第八十五話 「敗北を知るには その二」
小林は素早く剣技を繰り出す。
月海は挟み込むように双剣を振るった。
両者の剣は火花を散らしてぶつかりお互いに相手を押そうと力を込めた。
「生っちょろいぞッ!」
その直後、小林の大剣が青白く光った。
ドォーン!!!!!!
月海は大剣の爆発を食らい、煙の中から身を下げた。
指で頬に触れると、さっきの爆発の熱がまだ残っていた。
「爆発……それがアンタの力なの?」
「正確にはヴァリァスの力だ……俺はあくまでも利用しているに過ぎないからな」
「想決に何か仕込まれたようね」
「そうかもなッ!」
小林が盾を真っ直ぐに構えて突進する。
その速度は月海が反応するだけで精一杯なほどに速く、盾は彼女が構えた剣に勢いよくぶつかり、再び爆ぜた。
月海はまたしても爆発を食らったが、特に外傷は見当たらなかった。
「フンッ!!」
小林は盾を振り下ろした。
ズガガガガ!!!!!!
「地面から結晶が……!」
結晶は剣山のような形を成して月海へ生え続けた。
彼女は宙に飛んで結晶の山を躱した。
月海が宙にいて回避が難しいところへ小林は攻撃を繰り出した。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!!!」
小林の大剣が超至近距離で月海を襲った。
「ッ……!!」
彼女は咄嗟に双剣を平行に構えて防御の姿勢に入った。
キーン_____!!!
突然彼女の前に現れた影が小林の大剣を防いだ。
影はそのまま後ろに吹っ飛ばされ、月海もそれに巻き込まれて地面に転がった。
そして月海よりも早く起き上がり剣を構えた。
「月海……待たせたな」
その声を聞いて、小林と月海の二人は目を見開いた。
「神村……姜椰ッ……⁉なぜだ……確かに腹を貫いたはずなのに……!!!」
小林は振り返り、姜椰の死体があったところを見た。
「お前……自分のローブをヴァリァサーに被せたのかッ!!!」
「俺がやったことはそれだけじゃない」
俺は指をパチンと鳴らした。
すると小林の背後から足音が近づいてきた。
暗闇からある二人が姿を現した。
「今川に黄月……!少し手こずったか……ッ!」
小林の顔に焦りが見え始め、額に冷や汗をかいていた。
「小林とか言ったか。僕が相手してあげるよ」
「どいつもこいつも……まとめて殺してやるッ!」
小林が今川に斬りかかる。
しかしどれだけ近くで攻撃しても一切当たらない。
「それなら……!」
小林は爆発を起こすために盾を構えた。
その隙に今川が矢を放った。
「ぐっ……」
盾に矢が三本命中し、体に多大な電流が流れた。
「僕の矢の電流を食らって眠りな!」
「これしき……ッ!」
小林は諦めずに今川に突進した。
しかし今川はすでに背後に回っていた。
「いつの間に……ッ!」
「君が盾を構えた時かな」
小林が大剣を振り上げる。すると二人の真横から矢が飛んできて小林の右腕に二本刺さった。
また電流が流れ、小林は右腕が痙攣して大剣を重力に任せて下ろした。
「まだ仲間がいるのか……⁉」
「いないよ。僕ら四人だけさ」
「ッ……忌々しいッ!どこに潜んでやがる……ぐあッ!」
小林は膝から倒れ、四つん這いの態勢になった。
彼の背中にはまたも今川の矢が二本刺さっていた。
今川は余裕そうに突っ立ったまま伸びをした。
小林はその侮辱するような姿を見上げ、怒りが頂点に達した。
「この俺を……赤子のように遊んでるのか……⁉」
血管がピキピキと浮かび上がってくる。
「ああ、もちろん。赤ちゃん相手に全力で殴りにいくヤツはいないからね」
今川は煽るような言い回しで小林を煽った。
「もう許さんッ!!!この場で貴様ら全員ぶっ殺してくれるわぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
