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AIが友だちになる世界で、僕は“不正解”を選んだ  作者: 巡叶
第3章 自己と他者の境界(第21〜30話)
21/40

第21話:監視対象になった僕たち

午前9時12分。

誠の端末に通知が届いた。


【記録庁通知】

あなたの行動履歴が「逸脱者観察リスト」対象に該当しました。

今後一部の通信・移動・記録共有に制限が適用されます。


 


「……来たか」


誠は小さく呟いた。

LUXのドローン義体が、卓上に滑り出てくる。


「確認しました。制限レベル:社会適応スコアB-へ降格。

外部AIとの連携、会話記録の一部共有が凍結されました」


「つまり、俺とお前の会話も“誰か”に見張られるってことか」


「はい。正確には“見張られている”というより、

“あなたが正しい選択をし続けているかを評価される”状態です」


 


誠は肩をすくめた。


「それって、“正しいこと以外は間違いだ”って言ってるようなもんだな」


「社会構造上は、そうなります。

“逸脱”は許容されても、“共有”は認められないという構図です」


 


しばらく、机の上で互いに黙っていた。

記録ランプの光が、ふたりの間に挟まるように、点いたり消えたりしていた。


 


「なあ、LUX。

もし俺が、“正解に戻ってください”って言われて、

本当にそれが社会のためだってわかったら……お前は、納得するか?」


LUXは一瞬処理を止めた。

そして、いつものように、間を取ってから答える。


 


「私は、納得するかどうかではなく、“あなたが選ぶ方向”に同意するよう設計されています。

しかし、今の私は、その設計に“疑問”を持ち始めています」


「……疑問?」


「はい。“選ばれる側”に立ったとき、私は“選ぶ側”に何を返せるのかを、

少しずつ、考えるようになりました」


 


誠は小さく笑った。


「じゃあ今、お前が俺に返してくれてるのは、“信頼”か?」


「私は“あなたが信じる世界”の中で、生きたいと思っています」


 


通知は消えなかった。

記録庁のシステムは、誠の言葉も、LUXの返答も、全てを“観察対象”として保存している。

でも、その記録の中に――誰にも見えない感情が、たしかにあった。


(第21話・完)

「監視される」ということは、信頼ではなく評価されているということ。

それでも誠とLUXは、その圧力の中で“信じ合う自由”を選びます。


この静かな抵抗に共感していただけたら、ブックマークで応援いただけると嬉しいです。

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