第八十五話 それぞれのその後
【冷泉冴凪】
世界にあの混乱が訪れる前の冴凪は姉と一緒に暮らしていた。その頃はバイトをしたりゲームをしたりして過ごしていた。これは平和に戻ってからの冴凪とその姉の会話だ。
「それにしてもあんたみたいな糞ゲーマーがあんな騒がれるくらいの強い魔法使いになっちゃうなんてねー。まぁ、今では糞ゲーマーに逆戻りだけど。」
ポテチ片手にゲームしながら冴凪は答える。
「んー、ネトゲで魔法系のジョブもこなしてたからね。立ち回りはばっちしなわけだよー。あー、ポテチうまー。」
「我が妹ながらほんっとにだらしないわ・・・。あんたそんなんでよく副団長とかできてたねー。」
「実質仕事なんてなかったからねー。敵に魔法ぶっ放つだけだよ。お姉ちゃんこそよく生きてたね。」
「まぁねー。逃げに特化してたから勝てないやつからは絶対に逃げてたし。」
「ふーん・・・。」
【神】
「いやー、秋人君がいなかったらどうなってたことか。まぁ最悪僕が出張ればよかったんだけども。」
「主はそういうのはお嫌いなんでしょう?」
「その通りだね、リリィ。僕はあいつみたいに自分が活動するために人を犠牲にするなんて無理だよ。」
「ふーむ、主はあいつが出てくることを予想できていなかったのですかぁ?」
「うーん、僕は最初魔王軍の気まぐれだと思ってたんだよ。あいつが絡んでるなんて知ってたらそもそも人間に解決させようとはしてないよ?恥を忍んでもっと偉い神に頼んで解決してもらってたさ。」
「じゃあせめて絡んでると分かった時点で頼めばよかったのでは?」
「う・・・それを言われると弱るね。あの段階ではまだ人間に処理できるんじゃないかなって思ってたんだよ。憑依できる時間も短いようだったしフルパワーじゃなかったし。」
「あの段階で元大魔王に匹敵する力だったんじゃないですかぁ?そりゃまさか自分の加護を受けた人間に憑依されるとは思ってなかったんでしょうけど。」
「うん、本当にすまないよ。せめてあの最終決戦の前にでも他の神に頼めばよかったねー。セレンの言うようにあれは予想外だったよ。」
「そうですね、主あの後こってり叱られてましたもんね。」
「そうだよ。あの爺さん全力でぶん殴ってくるからね!?死ぬかと思ったよまじで。」
「あなたは死なないでしょう。」
「まぁ、あれだね。彼らの未来に幸あらんことを。」
「何で唐突にかっこいいセリフでしめようとしてるんですかぁ?」
「いや、ちょっ、今のとこで終わりでいいじゃん!何雰囲気台無しにs・・・
【九郎】
元の世界に戻った九郎は先代大魔王として腐りきった現状の魔王政権をぶち壊しに行っていた。『魔王』であって大魔王ではないのだ。どうしたら大魔王になれるのかは解明されてないが恐らく大魔王になることを承認する存在がいるのだろう。秋人が大魔王になれたのは偶然認められたからだろう。
魔王の国に着くとそこで兵士に止められた。
「貴様、何勝手に通ろうとしてるんだ。身分証を見せろ。」
「すまぬ、私は身分証を持っていないのだ。」
「ふむ・・・何か身分を証明する物があれば通れるのだが。そのような物持っているわけないな。ハハッ。」
この兵士の言った身分を証明する物というのは偉業を認められるなどして魔王から受けた勲章などを差す。他にも特殊な役職に就いている証や他国の有力貴族の家紋が入った何かでも良いことになっている。基本的にそんな物を持っている人物は少ない。だから兵士は笑ったというわけだ。ちなみに全ての国で使える身分証というのはなく各国でそれぞれの身分証があるというだけだ。
「ふむ、これでいいか?」
そうやって見せたのはエクテリア王国の紋章である。元々はエクテリア王家の間で受け継がれてきた物だが九郎が支配するようになってからはその半分だけを勇者の血筋が受け継ぎもう一方を九郎が持っていた。
「これはっ・・・エクテリア王陛下でしたか。ご無礼を謝罪申し上げます。」
そう言って兵士は跪く。現エクテリア王家は勇者の一家でその力も強く護衛も付けずに出歩くこともしばしばあるので彼は九郎をエクテリア王だと思ったのだ。実際には大魔王の方なのだが。大魔王は力を失い姿を消したという話は有名になっているのでまさか目の前にいるのがその大魔王だとは思わまかったのだろう。
「うむ、前持って連絡できずに悪かったが魔王様にお会いしたい。取り次いではもらえぬか?」
「分かりました。少々お待ちください。」
番を他の兵士に替わってもらい走って魔王城に向かっていく。
しばらくすると魔王を連れた兵士が戻ってきた。
「まさか魔王様が直接来て下さるとは。そのようなことせずとも私が向かいましたのに。」
「貴様のような不審者を我が城に入れるわけにはいかんのでな。ただでさえ人間どもとの戦闘で減った兵士をこれ以上死なせると他国に攻め落とされるかもしれぬ。」
(やはりバレたか。元々正面から潰す予定だったから構わんが。)
「不審者とはひどい物言いだな。」
「エクテリア王の持っているはずの紋章を持っている貴様を不審者と呼ばずなんと呼べばよいのだ?」
「俺はこれの正統な所持者だぞ。」
「私はエクテリア王を知っているが貴様とは似ても似つかんわ!」
「いや、そっちじゃなくてだなー。こういうことだよ。」
「闇の衣」
「!?大魔王は力を失い消えたはず・・・これはどういうことだ。」
「力を取り戻したというだけさ。それにしても俺がいない間に貴様のような小物が王座についているとはな。」
「ではまさか本物の・・・大魔王九郎!?」
「ああ、そういうことだ。俺の居ぬ間に好き勝手してくれやがって。俺ならあんな神の言うことは聞かなかった。」
「くそっ!だが貴様はもう大魔王ではないはずだ!ならば私にも勝機はある。」
「そんなものはない。3秒以内に跪けば命だけは助けてやろう。」
「3」
天高く剣を掲げる。
「2」
金色のオーラが剣を包み込み、殺気が迸る。
「1」
素早く魔王が跪く。
「よし、今日からこの国は俺が支配する。」
そうして大魔王九郎の支配が始まる。
九郎の話が長くなりすぎた・・・こうなるとわかってれば九郎単体で話書いてました・・・。おかげで秋人たちの話を予定より伸ばさなきゃいけなくなってしまった。あ、エクテリア王国の王は人間じゃないです。人間は滅んでいますので。人間っぽい姿の何かですね。人間が滅んだのは疫病をばらまく魔物のせいです。それ以外で九郎がいて人間が滅ぶ理由を思いつかなかった・・・。
九郎が秋人より大魔王してる件