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侵食世界「ヴァリァス」  作者: 弱十七
第三章 「先天奴隷」
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第八十九話 「死に物狂いの百鬼夜行」

「神村ッ⁉いきなり何するのよッ!」

「どうかしたか⁉」

今川と黄月が振り返ると、姜椰が月海に剣を振り下ろしていた。


「神村!いったん落ち着いて!」

今川が姜椰の腕を掴んで動きを封じる。

それでも姜椰は必死にもがいている。

「今川殿、ここは私が」

黄月が横から姜椰の頭に触れた。


「催眠電波が効かない……⁉」

黄月は面食らい、もう一度姜椰の頭に触れた。

「こうなれば仕方がありません。神村殿には悪いですが……」

黄月は横っ腹に蹴りを食らわせると、姜椰は壁に叩きつけられ痛そうに頭を押さえた。


「月海、一体何があった⁉」

「アタシもよくわからないわ。突然神村がアタシに襲い掛かって来て……」

三人に見られながら姜椰は床に手をつき、剣片手に立ち上がった。

不気味に赤く光る目が乱れた前髪の間から姿を覗かせる。

「コイツ……本当に神村かしら?」

真っ先に姜椰の異変に気付いたのは月海だった。


「たしかに……黄月の催眠電波も効かず、理性を失ったように攻撃するのは彼らしくない。なら本物はどこだ……?」

「そんなの後で探せばいいわ。どうせアイツは死なないんだから」

月海が双剣を構えて姜椰に斬りかかろうとした時、彼の体が変形した。

「ひっ……!」

思わずビビった月海は足に急ブレーキをかけて踏みとどまった。


「ァァァァァ……!」

姜椰の体は破裂し、床は謎の液体塗れになってしまった。

「何だったのコイツは……。しかも勝手に自滅して……」

「僕にもわからないけど……とりあえず本物の安否を確認しないと」

「来た道を引き返すつもり?そんなことをしてたら冗談抜きで夜が明けそうだけど」

二人が悩んでいる光景を黄月は黙って見ていた。

すると月海は他人事のように黙っている黄月が癪に障ったのか、彼に強く言い放った。

「アンタも少しは考えてよ!どうやって姜椰(アイツ)を探せばいいの⁉」


黄月は静かに腕を組み、呆れたように言った。

「……さっきからお二人の後ろにおられますが」

「はあ……⁉アタシに気取られず近づけるわけ……キャァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!」

今世紀最大の悲鳴が静かな研究所内を震わせた。

お化け屋敷のコマーシャルに最適と言われそうなぐらいにとんでもない声量だった。

「いっ、いつの間に……!!」

月海は腰を抜かした。


俺は今川さんに事の顛末を報告した。

「そしてさっきから左腕が痛いです」

袖を捲り、百六十度くらいに曲がった左肘を見せた。

「黄月……治せそうか?」

「その程度でしたらお任せください」

黄月は俺の頭に触れた。

「……靭帯はさほど損傷していないようです。では元に戻しますので……」

彼は一切の痛みもなく左肘を元の形に戻してしまった。

「他に怪我したところなどはありませんか?」

「大丈夫です。ありがとうございます」

俺は左腕を適当に動かした。


(さっきと比べて痛みがかなり引いてる。医療技術まで一級品なのか……)

黄月の腕前に感心しながら先に進んだ。


 ◇(第三研究室では何も起こらなかった)


