの?」
「うぐっ、石田君の力になれないんだって思うと・・・涙がとまらなくって・・・。」
「そうじゃないよ。むしろ俺の力になれるのは松本さんだけだ。俺に味方するような言動をするといずれあいつは松本さんの居場所まで奪うかもしれない。そうはなってほしくないんだ。」
「え、私の居場所?」
「そう。俺の仲間だったってだけでも印象悪くなるかもしれないんだ。自分でもっと悪くする必要はないよ。」
「私は石田君に着いて行きたい。」
「悪いけどそれはできない。佐々木君は俺を除いては2番目に強い。1番は松本さん。その気になればまだ松本さんはあいつを抑えられる。まぁ力なんてなくても会長と副会長という立場上対立はしづらい。あいつの独裁をどうにかできるのは松本さんだけだ。」
それはおかしい。花田君だって強いはずだ。
「迅はこういうの無関心だから。いる価値がないと思ったらこの学校なんて捨てるよ。」
「つまりは私の立場を微妙にしないために今回は何もするなってこと?」
「そうなるね。でも1つ約束するよ。いつになるかは分からないけど俺は絶対に戻ってくる。滞在するかどうかは知らないけど離れるにしてもそのときは松本さんも連れていくからね。」
その約束だけで私は嬉しくなってしまった。
「うんっ!待ってるからね。」