夕陽ヶ丘爽太の(非)日常 The early birds catches the worm.#1
3000字より少し足りない気がしますが、ご容赦を。
「ん………ふぁ…?」
ピッピッピッと騒がしく鳴る目覚ましに掌底を食らわせ、ベッドから体を起こす。
朝っぱらから体を伸ばしてみると、案外気持ちの良いもんだ。
俺、夕陽ヶ丘爽太の朝は早い。今だって5時半だ。普通の高校2年生だったらまだ寝ている時間だろう。
俺は別に朝学習に目覚めた訳じゃない。まぁ、受験生だったらこのくらい時間に起きて勉強するのもいいかもな。
…と、話が逸れてしまった。俺が朝早い理由は…
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「にぃーっ! 醤油とってよ〜! ゆーじゃ届かないぃーっ!!」
「あら、お兄様。お口にご飯粒が付いていらっしゃしいます。…もう、そこじゃありませんよ。ふふ、朝日が取って差し上げますから、じっとしていて下さいな」
「夕日っ! それ醤油じゃないからっ! 墨汁、ぼくじゅうだからっ!? ……って、朝日っ! お前、近、近いぞっ!?」
「え〜、ゆーは分かってたに決まってるじゃん。元々にぃの味噌汁に投入する予定だったんだから〜」
「お前、俺にいったい何の恨みがあんだよっ!?」
「プリンっ!! 昨日にぃに食べられたプリンの恨みじゃ〜っ!」
と、まぁこんな訳だ。朝のくそ忙しい時に、コイツらがじゃれついてくるお陰で、家事をする時間が削られてしまう。だから、俺は朝早く起きてする事しないといけないのである。
それにしても、つくづく思う。俺、夕陽ヶ丘爽太の朝は騒々しい、と。
あと、因みにこっちの『にぃ』という、一歩間違えるとどこぞの仮面ライダーに出てくるシ○ッカーの鳴き声になってしまう呼び方で、俺を呼ぶ残念な子が、夕陽ヶ丘夕日である。俺の愛すべき妹の一人だ。
活動的な性格を表しているかのような茶色のポニーテールに、栗色のくりくりとした真ん丸の瞳が特徴的だ。体型は全身がきゅっと引き締まっており、健康的な印象を与える。
だが、胸まで引き締まる必要はないだろうに…、断崖絶壁、アイツはロッククライミングでもする気かよっ!
「にぃ? 今失礼なこと考えなかったぁ?」
「ひっ!」
じろっ、と夕日の鋭い眼光が俺を貫く。
何でも夕日は俺が何考えてるか、雰囲気で分かるらしい。幼少期からいる妹の能力とか言ってるが、女の勘は本当侮れん。はぁ、これだから、女は怖えぇんだ。
「お兄様? 私のことは放置プレイでしょうか?」
「朝日っ!? お前一体、何処でそんな言葉覚えたんだっ!」
これまで沈黙していたもう一人の妹が、何か言い始めたぞっ!?
「お友達です。彼女は色々と教えて下さるのですよ。著名な方の名言とか、えっ…と例えば、『お兄ちゃん、愛し合っているなら兄妹とか関係無いよね♪』『お兄ちゃん、お兄ちゃんhshshshs』」
「うん、お前今すぐ縁切れっ! その友達からは、何か嫌な予感しかしないっ!!」
一体、その友達はうちの妹に何させる気だ。…あんな危険な発言をした少女も、俺の可愛い妹である。
夕陽ヶ丘朝日。夕日の双子の妹である。
普通、朝日と来たら、夕日と名付けるもんだが、うちは夕日が来て、朝日になった訳だ。何処かおかしな気もするが、スポーツ選手にも次男なのに一郎とついている人もいる。深くは考えないことにしよう。
朝日は夕日と違って、お淑やかで淑女然としたお姫様だ。ふっくらとした茶色のサイドテールに、上品な微笑みを湛えているのが特徴的だ。体型は出るとこが出て、締まるとこは締まっている。所謂、ぼん、きゅっ、ぼーんっ!! というやつだ。
そういや、朝日の地母神のような胸に飛び込んでいった奴を、いつも叩き落としていたのは俺だったっけな…。
まぁ、それは置いておいて。………しかし、何だろうな、これは。
同じ双子の姉妹だというのに、こんなにも胸に差が出るなんて…。正に胸囲格差社会というやつか…。
「…そういや朝日、お前ご飯粒どうやって取ろうとしてた?」
「はい? えっ…と、唇を使ってですが? 何か問題がありましたか?」
「………、」
くっ、眩しくて何も言い返せない――ッ!
「あ…、因みにお友達は関係無いですから。はいっ♪」
「………(汗)」
朝日は時たまこんな天然なのか、狙ってるのか分からん発言をするときがある。たが、今回は狙ってるんだろうな、今の発言で分かった。
それに、彼女のある一面から考察した結果でもあるけどな…。今は言わんでもいいだろう。
「にぃ! なんで、ゆーのプリンを食べたっ!」
「ってか、まだその話続いてたんすねっ!? ゆーさんっ!」
「ゆーさん言うなぁ!!」
「ぐふっっ!?」
夕日の右ストレートをもろに受け、床とキッスしてしまう俺。何だか情けねー、兄の威厳とかズタボロじゃないっすか。いや元々そんなものがあったかすら定かじゃないけどさ。
あ、因みにプリンは美味しく頂かせて貰いやした。濃厚な生クリームと、ほんのりしょっぱいキャラメルが良い味出してましたよ、はい。
「お兄様、夕日お姉さまも、のんびりとしていて宜しいのですか? 特に夕日お姉さま。私はお姉さまが本日の日直と聞き及んで下りましたが、まだ行かなくても宜しいのでしょうか?」
「あ! そうだった。すっかり忘れちゃってたよ。ありがと、朝日♪」
「いえいえ、私は当然のことをしたまでですから。別に褒められるようなことなど何も…」
こうして然り気無く夕日の矛を納めてくれるのだから、朝日は大したものだ。 何故か俺のときだけ、夕日は暴れるので手の施しようがない。うーん、そんなとき颯爽と現れ夕日を止める朝日は何処から見ても姉にしか見えない。
「じゃ、行ってきまーす。にぃ、プリンちゃんと買ってきてよねっ!」
そう言って、夕日はバタバタと出ていってしまった。…まぁ、今度は俺に否があることだし、プリンは買ってきてやろう。
「朝日、夕日に着いていってくれ。どうも、アイツ一人じゃ見てられん」
「お兄様はお優しいのですね、ふふ」
「はぁ、兄をからかうんじゃない」
「分かってますよ、お兄様。私もそのつもりでしたし、ふふ」
くるりと回った朝日は、まだ何処かおかしそうに笑う。
「鼻にマヨネーズが付いていらっしゃいます、お兄様♪」
そう言って、朝日は俺の鼻の上を指で掬う。その指には、朝食のサラダに使用したマヨネーズが結構な量、付着していた。
「って夕日の仕業かーっ!」
やはりプリンを根に持っていたようだ。こんな子供っぽいことをする奴は、夕日以外考え付かない。
「じゃ、私も先に行っていますね」
ペロリとマヨネーズを舐めた少女を尻目に、俺は鼻部の皮膚感覚がどうにかなってしまったのではないかと考えていたのだった。
何故気付かないんだ、俺っ!?
あぁ、今日も今日とて、夕陽ヶ丘家の朝は騒がしい――
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朝日と夕日が混ざりそうになりますよ、本当に。
さて、ここから登場人物をじゃんじゃん増やしていきますよ〜。