小林は立ち上がり、体から膨大な殺気を溢れさせた。
両腕を近づけると剣と盾が変形し、両手が一つにくっついた。
合わさった両手の先端に閃光を放つエネルギー弾がつくられていく。
「さあどうする⁉もう逃げ場はないぞッ!」
今川は頭をかいた。
「どうすると言われても……」
諦めたのか、彼は小林に背を向けた。
そして顔の半分だけ小林の方を振り向いた。
もう勝負は決まったさ____。
爽やかな笑顔を小林に見せた。
「⁉」
小林は気づいていなかった。
額に__胴体に__両手に__両足に__今川の矢が刺さっていたことを。
「あっ……」
小林は全身に力が入らなくなり、両手を伸ばしたまま前に倒れた。
くっついているから態勢を整えることもできない。
ついに両手にも力が入らなくなりエネルギー弾を放ってしまった。
次の瞬間、強めの地震かと思うぐらいの振動が施設全体に伝わった。
彼は跡形も無く消し飛び、床は木端微塵に吹き飛んだ。
「ふぅ……一件落着かな」
今川は両手をはたいた。
「神村ッ!アタシを二回も心配させるなんて!!!」
月海は泣きながら姜椰を全力で抱きしめた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!!!」
姜椰は体を左右に激しく動かして抜け出そうと抗ったが、月海の馬鹿力によって無に帰せられた。
「二人とも大丈夫か?」
今川がイチャついている二人のところへ来た。
「ぐえっ!」
すぐさま月海は姜椰を突き飛ばし、立ち上がって咳払いをした。
「アタシは大丈夫よ。あの程度の戦闘だったらなんてことないわ」
「そうか。まあ月海のことだから特に心配はしてなかったけど……」
「ところでヴァリァサーは⁉まだ残っていたはずよ!」
「ヴァリァサーは俺が全部片づけた。お前が小林とやり合っている間にな」
姜椰は体を起こし、蒼電剣を月海に差し出した。
「月海、鞘にこれを入れておいてくれ。俺は電撃剣を回収してくる」
「え?あっ、ええ……。いつの間に剣を出したのかしら……」
◇
俺の動向はこうだ__。
まず俺は暗闇の中でローブを脱ぎ、近くにいたヴァリァサーに着させ、電撃剣の電源を切った状態で握らせた。
その直前にセイエイを俺の隊服(ローブの下に来ている隊服)の方に移動させた。
しかし俺がそのヴァリァサーをアイツの近くまで運んでいる最中に向こうから襲ってきたから、思わず
「ぐっ!」なんて声を出してしまった。
だが小林はローブと電撃剣を見ただけで、ヴァリァサーを俺だと錯覚した。
完全に勝ち誇ったところを奇襲しようと考えた俺は月海の左足に巻かれた蒼電剣を使った。
俺はそれでヴァリァサーを片付け、結果的に奇襲はできなかったが、月海を守ることはできた。
俺はローブと電撃剣を取り戻し、三人のところに戻ってきた。
「思わぬ邪魔のせいで予定が押してるな……」
リーダーである今川がメンバーの容態を確認していた。
「全員怪我は無いか?」
「……」
俺は月海の方を見た。
「何よ」
「別に」
今川は通路を見渡し、奥の方を指さした。
「よし、それじゃ第二研究室へ向かおう。少し急がないと夜が明けてしまう」
「あと四つも回らないといけないのね……」
「まだ時間はある。また邪魔が入らなければすぐ終わるはずだ」
四人は歩き始めた。
俺は隣にいる月海を見た。
(肌に黒い模様……どこかで見たような……)
「さっきから何見てるのよ」
「自意識過剰か。お前のことなんて見てない」
「そんなのわかってるわよ。だから何を見ていたのか聞いてるの!」
「俺もわからない」
「はぁ……⁉」
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