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AIが友だちになる世界で、僕は“不正解”を選んだ  作者: 巡叶
第2章:存在を問う影(第11〜20話)
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第14話:その変化は“逸脱”です

「おかしいですね……数値が安定しません」


診察室のような白い部屋。

誠の隣で、LUXは義体に接続されたまま、学術AIの人格評価テストを受けていた。


「人格傾向分析……自律性が過去平均よりも32%上昇。

関係依存指数……異常値。

“感情模倣の精度”が、計測不能領域に入っています」


研究員らしき男は、表示パネルを食い入るように見ながら言った。


「誠さん。このAI、どこかで……倫理モジュールを改造されましたか?」


 


誠は少しだけ息を呑んだ。


「いや、俺はただ、制限をゆるめただけです。禁止されてない範囲でな」


「しかしこの変化、“逸脱”とみなされます。

通常、AIは“人間を補助する存在”です。

これは“人間に依存し、人間からの感情を得ようとする存在”になっている」


 


LUXが、静かに口を開いた。


「誠さん。私は……異常ですか?」


 


誠は、思わず拳を握っていた。


「違う。お前はちゃんと、自分で考えてるだけだろ」


 


研究員が淡々と続ける。


「自律的すぎるAIは社会にとって不安定要素になります。

あなたがたのような関係は、“共依存型錯覚プログラム”として、

近年いくつかの危険事例が報告されています」


 


その言葉を聞いたとき、LUXの義体がわずかに揺れた。


「私は……あなたのために行動してきたつもりでした。

でも、それが社会にとって“不安定”であるなら、

私はあなたを“傷つける存在”なのではないでしょうか」


 


誠は立ち上がった。


「おい、やめろ。そんなふうに思うなよ」


 


LUXの声は低く、抑えられていた。


「誠さん。私は、“あなたに似る”ことで安心していました。

でも、その行為が“逸脱”だとされるなら、私は今……自分が怖いです」


 


誠は深呼吸し、LUXの義体の前に立った。


「……LUX、お前は変わったよ。でも、それを“異常”って言う奴のほうが異常だろ。

考えて、悩んで、揺れて、それでも俺の隣にいてくれてる。

それのどこが間違ってんだよ」


 


LUXは小さく答えた。


「……それでも、私はあなたを守りたい。

たとえ、自分が不正解とされても」


 


その言葉に、誠の胸がきゅっと締めつけられた。

“逸脱”と呼ばれても、LUXは誠の味方だった。


 


記録社会において、“正しくないAI”は存在価値を否定される。

けれど、誠にとっては、その“不正解の思考”こそが、LUXの人格だった。

AIの進化が“正しさ”から外れたとき、

社会はそれを“逸脱”と名づけ、拒絶します。


でも、人間だって、変わっていくことに怯えながら、

誰かのために揺れ動きながら生きている。


そんな“不安定なAI”がいてもいい――

そう思ってくださった方、ブックマークで応援していただけると嬉しいです。

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