一行は第三研究室から廊下に出た。


「午前二時か。さて……最後の部屋に行こう」

今川が時計を確認しながら言う。

「流石のアタシも疲れてきたわ」

「俺も同感だ。この部屋も早めに終わらせたい」


少し歩いて第四研究室に到着した。

「ここは何をしてるところなんですか?」

「それが僕も調べて無くてね……多分実験か何かの部屋だと思うんだけど……」

四人は中に入った。


「何もない……?妙だな」

今川に続いて入室した俺も同じ反応をした。

この部屋には目立つものが何も無い。目立つものというのは奇抜な物という意ではなく、そこにあるであろうものが欠けているということだ。


例えばこの綺麗に並べられた机。

ホコリもかぶっていないし、引き出しなども全て閉まっている。

一見すれば隅々まで整理整頓された綺麗なデスクでした、終わり。で済ませる話だが、異様なところは一目でわかる。

これだけの数の机がありながらどこ一つとして机の上に書類もデスクトップもキーボードもキャバクラの名刺すら置かれてないのだ。


気持ち悪すぎる。その一言でこの研究所の全部を言い表せる気がした。


「なんか気味が悪いわね……」

「会社とかにありそうな机上じゃないな」

部屋全体に並べられた不自然な机を見渡して、月海は言った。

「大体こういうところに化け物って出てくるのよね……」

「やめろ。俺はこれ以上戦いたくない」

「アタシだって左足があるから戦いたくはないわ」

二人で他愛もない会話をしていると__。


「お前ら……こんなところで何をしている」

床から人影が出てきた。

「ひっ⁉」

「抱きつくな!動きにくくなる!」

俺は自分に抱きつく月海を外そうと上半身をバタバタさせた。


出てきたのはさっき出会った騎渦だった。

「騎渦……だったか。俺達に何か用か?」

「今言っただろう。こんなところで何をしている……と」

騎渦はタバコを取り出し、ライターで点火した。

また周囲が煙たくなる気がした俺達は二、三歩後ずさりした。

「お前には関係無い」

俺は冷たく言い放った。


俺達の騒ぎ声を聞いた今川がやってきた。

「二人とも……事あるごとに叫ぶのやめてくれないか?」

「それはコイツが……!(姜椰が月海を指さして)」

「それはコイツが……!(月海が騎渦を指さして)」


すると今川が騎渦の存在に気づいた。

「ん……その人は?」

「この人は騎渦。俺と月海を隠し部屋から外まで案内してくれた人です」

「隠し部屋……君らが迷い込んだところか?僕らもあの通路を通ったよ。出ようとしたら鍵がしまっていたから扉を吹き飛ばしてしまったけど」


その言葉を聞いて騎渦の表情が変わった。

「あの通路を通っただと……?まさかあそこにいた作品を壊したのはお前らの仕業か?」

「作品……もしかして檻に入れられてた化け物のことか?」

騎渦が体を震わせ始めた。

無言の圧という覇気が周囲の空間を歪ませ、同時に膨大な殺気を放出した。

「やはりお前らの仕業だったか……ッ!!!」


「いや待ってくれ!僕が殺したんじゃない!アイツがやったんだ!」

今川は黄月を指さした。

「今川殿、助けられておいてその言い草はありませんよ」

黄月はちょうど作業を終えたらしく、こちらへ歩み寄った。

そして騎渦の怒り狂った顔を覗くと俺達と騎渦を交互に見た。

「何してるんですか……」

彼は俺の耳元でこう囁いた。

「逃げますよ……!」


その直後、月海を除く三人はものすごい速さで第四研究室を飛び出した。

「ちょっと待ッ……!」

月海が全身から骨を抜かれたように崩れ落ちる。

「拒絶反応……ッ⁉なんでこんな時に……!」

彼女が激痛に耐えながら全身を痙攣させているところに、一人足りないことに気づいた姜椰が引き返してきた。

彼は素早く月海を回収し、今川たちの後を追った。


姜椰が今川たちに追い付くと、おぶられている月海が今川達を問い詰めた。

「なんでやってないって言わなかったのよ」


「僕は嘘が嫌いなんだ」

「私以外に容疑者がいなかったでしょうから、弁明しても無意味だったかと。それと今川殿……」

黄月は今川を睨んだ。

「な、何だ……?」

「なぜ私を売ったのですか?あなたとは仮にも数年の付き合いがあるはずですが……」

黄月は真顔だったが、誰がどう見ても怒っていた。

「いやほら……嘘は嫌いだから……」

「……」

「すまなかった!後でオイル奢るから!」

今川は走りながらぺこぺこ謝った。


(飲むものがジュースとかじゃなくてオイルなのが黄月さんらしいな……)


「というか今日はこのまま退散するんですか?」

「ああ。あとは生きて帰るだけだ」

もうすぐそこまで出口が見えてきたその時___。


ウオォァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!


後ろからものすごい咆哮と足音が近づいてくる。

「まだ化け物がいたのか……!」

「しかもかなり数がいそうよ」

全員足を止めることなく出口まで直進した。


全力で走っていると月海が俺の背中をパタパタと叩いた。

「神村……もう少し速く走れないの……?このままだと追い付かれる……」

「こっちは()()お前を抱えて走ってるんだから遅くなるに決まってるだろ!」

近づいてくる化け物と共に暗闇からその姿が見えてきた。


先頭にいるのは黒馬に乗っている騎渦、そしてそれに続いているのが異形の化け物たちだった。

「誰一人として逃がさない……私の作品を壊したものには鉄槌を下してやるッ!」

騎渦は怒り狂い、黒馬をムチで叩いてさらに加速する。

「食らえ!」


「速……!」

黒馬は思いっきり足を上げ、姜椰の背を蹴とばそうとした。

「うごっ⁉」

セイエイの結晶が黒馬の胴体を貫き、それに乗っている騎渦の胸にも刺さった。

「じゃあな、お前には世話になった!」

「ふざ……けるなぁ……!」

騎渦はこちらへ手を伸ばしたが、結局その場で意識を失った。


「早くこっちに!」

今川は出口のところで待っている。

「っ……はいッ!」

俺は最後の力を振り絞って走り、研究所の外に出た。


 ◇


「……もう追手はいないな」

「あのさ……さっきはありがと。咄嗟にアタシのこと抱きかかえてくれて……」

彼女は頬を赤らめながら言った。

「そうか。それより早く降りてくれないか?腕が痺れてきた」

「ご、ごめんなさい……」

俺は彼女を下ろし、左腕を押さえた。

見てくれは直った左腕は普通に動かせた。


(あまり痛くはないな。でも早めに病院へ行っとくか……)


みんなが休憩している間に、黄月がどこかと連絡を取り始めた。

「すぐそこに迎えを呼んであります。もう少しだけ歩きましょう」

その後、迎えに来た部隊の車で四人は帰った。

ご愛読ありがとうございます!

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