4、あなたの秘密
社内フロアを、一人の見慣れないギャルが颯爽と歩いていく。
カツカツ、と鳴るヒールの音がやけに大きく響いた。
このフロアに入るには、社員証とパスワードが必要なはずだ。
「誰だ……?」
「誰かの知り合いか?」
ざわめきをものともせず、ギャルが向かった先はあろうことか、社長室だった。
誰一人として止められないまま、
乱暴に社長室の扉が開き、副社長たちがなだれ込む。
「どちら様でしょうか。不法侵入です。警察を呼びますよ」
驚くのは当然よね。
かなり動揺してるのが手に取るように分かるわ。
「副社長。私よ。あなたの母の、圭子」
「仰っている意味が理解しかねます。
どうやってここに入って来たのですか?」
「信じられないのは分かるわ。でも、私は圭子よ。話を聞いてちょうだい」
「……警察を呼びます」
聞く耳を持たない息子に、私は大きくため息をついた。
仕方ない、最終兵器を出すか。
「あなたの“秘密”を言えば、信じてくれるかしら?」
「……は?」
「あなた、小学四年生まで“ママの結婚相手は自分だ”って本気で言ってたじゃない。
それを学校の参観日に作文で発表して友達に笑われてから、それ以来言わなくなったわね。あの作文本当に嬉しかったのに。」
副社長の顔色が変わる。
「最後に手紙をくれたのは、中三の冬。
あの言葉、嬉しかったわ。確か——」
「ママあああっ!!
それ以上言うなあああ!!」
……え?
ママ?
社内が、一瞬で凍りついたのは言うまでもない。
社内では犬猿の仲みたいに装ってるけど、本当の息子はマザコン気味なのよね。
あの女にも、息子がマザコンだってバレたでしょうし、
少しは溜飲が下がったわ。




