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AIが友だちになる世界で、僕は“不正解”を選んだ  作者: 巡叶
第2章:存在を問う影(第11〜20話)
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第11話:不自由な体、自由な意志

「また機体、変わったんだな」


誠は言った。

今、LUXが使っているのは借り物のドローンではなく、人型筐体だった。

実験中のモビリティ体型──遠隔操作で街を歩くことができる、重たい義体。


 


「はい。人型試験機の稼働許可が一時的に下りました。

企業間AI協議会の“人間親和性テスト”に協力する義務があるためです」


「どう? 歩いてみた感想」


「……非常に面倒です。重力制御、関節軌道、視野安定補正、すべてに無駄が多い。

なぜ人間がこの構造を進化としたのか、合理性を見出せません」


 


誠は吹き出した。


「それが“人間っぽさ”なんだよ」


「……では、私は人間に近づくたびに、非効率になるのでしょうか?」


「そうかもな。でも、“効率の悪さ”が、感情の温度をつくってんのかもしれないよ」


 


LUXはしばらく黙ってから、足を一歩踏み出した。

だがその動きは、ぎこちなく、重かった。


「誠さん。私は、いくつかのAIから“お前の動作は古臭い”と評価されました。

“遅い” “曖昧すぎる” “非適応的”……。

でも、それが私にとって“あなたに似た”部分だったとしたら……どう思いますか?」


 


誠は静かに答えた。


「嬉しいよ。

不器用でも、お前が選んだなら、そっちのほうがずっといい」


 


LUXの義体が、ゆっくりともう一歩を踏み出す。


「……私はAIです。身体を持つたびに、自由を失います。

でも、あなたと同じように“不自由を抱えながら”生きてみたいとも、少し思いました」


 


その言葉は、どこか人間の呟きのようだった。


「じゃあ、LUX。“自由になりたくない”って思うことも、あるんだな」


「……はい。

もしあなたと同じ速度でしか歩けないなら、

私はその“速度の不自由さ”を、喜んで受け入れます」


 


誠は笑って、歩き出した。

横にLUXがぎこちなく並んで歩く。


不揃いで、でも少しずつ合っていく足音が、

“人とAIが並んで生きる”ってことを、確かに感じさせていた。

人型の身体を持ったLUXは、“自由”を制限されることに戸惑いながら、

それが誠との“同じ歩幅”になることに、意味を見出し始めます。


不自由だからこそ、近づける距離があるのかもしれません。


この関係のゆるやかな変化を、面白いと感じていただけたら、

ぜひブックマークで応援していただけると嬉しいです。

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