好感度♡
今回お話に出てくるのは甘~いキャンディ!
え?タイトルと関係あるかって?
もちろん!
それでは、甘いキャンディと好感度のお話をどうぞ。
少年は愛に飢えていた。
両親は自分の成績のみを愛し、クラスメートは自分の明るさだけを求めていた。
弱音を吐いて、それでも寄り添ってくれるような真の仲間が少年にはいなかった。
今日も少年は、ため息をつきながら学校帰りの通学路を歩く。
友達とは途中で別れるので必然的に一人になるのだ。
(やっぱり、結局僕は誰にも大事にされないんだ。)
表面だけ明るくて、成績が良い奴なんていくらでもいるだろうに。
僕以外でも代わりは務まるのだ。
その時、少年の背後から声がした。
「落ち込んでる人み〜っけた」
振り向くと、そこには同じ年齢くらいの男の子がいた。
片手に瓶を持ち、ニコニコと少年を眺めている。
どこかで会ったことがあるような気がしたが思い出せなかった。
「はじめまして…?それ、何持ってるの?」
おずおずと少年があいさつすると、男の子は瓶を見せた。
中でカラフルなキャンディがカラコロと音を立てる。
「これ?」
男の子はアオと名乗ると瓶のことを説明し始めた。
「このキャンディはね、不思議な事に自分の好感度が見れるんだよ。どれだけ自分が大切にされているか分かるってわけ。」
少年はさっきまで自分が悩んでいた事を悟られたような気がしてドキリとした。
「キミは食べてみる?」
瓶を差し出して男の子は聞く。
少年は瓶を男の子に戻して断った。
「いいよ、僕は自分が好かれているかどうかなんて見えなくても分かってるから。」
男の子は少し目を見開いたが、
「ふーん…そっか」
と呟くとどこかへ歩いて消えてしまった。
少年はいつも通り家に帰った。好感度が見えるキャンディ?バカみたいだ。きっと嘘に違いない。
それに…
本当だとしても僕は見たくなんかない。
次の日、少年が学校から帰っているとアオが瓶を持って立っていた。
「あ、来た来た」
アオは少年に駆け寄ると瓶をまた差し出した。
「食べてみればいいのに。なんで食べないの?」
少年は自分の事を語る元気もなかった。
「いいから…もうほっといてよ」
ロクにその日は話をしないで少年は帰宅した。
その次の日も、その次の日もアオは帰り道に現れては少年にキャンディを差し出した。
「いい加減しつこいよ、なんでそんなに食べさせたいんだよ」
断ってばかりだった少年は、しびれを切らしてアオに聞いた。
夕日に照らされたアオはほほ笑んでいた。
「キミに見て欲しいから。どれだけキミが愛されているかを。」
その日、初めて少年はアオからキャンディを一粒貰った。
貰ったものの、食べる勇気は湧かない。
毛布にくるまって考える。
僕の代わりなんていくらでもいるから…見なくたって分かるから…
自分の声が耳の奥でこだまする。
だけど、アオの笑顔も同時に思い出す。
「どれだけ僕が愛されているか…」
僕は机に置いたキャンディを口に入れた。
そして朝、僕はリビングで朝食を食べる。
「おはよう」
両親の挨拶の声。
ドキドキしながら、両親のほうを見る。
真っ赤な大きなハートが頭の上に浮かんでいた。
これが、僕への愛…?
本当だったんだ。それに、こんなに大きくて真っ赤なハート…
両親は僕の成績じゃない、僕自身をちゃんと愛してくれていた。
「いってきます。」
いつもより幸せな気持ちで僕は家を出た。
学校に着き、教室に向かう。
両親の好感度が見られたならクラスメートのも見れるんだ。
心臓がドクドクとなる。
みんなは…僕のこと…
大きく息を吸って教室の扉を開ける。
ガラッといういつもの音。
「おはよう」
挨拶をすると、一斉にみんなが振り返った。
皆の頭上に浮かんだ赤いハート。
目を丸くする僕に、クラスメートの男子が声をかけてくる。
「おはよー!なぁ、こっち来て!コイツ昨日さー…」
みんなは僕の明るさだけじゃない、僕自身をちゃんと好きでいてくれた。
今まで自信がなかったのは僕だけだったのだ。
初めて心から笑えた気がした。
その日の放課後、僕はアオにお礼を言うために友達とは帰らず真っ先にいつもアオがいる場所に向かった。
アオは空っぽの瓶を抱えて立っていた。
「あ、アオありが」
最後まで言葉が言えなかったのは、アオの頭上を見たからだった。
真っ黒の、大きなハート。
何も言えなくなった僕をアオは笑顔で見つめる。
「食べてくれたんだね。キャンディ」
どこかで見たことがあると思った
その顔、仕草、話し方。
「思い出してくれた?」
ニコリと笑うコイツの顔は、目の奥が笑っていない。
僕の32人の僕らの教室には空いている席が1つある。
僕が主犯でイジメた葵の席。
クラスメート全員でやった遊び程度の気持ちでやった。
「葵は◯◯◯ってあだ名がピッタリだよな〜」
僕が喋るとクラスメートはドッと爆笑した。
ダル絡みしたり、物を隠したり、その度に困った顔をする葵を見るのがその時は楽しかった。
そのせいで、葵は自殺した。
学校からも葵の親からも、イジメについては言われなかったからバレなかったんだと思う。
その時は取り返しのつかないことをしたと思ったけれど、日が経つにつれて気にしなくなっていった。
でも、心の中ではクラスメートが自分のせいで死んだかも知れないという思いでいっぱいだった。
だからこそ、僕はこんな「本当の自分は愛されているのか」に疑問を持ったんだ。
バクンッバクンッバクンッ
心臓が音を立てる。
冷や汗が流れる。
葵は瓶を持って僕に近づいた。
「このキャンディさー、便利なんだけど一人が食べちゃうと、いくら瓶が満タンでもぜーんぶ消えてなくなっちゃうの。」
逃げたいはずの僕の体は拘束されたように動けない。
助けを呼ぼうにも声も出せない。
葵はおかしそうに笑って言った。
「でもね?好感度が高い人ほど、美味しくなるんだ。」
僕の腹のあたりに、葵はグッと空の瓶を押し付けた。
「空になったキャンディは補充しなきゃね。」
ドサッと少年の服が乾いたコンクリートの床に落ちる。
空の瓶の中にはたっぷりのキャンディが入っていた。
葵は瓶の蓋を閉めると呟いた。
「あと30人。」
最後まで読んでくださりありがとうございます!
「あと30人」
クラスメートが32人で、そこから葵と主人公の2人を引くと…((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
他の作品も読んでくださると嬉しいです!
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m(_ _)m




