第十四話 来客
「失礼します。」
俺が松本さんを呼んでから狩りに行こうと思っていた時に教室に入ってきたのは生徒会副会長である佐々木正義だ。一見真面目そうで生徒全体から支持されている。
「石田先輩少し時間をいただけないでしょうか。」
うん、質問っていう感じではないな。礼儀としての確認であって本音はついて来いということだろう。
「あぁ、いいよ。少々遅れると仲間に伝えてきてからでいいかな?」
もちろんお伺いをたてるつもりで言ったのではない。
「松本会長のことですね。もちろんいいですよ。」
松本さんなら知っていたら何か言っただろうし佐々木の独断ってところか。
松本さんのいる教室まで行く。どうやら佐々木もついてくるようだ。
「松本さん、今日はちょっと狩りに行くのが遅くなりそうなんだ。いいかな?」
「いいけどどうしたの?」
「僕からお話したいことがありまして。」
あーあ、適当に疲れてるからとか言っておこうと思ってたのに。
「私もついて行っていいかな。」
よくない。話が厄介になりそうな気がする。どういう話か何パターンか予想できるがどれも松本さんは反対しそうだ。
「いや、ついてこないで。何を話したかは絶対に伝えるから。」
「えっ、でも。」
「いいから。松本さんはゆっくりしてなよ。さぁ、佐々木君行こうか。」
「ええ。そうしましょう。」
向かったのは屋上だ。鍵は持っているらしい。
「少々風が冷たいですが我慢してください。」
そりゃ10月だしな。
「さて、用事ってのは何だ。はやくしてほしいんだが。」
「単刀直入に言うとですね、あなたにはこの学校を出ていってほしいと思ってるんです。」
やっぱりそうだったか。これは連れてこなくて正解だったな。
「ほう、それは全生徒の総意かな?」
「いえ、ですが最近生徒の間で石田先輩が怖いと言う者が増えてまして。投票を行ってから決めます。あなたに残っていてほしいという人が多ければもちろん残ることはできますよ。」
「なるほどね、確かに1人だけ大きな力を持っていたら恐怖しても仕方はない。それにしても俺に残ってほしいという人ねぇ、心当たりがないな。荷物をまとめておくよ。」
「まぁまぁ、先輩と個人的に関わりはなくとも先輩を頼りにしている生徒もいるのではないでしょうか。」
「それはそれで不愉快だ。別に俺は正義の味方じゃないんだ。何かあっても自分と友人の命を最優先にするよ。それとこの話は教師の承諾を獲てやっているのか?」
「ええ、皆さん快諾してくださいました。」
教師でも教育云々言ってられんということなのかそれとも1人の生徒より、より多くの生徒が大事ってことなのか。
「それはよかった。それで投票はいつやるんだ。持っていく物なんてほとんどないから俺はいつでもいいんだが。」
荷物をまとめるとかノリで言ってたが別に持っていく物なんてない。
「3日後に行います。実際に出ていっていただくのはその翌日になりますね。」
「俺が出ていくことは君の中では決定事項のようだ。すでに結果は決められているとか?」
「まさか、そんなことはありませんよ。では3日後また会いましょう。」
結果は決まってるんだろうな。俺が2日で根回ししても開票の時点で細工されて終わるはずだ。
さーて狩りに行くか。どうやって説明しようか。とりあえず教室行こう。
「松本さん、狩りに行こうか。」
スマイル6割増しっ!(※当社比)
「うんっ!」
おお、ごまかせた。
「って、何話してきたのかちゃんと教えてよね!」
「あー、忘れてなかったか。」
「忘れるわけないじゃん。」
「分かった。ちゃんと説明するよ。」
さて、どうしたものか。