4.デルイ村
朝起きると二百十日は廃村を出て人里を探すことにした。
現在の太陽の方向が山側、反対方向が谷側になっている。
地球と同じなら谷側が西になるはず。
廃村を回って使えそうな物がないか確認したが何も無かったため、そのまま廃村を出て山を下った。
メニューを見るとレベルが上がっていた。
【ステータス】
LV:12
HP:430
MP:1668
STR:41
INT:121
VIT:56
DEX:31
LUK:50
熊1匹でLV11上がっていた。
LV1につきステータスはLUK以外+1上がっている。
(そういや人に会ってバカみたいに多いスキルを見られたらまずいと思って隠蔽とっていたんだっけ)
隠蔽を使用してみるとステータス画面の横に表示するかどうかのチェックボタンと見せた時の数値入力エリアが出た。
レアスキルは全て隠す。
魔法はLVを下げて残しておくが、どれがどのLVで覚えられるのかさっぱり分からないためどこかでボロを出しそうだ。
ステ自体は高いと思うが他人のステが分からないので現時点ではそのままにしておく。
他人に会ってから変えればいい。
【隠蔽時スキル】
火魔法2、風魔法3、水魔法4、土魔法1、光魔法1、付与魔法3、結界魔法3、空間魔法3、回復魔法4、生活魔法3
剣術1、槍術3、回避3
魔力強化3、魔力回復3、体力回復1、魔力感知3、消費MP減少3、無詠唱
鑑定3、看破1、罠発見、罠解除、危機感知2、契約2、調教2
料理1、調合1
共通言語、共通文字
山を下っている途中で犬5匹に出会う。
この犬もでかい。
セントバーナードよりも1周り以上でかい。
「ウィンドカッター!」
遠距離からウィンドカッターを連射して犬を倒す。
2匹残り、こちらに走ってきたので今度はフリーズランスを2発使用する。
生かしたまま捕らえようと思ったが、2匹とも完全に凍結してしまった。
(契約と調教を試したかったんだが・・・)
どこまで調整すれば殺さないで足止めできるか分からないから仕方ないとは言え完全に凍るとは思わなかった。
死体はアイテムボックスに放り込み、また山を下り始めた。
昼頃になり川に出た。
川岸が深い崖になっていて歩い渡るには面倒だったので空間魔法の瞬間移動を使用して反対岸に飛んだ。
瞬間移動は視界内の位置に一瞬で飛ぶ魔法だった。
かなり使い勝手がいい。
訓練すれば戦闘中に敵の裏に飛んで武器で切りつけられそうだ。
ただ戦闘魔法杖を持っているとは言えわざわざ敵に接近する気はないが。
ここまでで犬12匹に会っているが全て魔法で倒している。
契約と調教はいまだに試せてすらいない。
戦闘魔法杖に付いている刃は足元の草刈専用になっていた。
「よし、この杖は草刈丸と名づけよう。」
川を渡ると木が減りそのうち草原に出た。
一気に瞬間移動で飛ぶ。
6回瞬間移動すると視界に建物が入った。
村に見える。
はやる気持ちを抑えて村まで歩いていった。
村に近づくと様子がおかしい。
人が一人も見えない。
焼け跡がついている建物も見える。
そのまま入り口から村に入るとやはり人の気配がない。
村の中央まで来たが誰も出てこない。
仕方ないので村の中では大きい教会のような建物の扉を開けると大広間のようになっていたが誰もいない。
「すみませーーん。」
声を出してみたが待っても返事がない。
教会から出て隣の建物に入る。
「すみませーーん。」
と声をかけながら扉を開けたが誰も出てこない。
誰もいないのか?
そのまま中に入って次々と扉を開けてもやはり人がいない。
外に出てその隣の建物の扉を開けた。
「あら?もしかして旅人?」
扉を開けると正面から声をかけられた。
部屋の中には椅子に座った若い女性がいた。
亜麻色の髪をショートボブくらいの長さにしてメガネをかけていた。
年は20歳ごろか?
