04
恋愛は、いつも長続きしなかった。
どれも最初は楽しくて、どこか夢を見ているようで、夜に電話し合う声のトーンまで甘くて……。
でも時間が経つほどに、私はどんどん彼のことを考える時間が増えてしまう。
会いたくて、喜ばせたくて、尽くせば尽くすほど「重く」なる。
可愛い愛される彼女を目指しているはずなのに、
いつの間にか、
いつだって、
相手にとって都合のいい女になっていた。
「これじゃだめだ」って思って、次こそは自立した関係を築こうとしたこともある。
相手に頼りすぎず、自分の時間もちゃんと持って、恋愛の比重を下げて…。
すると今度は「冷たい」「可愛げがない」なんて言われてしまう。
どうすればいいの、どこに立てばいいの。
「ちょうどいい彼女」が、私には分からない。
七瀬を見ていると、胸の奥がざわつく。
彼女はいつだって自然で、肩に力が入っていない。
笑うときは笑って、甘えるときは素直に甘えて、六花さんに大事にされることを、当たり前のように受け取っている。
あんなふうに誰かに大切にされる姿は、私には遠い。
眩しくて、羨ましくて、憧れで、胸をかきむしられるような気持ちになる。
ちっぽけなプライドが、そんな私の本心を必死に七瀬に隠させる。
「私だって、ちゃんとやれてる」
「誰かのための、可愛い恋人に」
大切に思う人の前ほど「しっかり者」の笑顔の仮面を被るのは、もうとっくに癖になっていた。
***
スマホが震える。
遥さんからの短いメッセージ。
《今日、空いてる?》
挨拶もない、用件だけのあっさりしたもの。
私は何も考えず《空いてます》とだけ返信する。
胸の奥でチクリとしたものが、いつまで経っても消えてくれない。
――楽、なはず、だったのに。
遥さんからの連絡を「待っている」ようになってしまっている自分が、すごく嫌いだ。
***
夜、二人で食事をした後、いつものようにふとした瞬間にキスをされる。
強引ではない、でも断らせない柔らかさ。
気持ちよくて、心地いいのに、最近は胸の奥にざらついた感覚が残る。
「泊まってく?」
笑いながらそう聞かれて、私は今日も黙って頷く。
心のどこかで、今日もまた「都合のいい女」になっている、と自嘲する。
でもその言葉は、声にならない。
何も言わないまま、遥さんの指先が頬をなぞり、髪を耳にかける。
そして、柔らかい唇がもう一度落ちてくる。
「ん……」
脱ぎ捨てた服と、ベッドに沈むシーツの感触。
夜が深まるたびに、私はまた流されていく。
その瞬間だけは、孤独の輪郭がぼやけて、世界の音が遠くなっていく。
与えられる快楽に溺れていれば、それだけで「可愛い」と褒めてくれる。
「……遥さん、」
自分じゃないみたいな、甘えた媚びた声。
彼女はゆっくりと目を細めて笑って、また私にキスをする。
朝が来るまで、何も考えずにいられるその時間に、今日もまた身を委ねてしまうのだった。




