第七十八話 チェイス
「第3パーティー大通りを走行中。賊は第1パーティーの方へ曲がりました。」
今俺たちは路地を走っている。第1パーティーは三羽烏、第2パーティーが俺たち、第3パーティーは北風の騎士団の第3位のパーティーだ。
「了解、賊を捕捉。すぐにショートワープで追い付ける。一旦チャットを切るぞ。」
春川さんの方に行ってしまったのが運の尽きだ。ことスピードにおいて春川さんに敵う人なんてそうそういない。
「すまん、トラップアイテムを使われた。脱出に手間取りそうだ。」
「その先にショッピングモールがあったはず。私たちがそこに追い込むから第3パーティーはショッピングモールで待機しといて。」
冷泉さんが指示を出す。本来第1パーティーが使うはずだったルートに移り追跡する。確か相手は闘将だったはずだ。辻斬りについて書いたスレに二刀流だったという目撃情報があった。ちなみに生存者は団長のように生存系のスキルや身代わりとなる装備を装備していたからだという。
敵の背中が見えた。俺のパーティーは比較的機動力に優れたメンバーが集まっている。冷泉さんも風魔法のフライを使えばそれなりの速度で移動ができる。
俺と遥が中心となって追いかけ松本さんと冷泉さんが逃げ道を無くす。
敵は想定していたショッピングモールへ駆け込む。入った瞬間に第3パーティーが攻撃を開始したが敵は無傷なようだ。俺たちも追いかけ武器を構える。
それにしても闘将なんて紙装甲な職業でなぜ無傷なんだろうか。おそらく冷泉さんの魔法は効果があるだろうが、それでもそれ以外の攻撃が効かないなんてありえないだろう。迅は例外として。
そう、迅といえば第3パーティーは迅と誠一さん、あとは他パーティーから引き抜いた神官さんと召喚術士だ。
「おいお前、なんで辻斬りなんてやってんだ。」
春川さんが問いかける。
「やっと聞いてくれたね。実は君たち、っていうか秋人君だね、そう秋人君を誘き寄せるためさ。」
「俺を?そういえばお前の声どこかで聞いたな・・・。」
「おっ、覚えててくれたのかい。俺だよ俺。妹さんの学校で君をぼっこぼこにしたんだよ。」
「なるほど、それで声に覚えがあったのか。そのためにたくさんの人間を殺すなんて許せねぇな。お前を殺して亡くなった人々の魂を慰めるとしよう。」
そう言って俺は敵にアイテムボックスから取り出した適当な剣を投げる。と、奴に届く前に切り刻まれた。
「なるほど、設置型のスキルってとこか。」
「ああ、剣域って言ってね。こいつがもともと持ってたスキルだよ。」
「異次元の手」
春川さんのオブジェクト破壊スキル。トラップや設置型スキルにも効果があるらしい。
「剣域なんていう面倒なスキルも切れたみたいだしそろそろ戦おうか。」
「ちょっと待ってくれアキト君。そいつがどれだけ強いか分かってるのかい?」
いつの間に現れたのか神が尋ねてくる。
「あぁ、前回ひどいやられ方したからな。」
「じゃあこれは知ってるかい?あいつは僕の兄で魔物たちが元々住んでいた世界の神なのさ。」