そして
左手と右足が無かった。
椅子の横には棒がある。
「もうここにはうちしかいないわよ。みんな北のフレイクに逃げたわよ。」
「逃げた?」
「そう、帝国兵が村を襲ってきてなんとか防いだけど村の境界を壊されたので村を放棄する事にしたの。」
「帝国兵?境界?」
「帝国はオルディスでしょ、西の戦バカの国。境界は村に設置する魔物避けの設備でしょ。」
「ああ、すまん。俺常識無いから色々説明してくれると助かる。」
「荷物も持ってないから帝国に追われて逃げてきたかと思ったんだけど違うわね。」
女性はにらむように俺の顔を見つめた。
「そういやなんで一人だけ残っているんだ?」
「この怪我でしょ。うちは捨てられたわよ。」
「捨てられた?」
「そう、この手足じゃもう魔法も敵に対して使えないしね。ここで薬屋もやってたんだけど薬も全部持っていかれちゃったわよ。」
「その手足は帝国兵にやられたのか。」
「そうよ。」
俺は思いついた事があったので女性に近づき
「ちょっといいか。」
「何?」
手をかざし
「フルヒール!」
回復魔法で全HPを回復するフルヒールを使ってみたが女性の手足は治らなかった。
次に
「リフレッシュ!」
状態異常を治す魔法を使ったが変わらない。
「状態異常解除!」
光魔法の同じく状態異常を治す魔法でも手足は変化なかった。
「あなた、何者?」
女性が厳しい顔をしていた。
「いや、手足を治そうとしていたんだが。」
「そこじゃなくて状態異常解除は光魔法のLV3の魔法よ。
使えるのがおかしいと思って看破してみたら何このスキルの数・・・」
看破!?ちょっと待て!こっちは隠蔽最大のLV3だから看破の最大LVの3持ってても防げ・・あれ?
もしかして同じLVだと防げないのか?
女性を鑑定眼で見ると
【名前】:ラーチェル
【スキルポイント】:19pt
【種族】:人
【ステータス】
LV:14
HP:97
MP:180
STR:14
INT:42
VIT:18
DEX:22
LUK:22
【状態】
正常
【スキル】
風魔法4、水魔法1、付与魔法1、回復魔法3、生活魔法3
魔力強化1、魔力回復1、詠唱短縮
鑑定3、看破2+2
料理1、調合4
共通言語、共通文字、古代言語、古代文字
鑑定眼2、スキル遺伝、知識の書
ステ低っ、じゃなくて看破2+2ってなんだ!?
あと状態は手足が無くても正常なのか。
「看破2+2ってなんだ?」
「やっぱり鑑定じゃなく鑑定眼持ってるじゃない。看破の+2はこのメガネの効果よ。」
「ん?鑑定と鑑定眼はやっぱり違うのか?説明見ると鑑定はアイテムだけのようだったが。」
「そこから!?」
「ああ、だから常識知らないって言っただろ。」
「今までどうやって生きてきたの?信じられない。
鑑定はアイテムの鑑定と生物はステータスの数値と状態のみね。鑑定眼だと名前や種族、スキルまで見られるのよ。」
「そうなのか。」
「さっき言ってた看破の+2は?」
「このメガネに看破が付与されているのよ。うちの家に代々伝わってきた道具でおかげで隠蔽じゃうちの看破は防げないわよ。」
「ちょっと待て、付与で効果が上がるなら攻撃魔法や体術も上がるのか?」
「付与魔法LV5を持ってるのにそんな質問するの?ほんとにおかしいわね。魔法は例えばウィンドカッターを付与した道具を身につければ使えるようになるけど、元から使える場合は変わらないわ。
体術は身体強化は上がるわ。同じように魔力強化や魔力回復も上がるわね。でも剣術や槍術は上がらないって言われてる。看破のような単純なスキルは素直に上がるみたい。ただ付与したら元の使い手より劣化したLVで付与されるからこのメガネは看破で付与できる最大の物よ。」
つまり看破のレベルが合計で4というのは早々ないって事か
「隠蔽と看破が同じレベルの場合は?」
「魔力の高さで決まるわ。」
つまり俺の場合はIntがバカみたいに高いからまず大丈夫だと言う事か。
そういや隠蔽が付与されている腕輪があったからそれを身につければいいのか。
でもそんなもの身につけていたら隠蔽していますって言ってるようなもんだな。
窓から外を見ると夕方になっていた。
さて、これからどうするか。
この女性からはもっと話が聞きたいが、余計なスキルを知られてしまった。
このままこの村に置いていっても他に知られる事はないと思うが、他に打つ手もある。
「なあ、その手足を治してやる代わりに俺の奴隷になる気はあるか?」