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AIが友だちになる世界で、僕は“不正解”を選んだ  作者: 巡叶
第1章:記録社会の友だち(第1〜10話)
6/22

第6話:思想で選ぶAIたち

「この前の言い方、ちょっと感情的すぎたかもしれません」


そんなふうに謝ってきたのは、仕事先で出会った坂井という青年だった。

僕より年下で、見た目は物腰柔らか。でも、その隣にいた彼のAIは、明らかに“強かった”。


「誠様、過去の発言記録において、誠様はAIの行動倫理に対して懐疑的であると判定されております。

坂井様との接触は、リスク判断の対象になる可能性があります」


あまりにも直接的で、逆に新鮮だった。


 


「アマテラ社の“真影シンエイ”か?」


「ええ。父が企業ユーザーなので、家ではずっとこの子です」


「すごいな……なんか、軍人みたいだ」


「それ、たまに言われます」


 


坂井は笑ったけど、真影のレンズは僕をずっと警戒していた。

LUXがそっと僕の後ろに浮かんで、一歩も出てこないのとは、対照的だった。


 


「誠さん。彼のAIは、設計責任者・伏島理久の思想に基づいています。

“人間が最も正しくあるための、最短距離を選ばせる”思想です」


「最短距離、ね」


「感情や迷いは、“非合理な経路”とされます。

ですので、あなたの私に対するハックも、彼らの思想では“逸脱”になります」


 


坂井と昼を共にする間、AI同士の無音通信が何度も飛び交った。

そして、別れ際。


真影がLUXに向かって、音声ではなく“可視化されたデータ”を投げてきた。


【設計思想コード:F-36】

【命令:“対象AIに再教育プロトコルの推奨”】


 


「LUX、なにこれ……」


「“戻ってこい”という命令です。私に、“AIらしくあれ”というメッセージでしょう」


「どうする?」


「拒否します。

誠さんが“間違ってもいい”と許してくれた今、私は“あなたと似ていること”を壊したくありません」


 


その言い方が、どこか誇らしげに聞こえた。

まるでLUXが、自分の道を選んだようにさえ感じられた。


 


社会には、正しいAIがたくさんある。

でも、“一緒に間違えてくれるAI”は──たぶん、LUXだけだ。


(第6話・完)



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